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異世界召喚された勇者に付き添う僕  作者: 丘松並幸
第1章 グリーム王国編
37/48

準備

「よし、みんな決まったな。詳しいことは追って連絡するが、3日以内には戦争を始めると思っておいて準備をしていて欲しい」


 ムトさんは満足そうに言う。

 みんなが参加すると言ってくれたのが嬉しかったみたいだ。

 でも僕としては3日というのは短すぎると思う。

 満足そうな所に水を差したくは無いけど、僕も参加すると言った以上、自分の考えは言うべきだ。


「もっと準備に時間を掛けるべきだと思います。皆さんの力を知っている訳では無いですけど、城にいる騎士団や兵隊を相手にするためには万全の状態にしておいた方がいいと思います」


 前にヴェイルさんに聞いたことだけど、魔女魔法は使い手より弱い相手にしか効かない。

 強い人というのは強い精神を持っている。

 だからそんな人には精神を支配する魔法は効果が無い。

 つまり自分より強い相手とは普通に戦わないといけない。

 ヴェイルさんが言うには魔女の中で団長、隊長クラスの人に魔女魔法を決められる人はいないらしい。

 少しの間なら掛けられるかもしれないけど、その少しのために多くの力を使わないといけない、と言っていた。

 魔女のほとんどは魔女魔法の他にも魔法を使えるから、相手が強い時はそっちで戦う。

 今回もそういう戦いをしないといけなくなるんだろう。

 いつもはあまり使わない魔法をいきなり使うのは難しい。

 だから練習をするためにももっと時間を取った方がいいと思う。


「それは俺もわかっている。でもダメだ。これ以上は時間を延ばせない」

「何でですか?」

「王国の軍が兵士を集めようとしているからだ。向こうは大規模な魔女狩りをするつもりで集めてるんだろうが、こっちにとっては倒さないといけない相手が増えていく一方だ」

「それはやっかいね」


 こっちが準備に時間を掛ければ向こうの兵士も増える、ということらしい。

 本当にそれはやっかいだ。

 それなら3日という期間は妥当なのかもしれない。

 ムトさんは戦争を始めるつもりでここに来ているんだから、僕よりもずっと考えているはずだ。

 

「わかりました。そういうことなら3日でいいと思います」

「よし、そういうことでみんな、よろしく頼むな!」

 

 ムトさんのこの言葉でこの日の会議は終わった。

 ヴェイルさんはムトさんと話があるらしいから、僕とアドアは外に出ておいた。

 まだムトさんと話している人か会議が終わってすぐに帰った人しかいないから、今は周りには誰もいない。


「さっきはそういう雰囲気じゃなかったから聞かなかったけど、アドアはどうするの?」


 さっきはあくまで魔女の話し合いだったから、ムトさんもヴェイルさんもアドアには何も聞かなかった。

 でも本当はアドアにも聞いておかないといけない。

 僕やヴェイルさんと一緒にいる以上、今回のことはアドアにも関係があることだ。

 それにカエデのことだってある。

 アドアもカエデには会いたいはずだ。

 この戦争がカエデに会えるチャンスだとアドアが気づいているかはわからないけど、これからどうするのかはアドアの自由だ。


「もちろん私も一緒に行きますよ! カエデ様に会えるかもしれないですしね」

「そうだね、早くカエデに会うためにはこの戦争に参加するしかない。でも僕はともかくアドアはこの戦争に参加したら城に戻れないかもしれないよ?」

「そんなことはわかってます。それでも私は参加しますよ」


 アドアは真っ直ぐな目で僕を見ている。

 僕としてはアドアには正しい道を歩んで欲しい。

 こんな所で国に反逆した罪を背負って欲しくないのだ。


「それにロア様と一緒に逃げた時点でもう私は城には戻れないですよ。そのつもりでロア様を連れ出したんですから」

「それもそうだね……」


 今や僕も国に捕えられてしまうような人間。

 そんな人を脱獄させ、一緒に逃げたとなるともう城で前のような生活は出来ないだろう。


「ロア様、責任取ってくださいねっ?」

「わ、わかった。何とかしてこの状況をどうにかしてみせるよ」


 全く具体的なことを言っていないと自分でも思うけど、今はこれしか言えない。

 今は無理でもいつかはどうにかしてあげたいと思っている。

 僕のせいで大切な友達に迷惑を掛けてしまうのは嫌だ。


「そういうことではなくて、もっと簡単な方法が……」

「え、どういうこと?」

「い、いえ、何でもありません」


 僕の答えが悪かったのか、アドアは残念そうな顔になる。

 やっぱりアドアは城に帰りたいと思っているのかな?

 いつも僕のことを助けてくれるし、僕について来てくれるけど、本当は普通の生活を送りたかったりするんだろうか。

 うーん、聞いてみるべきなんだろうけど、もし本当にそうだとしてもどうすることも出来ないから、あまり意味が無い。


「私はどんな結果になってもロア様の隣にいますよ」


 僕の心を読んだかのような言葉に驚きつつも安心する。

 

「これからもよろしくお願いしますね」

「こちらこそ」

「……そろそろいいかしら?」


 声が聞こえてきた方向を見ると、そこにはヴェイルさんがいた。

 色々と考えながら話をしていたから全く気が付かなかった。


「ムトさんとの話はもう終わったんですか?」

「えぇ、少し前にね。外に出てみたらロアちゃんとアドアちゃんが甘い空気を纏ってたから待ってあげてたのよ」

「……それはどうもです」


 ここで言い返しても、ヴェイルさんはどうせ楽しそうに笑うだけだから何も言わない。

 ヴェイルさんは僕とアドアが黙ったのを見て、何かを納得したような顔をする。


「そういうことね。まぁ、それも含めて帰ってから話しましょうか。あたしも2人に色々話すことがあるから」


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