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異世界召喚された勇者に付き添う僕  作者: 丘松並幸
第1章 グリーム王国編
32/48

変身

 木の葉っぱで影ができて日差しはあまり当たらない林の中だから、気温はそんなに高くない。

 そんないい感じの涼しさの中、僕達3人は朝と同じ広場にやって来ていた。

 やっぱりどんな修行をするにしても広い方が都合がいいみたいだ。


「さて、昼の修行を始めるわよ。まずアドアちゃんはひたすら治療師魔法『バリア』を張り続けてちょうだい。体力が無くなったらあたしが回復させてあげるから」

「了解です!」

 

 アドアは新しい魔法を習得するための修行。

 新しく魔法を習得するにはレベルを上げる必要がある。

 あいにく僕達にはレベルを確認する方法はない。

 でもレベルを上げる方法は僕はもちろん誰でも知っていることだ。

 それは魔法を使うこと。

 どんな魔法の使い手でもそれだけは変わらない。


「ロアちゃんはあたしと修行をするわよ」

「わかりました」


 僕は魔女魔法を使う修行。

 当然のことながら僕はまだ魔女魔法を使ったことが無い。

 だから使い方を知っているヴェイルさんに教えてもらわないとうまく使えないと思う。

 もし独学で修行して使い方を間違えてもいけないしね。


「じゃあ、アドアちゃんは端の方で勝手にやっといて。体力が無くなったらあたしを呼べばいいわ」

「なんか私の扱いが雑じゃないですか!? ちゃんと呼んだら来てくれるんですよね?」

「…………」

「何か言ってくださいよ!」


 アドアはブツブツ文句を言いながらも広場の隅の方に行く。

 そして魔法を唱え始める。

 『バリア』は1人が同じものに重ねて何回も掛けることは出来ない。

 だからアドアはまず目の前の木に『バリア』を掛ける、次にその隣の木に『バリア』を掛ける、そしてそのまた隣の木に『バリア』を掛ける、といったことをしている。

 『バリア』は攻撃を受けたら消えるけど、それ以外では時間が経ち過ぎると自然に消えてしまう。

 だから『バリア』を掛ける対象が無くなるということはないはず。

 つまり体力が切れるまでずっと続けてやることになる。


「アドアは大変だな~」

「そうね。でもアドアちゃんは素直ないい子だから、何だかんだ言ってちゃんとやるわ。いつかその努力が報われる日がきっと来るはずよ」


 ヴェイルさんも何だかんだ言ってアドアのことを高く評価しているし、大切にしている。

 アドアとヴェイルさんは歳が離れている姉妹みたいだ。


「アドアちゃんばっかり見てないで、ロアちゃんもそろそろ始めるわよ」

「はい、お願いします」

「まず『ディスガイズ』から教えるわ。この魔法はロアちゃんの魔導書にも書いてあった通り、自分の姿を変えるだけの魔法よ。まぁ、使い勝手はいいんだけどね」


 自分の姿を変えるだけかぁ……

 正体がばれないように行動しないといけない魔女には便利な魔法だけど、僕は元から黒髪に黒い目で魔女のような外見だとみんな知っているからあんまり意味はない。

 城に潜入する時とかには役に立ちそうだけど。


「あたしが使って見せるわね。魔女魔法『ディスガイズ』!」


 魔法を唱えると同時にヴェイルさんの体が光に包まれる。

 勇者召喚の時の光に少し似ている。

 ヴェイルさんを覆う光は数秒光り続けて消えた。

 そしてさっきまでヴェイルさんがいた僕の目の前には、広場の隅で黙々と修行をしているアドアがいた。

 顔だけじゃなくて、身長、体つき、服装まで完全に一緒だ。


「どう?」


 でも声はヴェイルさんだ。

 確かにすごいけど、本当に姿を変えるだけだった。


「声は変わらないんですね」

「他の魔法を使えば声も変えられるわよ。でも今はやる意味もないし、しないわ」


 声はヴェイルさんだけど、しゃべっている体の方はアドア。

 魔法で姿が変わっているだけだとわかっていても何だか変な感じだ。


「この魔法の良い所は相手に自分の姿を違う姿に見えるようにするんじゃなくて、本当に自分の姿が変わることよ。例え記録系の魔法を使われたとしても正体がばれることはないわ」


 ふむふむ、そう考えれば結構優秀な魔法なのかな?

 自分が解除さえしなければずっと変わったままというのは中々便利だ。

 まぁ、使う機会はかなり限られてくるだろうけど。


「ロアちゃんも使ってみたら? 何事にも練習は必要よ。魔法を唱える前に変わりたい姿を想像すればその通りになれるわ」

「やってみます」


 えーっと、変わりたい姿を想像する……どんな姿になろうかな。

 想像するっていっても最近まともに会った人が少なすぎて候補も少ない。

 ならここは……


「魔女魔法『ディスガイズ』!」


 さっきのヴェイルさんと同じように僕の体を光が包む。

 そして数秒で光が収まっていく。


「初めてにしては結構いい感じね。いつもジロジロ見てる証拠かしら?」

「そういう訳じゃありません! 他に服装まで想像できる人がいなかっただけです」

「……ヴェイルさ~ん。『リザレクション』お願いしますぅ~」


 僕が姿を変えたその時、アドアがちょうどやってきた。

 修行を始めてまだそんなに時間は経っていないけど、休まずに続けていたからもう体力が無くなったみたいだ。

 まずい、何がまずいかっていうと――


「えっ! 私がたくさんいる!」


 僕がアドアに姿を変えているからだ。

 アドアの目の前には今、2人の自分がいる。

 アドアは少し考えて、状況がわかったみたいだ。


「ヴェイルさんもロア様も真面目に修行してください!」

「……はい」


 別に遊んでいたわけじゃないのに……


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