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異世界召喚された勇者に付き添う僕  作者: 丘松並幸
第1章 グリーム王国編
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VS兵士

「ねぇ、君はこれから戦いに参加するつもりだったんでしょ? こんな所にいても大丈夫なの?」


 話をしていて何か違和感を持たれたらまずいから、本当なら無言で歩き続けたい。

 でも残念ながらカエデは黙って行動するような性格ではない。

 ここはこの兵士に話しかけるのが正解だと思う。


「先程も言いましたが、私達はカエデ様を守るために戦っているのです。ここでカエデ様を1人にし、危険に晒してしまうと意味が無いのです」


 若い兵士は真面目な顔で真面目なことを言う。

 まぁ、国の大切な勇者様に話しかけられたら大抵の人はこうなるだろう。

 それにしてもこの人はカエデを守るためって言ってるけど、今の城の中では王族よりもカエデの方が力があるのかな?

 もしそうなら王の間にいた護衛よりもカエデの護衛の方が多かったりするだろう。

 それはとても困る。


「王様達は守らなくてもいいの?」


 かなり直球だけど、カエデならこのくらいのことは平気で言う……はず。

 兵士は一瞬、こっちをチラッと見て、また進行方向を向き直す。


「王族の方々は他の人が護衛に付いています。今、この城の中にいる人でも強い人が何人もいるので大丈夫でしょう。それに私は今の王様があまり好きではないのです」

「へぇ~、何で?」


 真面目な兵士だと思っていたけど、そうでもないみたいだ。

 僕も兵士も前を向いていて表情は見えない。

 でも明らかに今までと声が違う。

 王様、ケイトにマイナスの感情、多分呆れているのだと思う。


「まだ若いので多少は仕方がないとはいえ、余りにも身勝手過ぎます。自分が嫌いだからといって王様になってすぐに魔女狩りを始めたのはカエデ様もご存知でしょう。何せ一番反対されていたのはカエデ様ですからね」

「そ、そうだね」


 カエデは魔女狩りに反対してくれていたのか。

 その理由が僕だったら嬉しいな。

 カエデは僕が魔女になったことを知らないけど、僕が魔女の血を引いていることは知っている。

 それに僕がケイトに嫌われていることも知っている。

 だから僕が殺されないように反対してくれたってことだと嬉しい。


「王様にもちゃんと自分の意見を言うカエデ様はカッコ良かったです。反対した理由の方は納得できませんけど」

「あははは……」


 理由は言ってくれないみたいだ。

 その辺りのこともカエデに会ってから聞くとしよう。


「あ、そろそろカエデ様の部屋に着きますね」

「そうだね~」


 思っていたよりは近くにあった。

 やっぱり城の中央の方にあるみたいだ。

 まだ部屋自体は見えてこないけど、この近くで勇者の部屋として使われるような豪華な部屋なら僕でもわかりそうだ。

 

「そういえばカエデ様、護衛の兵士達はどうしたのですか? 城を攻められてすぐ部屋に向かったと思うのですが」

「そ、それは……」


 しまった、護衛がいない理由なんて全然考えてなかった。

 今から考えても良い理由が思いつくとは思わないし、もうここでこの兵士を動けなくさせるべきだと思う。

 元々、部屋に着く前にはこの兵士を倒すつもりだったしね。


「戦士魔法『クエイク』!」

「え?」


 倒すと決めたなら一番手っ取り早い方法は不意打ちで仕留めること。

 僕はほとんど体勢を変えずに『クエイク』で兵士を揺らす。

 本来は地面を揺らして相手の体勢を崩す魔法だけど、相手の体に直接打ち込むと激しい振動で気絶させることもできる。

 完全な不意打ちで反応出来なかった兵士は『クエイク』をまともに受ける。

 

「ここまでの案内ありがとうございました。数十分後には気が付くと思うのであんしんしてくださいね」

「…………貴様、何者だ」


 剣を納め、兵士の横を通り抜けようとした時、足元から声が聞こえてきた。

 小さい声ではあったけど、僕に届くには十分な大きさ。

 気絶直前の人が出せる声ではない。

 つまり――


「カエデ様ではないのはわかっている。でも戦士魔法を使っているということは、グリーム王国の兵士なのか? それとも他国の兵士なのか?」


 兵士はそう言いながらゆっくりと立ち上がろうとしている。

 僕はこの兵士のことを甘く見ていたみたいだ。

 この兵士は想像よりも強いけどそんなこと関係ない。

 敵が倒れていないなら僕は攻撃を続けるだけだ。


「戦士魔法『サークルエッジ』!」

「騎士魔法『ウォール』!!」


 兵士が立ち上がる前に仕留めようと繰り出した光の刃は、兵士が作り出した壁に阻まれる。

 光の刃は金切音を上げながら壁を削る。壁は段々と崩れていく。

 でも壁を完全に崩すより先に光が消える。

 

「死ね!」


 さっきの攻防の間に体勢を立て直した兵士が僕に向かって剣をかざす。

 でもその剣は振り下ろされない。

 兵士の顔にははっきりとしたためらいが見える。


「やっぱり私のことは切れないんだね」

「っ!」


 僕はまだカエデの姿のまま。

 僕のことが偽物だとわかっていても、見た目の情報に惑わされて体がうまく動かない。

 止まったのが一瞬だとしても戦いの中でそれは命取りだ。


「戦士魔法『ソニック』!!」


 今の僕の最速の攻撃『ソニック』が兵士の両足を捉える。

 声は上げないものの、兵士は苦しそうな表情で膝をつく。

 僕はまた魔法で防御されないように続けて次の魔法を放つ。

 

「次こそはちゃんと気絶してくださいね。戦士魔法『クエイク』!」

「くそっ!」


 僕の剣が兵士の脇腹に当たる。

 さすがに2回目の衝撃には耐えられなかったらしく、剣が触れるのとほとんど同時に兵士が倒れた。

 

「道案内お疲れ様。ゆっくり休んでくださいね」


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