炎の剣撃
(……とにかく避難が最優先だな)
俺、倉橋 奏真は一度部屋に戻り護身用のナイフを探していた。
「しかしまぁ見事なくらい人気がないな…なんかこの寮を貸しきったみたいな気分だわ」
廊下にも部屋にも受付にも人気はない。多分みんなもう避難したんだろう。
(だけど参ったな…避難しようにも避難先がわからないんじゃあどうしようもないや…)
俺は自分の茶色い髪の毛が生えている頭を抱えた。
せめて伝言とかが置いてあれば良かったのだが、残念ながらなさそうだ。
(はぁ、仕方がない…とりあえず外に出るか…)
部屋の扉を開けようとした。その時、後ろから物凄い音が聞こえたかと思うと俺の体は勢いよく廊下に吹き飛ばされた。
▶︎ーーー
「おおー、ヒーロー登場ってか? かっこよく決まってよかったなー」
茶髪の前髪で片目が見えない少年はついさっき到着した俺に拍手をしながらそう言った。
随分と余裕なもんだ…でもまあ、戦力的には圧倒的にこちらが不利だってことに変わりはないか。
「神賀利君! どうして来たの!? いくら君が能力を使えるからって四人相手は無理だよ! 」
「そこの女の言う通りよ、アンタバカね。せめて仲間でも連れて来なさいよ。まあ連れてきたところで返り討ちだろうけどね」
金色の長い髪を風になびかせながら敵の少女はバカにしてきた。
(つかよく見たら立花足怪我してるじゃん! ちょっと遅れてたら手遅れだったかも…)
「なっ!? 私は無視してその女の怪我の心配!? 」
「は!? 何で考えてる事わかったんだ!? 」
「気をつけて! その金髪の子は思考を読む事ができるらしいよ! 」
「マジか! チートかよ! 」
(参ったな…変に作戦とか考えても無駄ってことか)
「そういうことよ。まあ考えなくてもピンチってことは変わりはしないけどね」
金髪の少女はドヤ顔で言ってきた。この時ちょっとムカついたのはバレなかったらしい。
「おい、お喋りしている暇はないぞ」
金髪少女の横にいる黒髪の少年が口を開いた。こいつを先に潰そうとした事はあながち間違いじゃなかったってことか。
そう思っていると、黒髪の少年は赤い剣を天にゆっくりとかざした。すると突如剣が炎を纏い始めた。
「もういい、俺がケリをつける」
(まずい! 何か仕掛けてくる気だ! とにかく立花を守らなきゃ! )
俺は咄嗟に後ろで足を押さえている立花を抱えて空中に氷で足場を次々と作りその場から離れた。
「無駄だ、焼き尽くせ『絶対炎王の一太刀』!! 」
そう言うと炎を纏った剣を振り下ろした。すると、纏っていた炎を三日月の様な形にし、何十倍の大きさとなってこっちに放ってきた。
「おいおいマジかよ!! ……くそっ、やるしかないのか!! 」
俺はだんだんと迫ってくる炎の巨大な斬撃を受け止める覚悟を決め、氷の足場を徐々に地面の近くに作っていき、なるべく抱えている立花の足の怪我に響かないように着地した。
そして立花を後ろにおろして、地面に両手をつけた。
「何をするの? 」
立花が不安そうな顔をして尋ねてきた。
「氷の壁を何枚か作ってあれを相殺する」
「……できるの? 」
「…できる」
正直成功するとは思えない。俺の能力じゃ相性が最悪過ぎる。だけど、やらないよりマシだ。
そして言った通り俺は地面から氷の壁を三、四枚出現させて再び立花を抱えて後ろに走った。
何歩か進んだ時、とてつもない熱が伝わってきた。どうやら氷の壁と衝突したらしい。
振り返ると氷の壁は既に最初より随分と小さくなっていた。
「おいおいちょっと早すぎるだろ…」
呆れ気味に呟いて俺はまた走り出した。
「無駄な足掻きをするものだな」
突如右から声がするのと同時に右脇から強い衝撃が伝わった。そしてその衝撃の正体が黒髪の少年の回し蹴りだと気がついた時には既に俺は後ろに吹き飛ばされていた。
「神賀利君!! 」
蹴られた衝撃で立花を離してしまった。あとで怒られるなこれは。
(くっ…考えが読まれちゃ居場所もバレるのかよ。こいつら相当厄介だな)
「お前の能力は氷を操る能力みたいだが、その能力は俺には届かない。大人しく殺されろ」
「は? 大人しく殺されろって言われて殺される奴がいるかよ。いたとしたら相当のアホだぜ」
「それはそうだな、なら…」
そう言うと黒髪の少年は剣を構えすごい速さで接近してきた。
(間に合うか!? )
心臓めがけて放たれた突きはギリギリのところで作成できた氷の盾でなんとか防げたが、既にヒビが入り始めた。
「いい反応だが、それでは防ぎきれないぞ!! 」
「ッ!! 」
更に剣に力が込められ赤く光ると、その勢いに負けて俺は再び後ろに飛ばされた。
そして俺は後ろの建物の壁を激突して壊し中に入っていった。
「……化け物…かよ…」
身体中が痛い、骨も数本いってる。それなのに相手はほとんど無傷。おまけに逃げるのも困難ときた。
(なんだよ…この無理ゲー……)
外から立花が叫んでる気がするが何を言ってるのか理解できない。それどころか本当に叫んでるかどうかすらわからない。
意識が薄れていく中、瓦礫から人が出てくるのが見えた。
茶髪で顔立ちは平均的な少年だ。だけど、俺はそいつを知っている。
(あぁ、いつの間にかここに戻ってたんだな)
だから俺はそいつにこの無謀とも言える戦いを任せることにした。
「よぉ……あと頼んだわ…奏真…」
▶︎ーーー
俺の部屋に凄まじい勢いの来客が壁から来た。そう、壁を破壊して尚且つ俺を廊下まで吹き飛ばして来た。
「よぉ……あと頼んだわ…奏真…」
そう言うと藍色のツンツンした髪で体はボロボロの少年は意識を失った。
(だからやめておけって言ったんだ、陽翔)
壊れた壁の向こう側には剣を持った少年と足を庇いながら叫んでいる立花が見えた。
「なんだ? まだ一人残っていたのか? 」
剣を持った少年がこちらに気がついたらしく、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来ている。
もう戦うしかないらしいな……
「まあいい、手っ取り早く片付けさせてもらう」
あー、ものすっごいやる気満々でいらっしゃる……
俺は先程の衝撃で落とした護身用のナイフを拾い構えた。
「抵抗するのはいいが、そんな物では無駄だ」
「それはお前が判断することじゃ……ない!! 」
俺は言い終わる前に駆け出し、相手の喉元を狙って斬りかかった。が、それは赤い剣によって止められてしまった。
剣を横に薙ぎ払われる寸前で俺は後方に飛んだ。
「前の奴といい、いい動きをするな。流石は軍の人間ってところか? 」
涼しい顔をして話しかけてきた。こいつ…まだ余裕があるって事か。
ナイフを逆手に持ち替え、腰を深く落とした。
「ほぉ、何かするのか? 」
「ああ、とっておきだ」
「ならその技、打ち破って終わらせてやる」
相手も剣を構えて、次の動作に移そうとしていた。
▶︎ーーー
神賀利君が吹き飛ばされるのをただ呆然と見ることしかできなかった。
悔しくて立ち上がって攻撃しようとしても足に銃弾をもらったから立てずに転んでしまう。
(神賀利君があそこまでしてるのに私は何もできないの……? )
リーダー格の少年が神賀利君にとどめを刺そうとしているのか、神賀利君のいる方へ向かって行った。
だけど、とどめを刺すのが目的ではなかった様だ。その少年が何か穴の方に喋りかけた。
その時、神賀利君が吹き飛ばされて男子寮に空いた穴からは茶髪の見覚えのある少年がリーダー格の少年に飛びかかって行った。
(あれは…倉橋君? )
そう、私が女子寮に戻る前に話をした少年だった。
(でもなんで倉橋君がここに……私達以外は避難したはずなのに)
と、そんなことは今はどうでもいい。それよりこの状況をどうするかが最優先だ。私は加勢に行きたいけど足が言うことを聞いてくれない。神賀利君は多分さっきの攻撃で戦える状態じゃなくなったのだろう。
最悪だ、最悪の状況だ。この《能力持ち》の少年に一対一で挑むのは無謀だとわかった。なのに戦えるのは倉橋君一人……一体どうすれば……
そう思っていると、さっきまで鳴っていた剣と剣がぶつかる音が無くなり急に静かになった。
見ると倉橋君がナイフを逆手に持ち替えていて、敵の少年は次の攻撃を待っているかの様に見えた。
数秒の間が空き、倉橋君が動き出した。持っているナイフを敵に投擲したが、少年は余裕の表情で剣で弾いた。
「まさかこれで終わりか? 」
倉橋君は空いている左手を腰に回すともう一つ短剣を取り出した。そしてその短剣の一撃も少年は防ぎきりつばぜり合いになった。そして、私はある事に気が付いた。
(あの短剣……ソードブレイカーだ…)
そうか、倉橋君は刃とは逆の方の凹みに剣を入れて折ろうとしていたんだ。
「俺を切るのではなく、俺の剣を折りに来たか」
「いや? お前を斬るつもりだ」
すると今度は先程ナイフを投げた右手で何かを握り、それを振り下ろした。次の瞬間、さっき空中へ跳ね飛ばされたナイフが突然動きを止めて少年の方へ再び飛んで行った。
「ッ!! しまった、仕込みナイフか!! 」
少年が叫ぶと私はやっと気が付いた。よく見ると倉橋君の右手からはピアノ線の様なものがナイフまで伸びていた。
少年は後ろに逃れようとしたがつばぜり合いに使っている剣が倉橋君の短剣から外れない。いや、倉橋君が逃すまいと外さないようにしている。
「これが俺のとっておきだ!! くたばれ!! 」
「ッ!! 」
再度少年に襲いかかったナイフは少年の左の脇腹に突き刺さった。
「…外したか」
「くっ……油断した。まさか《能力持ち》でもない奴に一撃貰うなんてな……」
少年はやっと倉橋君とのつばぜり合いを解くと、脇腹に刺さっているナイフを抜かずに下がった。
「…………そろそろか」
「リーダー何やってるの? ってうわっ!! ナイフ刺さってんじゃん。大丈夫? 」
「平気……とは言えないな。少し深い…」
金髪の髪を風になびかせながら少年の後ろからさっきの少女が現れた。
(まずい、二対一になった)
「残念だけど、二対一じゃないわよ」
少女は私の考えを読み、喋った。そして少年と少女の所にさっき銃弾を止めた少年と黒髪の短いポニーテールの少年が集まった。
「ダメだったよ、僕らの方はハズレ。そっちはどうだった? 」
「私もハズレよ。まぁリーダーの方はなんか探してなかったみたいだけど」
今来た銃弾を止めた少年と金髪の少女がそう言っていた。この基地で探してた…一体何を……
「なんだよリーダーだけ、ずるいなー僕らはちまちま探し回ってたのに……僕も戦いたかった」
「私はそこを言ってるんじゃないんだけど…」
やれやれと金髪の少女が呆れると、こちらを再び見てきた。
「ほら、二対一じゃなくて、四対一でしょ? 」
再度私達はピンチに追いやられた。
閲覧ありがとうございます、スティアです。
まず、今回投稿が遅れて申し訳ありませんでした。
学生特有のアレ(定期テスト)とやらに時間をだいぶ取られました。
さて、書いてて思ったんですけど、展開早いな笑
まあでもいいんです。まだ序盤ですし? これからですし? とにかくこれでいいんです。
できれば次回もよろしくお願いします!!