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異世界召喚された勇者に付き添う僕  作者: 丘松並幸
第2章 アライ王国編
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新天地

「ロア様、そろそろ時間です」

「うん。わかってる」


 魔女と国の戦いから1週間。

 傷はまだ治りきっていないけど、体が動かせるくらいには回復していた。

 僕以外の人達はもう完治しているらしいから、傷の治りが遅いのも『ウィッチ』のリバウンドのせいなのかもしれない。

 

「じゃあ、行こうか」


 僕とアドアは外で待っているであろうムトさんの所に行く。

 僕達がこれから行く国はアライ王国というらしい。

 グリーム王国と国を1つ挟んだ位置にある大国で、そこの今の王様とムトさんが知り合い、ということしか知らない。

 僕は一度もこの国から出たことが無いから、他の国のことなんて全然わかっていない。

 まぁ、アライ王国は安全な国らしいし、向こうで色々と情報収集をすればいいかな。


「お、やっと来たか」

「やっとって……。ムトが時間よりかなり早く来たせいでしょ」

「お待たせしたみたいですね。すみません」


 外に出るともうヴェイルさんとムトさんが待っていた。

 ヴェイルさんの言う通り僕達は時間通りだけど、一応頭を下げる。


「さて、2人共、準備は出来てるかしら? こっちには当分帰って来れないわよ」

「僕は大丈夫です。アドアは?」

「私も大丈夫です。ヴェイルさんのおかげで親と話すことも出来ましたので」


 それは良かった。

 冒険に出る前に話をしたのが最後だっただろうし、これからいつまた会えるのかもわからないから、少しでも話しが出来たならそれは良いことだ。


「そう。ならもういいわね。ムト、ちゃんと2人のことを助けてあげるのよ」

「わかってる、わかってる。まぁ、俺にもやらないといけないことはあるし、あんまり構ってやれないかもしれないけどな」

「あと、ロアちゃんは焦って行動しないこと。カエデちゃんのことはあたしも色々とやってみるから」

「わかってますよ。僕はまず力を付けることをがんばります」

「アドアちゃんはロアちゃんをしっかり支えてあげるのよ」

「はい! 任せてください」


 こうしてみるとヴェイルさんは僕達の親みたいだ。

 実際にここ最近はヴェイルさんの家で暮らしていたわけだし、僕にとっては親同然の存在だ。

 これから当分ヴェイルさんに会えないと思うと少し寂しい気もする。


「よし、そろそろアライ王国に行くか。向こうで俺達を出迎える準備をしてあるらしいし」

「そうね。じゃあ、ロアちゃん、アドアちゃん、がんばってきなさい」

「「はい!」」


 別れの言葉も感謝の言葉も言わない。

 ちゃんと強くなって帰ってきてからお礼を言おう。

 次は守られるだけじゃなくて一緒に戦うんだ。 


「魔女魔法『ワープ』」


 手を振るヴェイルさんが視界から消え、自然に囲まれていた景色が切り替わる。

 そこは王の間のように豪華な場所だった。

 そして前には優しそうな顔つきのいかにも王様らしい格好をした人が立っていた。


「アライ王国にようこそ。初めましてロア君、アドアちゃん。僕はアライ王国の国王、ロット・トラスト。僕は君達を歓迎するよ」


 ロット様は僕とアドアの目線に合わせるようにしゃがんで、優しい口調で話す。

 見た目通りの優しい人みたいだ。

 でも相手は一国の王様。

 出来るだけ良い印象を与えておくに越したことはない。

 僕は膝をつき、頭を下げる。

 アドアも僕を見て同じ体勢を取る。


「ご丁寧なあいさつありがとうございます。僕はロア・ノーブル、こっちはアドア・ファズィと言います。この度は本当にありがとうございます」

「うわー、聞いていた通りの子だね。まだ子供なんだからそんなに気を使わなくてもいいのに……」

「お前は一応国王なんだし、仕方ないんじゃないか? それにロアは子供だけど王子だからこういう対応を教え込まれてるだろうよ。お前の所の子供だって同じだろ」

「うーん、まぁ、そうか」


 ムトさんは王様相手なのにいつもと変わらない態度だ。

 ロット様もそれを咎めるつもりはないみたいだし、相当仲が良いらしい。

 何でなのかは少し気になるけど、それはまた今度ムトさんに聞くとしよう。


「じゃあ、2人が泊まる部屋まで案内しよう。今日はゆっくりすると良い」

「ちょっと待ってください。僕達はここに泊まるのですか?」

「うん。そうだけど」


 当然のように言っているけど、そんなこと僕は聞いていない。

 この国の宿屋にでも泊まるのだと思っていた。


「まぁまぁ、取りあえず立って。というかムトは言ってなかったの?」


 ロット様に言われて僕達は立ち上がる。

 例によってアドアは緊張しているようで動きがぎこちない。


「そういえばまだ何も言ってなかったな」

「はぁ、ムトらしいね。ロア君とアドアちゃんの現状は聞いている。僕としてはこの国でくらいは安全で快適な暮らしをさせてあげたいと思ってるんだ」

 

 その気持ちはありがたいけど、城で暮らすとなると色々と気を使わないといけない。

 城下町の宿屋にでも泊まる方が気が楽だ。

 でもそんなことは言えるはずもない。


「お心遣いに感謝します」

「それに僕の子供とも仲良くしてくれると助かる。君達と歳はそう変わらないから友達になってあげて欲しい。あの子もまだ数回しか城から出たことがないから、君達と話をするのを楽しみにしていたよ」

「それは構いませんが……」


 ロット様の子供ということは王子か王女ということだ。

 王族の子供に嫌われるなんてことがあったら、更にこの城に住みにくくなる。

 それは避けないといけない。


「それは良かった。アドアちゃんもよろしく」

「は、はい!」


 アドアは相変わらず緊張している。

 こんな調子でこれからここでやっていけるんだろうか。

 アドアのことを守ってあげないといけない、と改めて思っていると突然、勢いよく扉が開かれたような音が聞こえてきた。


「お父様! ロア様とアドア様は来ましたの?」


 部屋に女の子の声が響く。

 その女の子は僕達を見つけると小走りでこっちにやって来る。

 それが誰なのかはこれまでに聞いたことから簡単にわかる。


「初めましてですわ。私はプランセッス・トラスト。アライ王国の第一王女ですの」

 

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