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異世界召喚された勇者に付き添う僕  作者: 丘松並幸
第1章 グリーム王国編
43/48

VS騎士 2

「ロア様、お怪我は有りませんか?」

「ん? 大丈夫だよ」


 名前もわからない兵士を倒して数秒歩いた所で後ろから足音が聞こえてきた。

 余りにも軽い音から多分アドアだろうな、と思って振り返ったら、やっぱりアドアだった。

 

「そうですか。それなら良かったです」


 アドアの安心した表情に僕も安心してしまう。

 ここは戦場で僕達にとって危険な場所だから気持ちを引き締めていたけど、少しくらいならいいかな。

 

「カエデの護衛に付いている兵士もさっきの人くらいだと嬉しいんだけど、そうはいかないだろうね」

「カエデ様ですから隊長が付いていてもおかしくないですよね」


 さっきの兵士は恐らくただの兵士、良くても小隊長だと思う。

 ちなみにこの国の兵士の位としては隊長、副隊長、部隊長、部隊長補佐、小隊長の順だから、小隊長っていうのは一般兵士の1つ上だ。

 小隊長になると4人の一般兵士が部下に付いて5人の小隊のリーダーになる。

 つまり兵士の5人に1人は小隊長なのだ。

 要するに小隊長っていうのは珍しくもないし、そんなに強くもない。


「まあ、そういうことはカエデの部屋に着いてから考えよう。僕が思っている部屋をカエデが使っているとしたらもうすぐ着くはず」

 

 ここ1ヶ月くらいいなかったとはいえ、長年暮らしてきた僕の家だ。

 大体の間取りは把握している。

 

「確かこの辺に豪華な客室があったはず……っと、アドア、ストップ」


 僕が止まったのは廊下の曲がり角。

 当然ながら理由はこの先に目的の部屋があるからだ。

 部屋の前にいるであろう護衛に気づかれないように慎重に顔を出す。

 部屋から僕がいる場所までは距離があるから、そう簡単には見つからないとは思うけど、見つかればその時点で戦闘開始になるこの状況、緊張するのも当然だと思う。

 僕の見ている真っ直ぐの廊下、そこには1人の騎士が壁の傍に立っていた。

 分厚そうな真っ白の全身鎧と幅の広い剣から兵士よりも騎士って感じがする。

 その騎士が立っているのはちょうど扉の前みたいで、体に隠れていて扉が全然見えない。

 あれ絶対に部屋から出る時に邪魔になると思う。


「どうですか?」


 アドアが努めて小声で話しかけてくる。

 僕はそれに答えるために顔を引っ込めて、同じように小声で話す。


「護衛は1人。見た感じだと結構強そうな騎士だ」

「1人……ということはやはり騎士団長とかなのでしょうか?」


 カエデがその結論に達するのはわかる。

 勇者という王様と同じくらい国にとって大切な人に護衛が1人というのはおかしい。

 城の前でムトさん達が戦っていて城の兵士のほとんどはそこに行ったはずだから、人が少なくてもおかしくないとは思っていたけど、1人しかいないのは明らかにおかしい。


「うん、そう思って行動した方がいいみたいだね。気を付けよう」

「ならもっと集中していた方がいいぞ」

「「!?」」


 不意に真後ろから聞いたことが無い声が聞こえてきて、僕とアドアは瞬時に距離を取る。

 そして僕は剣を抜き、アドアは更に距離を取って、声の主の方を向く。

 そこにはさっきカエデがいるであろう部屋の前に立っていた騎士が堂々とした態度でこっちを見ていた。

 気づかれていたのか……。

 

「ふむ、子供ながら中々の動き。しかし私と戦うにはまだまだだな」


 騎士はまだ剣を抜いていないにも関わらず余裕な態度を崩さない。

 僕程度になら先手を取られても構わないってことだろう。

 それなら遠慮なく先手を取らせてもらうとしよう。


「戦士魔法『ソニック』!!」


 剣を抜かせる隙を与えないように速い攻撃を選択する。

 そして期待通り騎士は身動き1つせずに僕の剣を受けた――ように見える。

 でもそれが違うことは僕の右手に伝わってきた感触が教えている。

 これは金属を斬った時の感触ではない、つまり鎧の表面に何かしらの魔法でバリアを張っているということだ。


「ちっ」

「うむ、やはり攻撃もそこらの兵士より速く重いな。さて防御はどうかな?」

「ロア様! 治療師魔法『バリア』ッ!」


 騎士が剣に触れるとほとんど同時にアドアが僕に『バリア』を掛ける。

 僕が言う前にやってくれるとはアドアも成長したものだ。


「そちらのお嬢さんも良い反応だ。でも『バリア』程度では私の攻撃は防げない」


 そんなことはわかっている。

 だから『バリア』に任せて特攻なんてしないで僕自身も全力で防御する。

 騎士の剣は速いけど、見えない程ではない。

 僕は大剣と言ってもいいくらいに大きい剣を受け止める。

 完璧な防御。

 アドアの『バリア』もあるし、絶対に防ぎきれると思っていた。

 でもそれは違った。


「ぐっ」

「ロア様!」


 僕の体は騎士が剣を振った方向にそのまま飛ばされ、壁に撃ちつけられる。

 痛い。

 思っていた以上の威力だ。


「治療師魔法『ヒール』! 治療師魔法『オートヒール』!」


 すかさずアドアが僕を回復させてくれるが、状況は悪い。

 僕の攻撃は騎士に効かない、騎士の攻撃は防御出来ない。

 

「これでわかったか? 私とお前達の実力の差が」

 

 十分わかった。

 だから僕も全力を出して戦おうと思う。

 幸いにも護衛はこの騎士だけみたいだし、この戦いの後、多少苦しい思いをしたって構わない。

 出来ればあの魔法は使いたくなかったけど、こんな状況だから仕方ない。

 僕の全力でこの騎士を倒そう。


「アドア、後で看病よろしく」

「……はい」


 アドアは僕が何をしようとしているのかわかったみたいだ。

 使った後のことを知っているからあんまり乗り気ではないけど。


「あなたは強い。今の僕だと絶対勝てない。だから僕の最強の魔法をもって倒す! 魔女魔法『ウィッチ』!!」



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