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異世界召喚された勇者に付き添う僕  作者: 丘松並幸
第1章 グリーム王国編
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VS騎士

「お前が勇者様とこの町から出たのは記録に残っていたが、この近隣の町に入ったという報告は受けていなかった。大方、ジトンの近くで野宿でもしていたのだろう。野宿をするにはものや食料が多くいる。それを買うためにもう一度この町に来ることは容易に予想できたぞ」


 役所の男は自分がすごいのだと言いたいようで、聞いてもいないことを話し出した。

 少し違う所もあるけど、大体は合っている。

 僕はまた失敗してしまったみたいだ。

 確かに物を買いに来たけど、別に買わなくても生活はできるものだ。

 役所の男は僕達が倒したモンスターを食料にしていることを知らないから、食料を買いに来ると思っていたのだろう。


「お優しいケイト様でも2回目は許されないそうだ。お前を力づくにでも城に連れ戻せとの命が出た。よってここで捕えさせてもらおう」


 元から許すつもりなんて無かっただろうに。

 ケイトのことだから、僕が抵抗しないで城に戻っても何かやってきただろう。


「僕のわがままに付き合っている余裕は無いって言ってなかったですか? 1週間もここで待ってるなんて暇なんですね」


 こんな状況になってしまったけど、まだ何とかなるはず。

 今はこれからどうするかを考えるためにも情報が必要だ。


「何を言っている。お前が1人で逃げたのなら放っておくかもしれないが、国の大切な勇者様を連れ去られてそのままにしておくはずがないだろ」


 そうですね、はい。

 完全に僕の認識が間違っていた。

 僕のために時間を掛けるのは無駄でも、勇者のためなら全然無駄ではない。

 むしろ時間を掛けてでもやらないといけないことだ。

 国に1人しかいない勇者の行方がわからない、そんなの当然探すに決まっている。

 1週間も探しているはずがないという僕の考えはあくまで僕を探していた場合の話だったのだ。


「さて、ロア・ノーブル、どうする? この包囲から逃れることは不可能だぞ」


 役所の男は相変わらずニヤニヤしながら僕を見ている。

 僕は周りを見渡す。

 この状況なら勝ったと思うのも当たり前だと思う。

 僕達3人に対して兵士はざっと見ただけで50人はいる。

 役所の男は僕達の強さを知らないから一般人として考えているだろう。

 つまり役所の男には一般人3人対兵士50人という状況なのだ。

 もちろん僕達は一般人ではない。

 城から出て2週間、色々あったけど強くなった。

 兵士20人に囲まれても余裕で逃げられると思う。

 でも50人となれば話は別だ。

 どうするべきなのか……


「カエデ、アドア――」


 考えても答えは1つしかない。


「やるよ」


 カエデとアドアの安全を考えるなら抵抗せずに捕まる方がいいと思う。

 でも2人はこんな状況になるとしても僕についてきてくれると言ったんだ。

 その覚悟を無駄にしない。

 カエデとアドアは僕の言葉に頷き、魔法を唱え始める。


「勇者魔法『フォース』! 勇者魔法『バリア』!」

「治療師魔法『バリア』、治療師魔法『オートヒール』!」


 2人共、前衛である僕に援護系の魔法を掛ける。

 ちなみに『オートヒール』は対象を自動で回復させる魔法だ。

 使えるようになってから、アドアはよくこの魔法を使っている。


「その様子だと投降するつもりはないようだな。多少傷つけても構わない、全員、ロア・ノーブルを捕えろ!」


 役所の男が言い終わると同時に兵士が一斉に僕を襲う。

 アドアとカエデを攻撃するつもりはないようだ。

 それは好都合。


「戦士魔法『サークルエッジ』!」


 光の刃が僕に近づく兵士達を斬る。

 盗賊に使ったときより威力は上がっているはずだけど、兵士達は傷を負っただけで倒れはしていない。

 でも攻撃が通じていないわけではない。

 僕の反撃に驚く兵士達に続けて魔法を使う。


「戦士魔法『クエイク』!」


 戦士魔法『クエイク』は周りを振動させる魔法。

 僕がこんな魔法まで使えるとは思っていない兵士達にはよく効くだろう。


「うわっ!」

「何でこんな魔法が使えるんだ!?」


 思った通りの反応をしながら体勢を崩す兵士達に近づいて足を斬る。

 僕は体勢を崩している他の兵士に対して同じことをする。

 当然僕より強い人には通じていないから、僕はその人達の攻撃を受けながら、隙をみて作業を続ける。

 そして戦闘が始まってから数分で10数人の兵士を戦闘不能にできた。

 これならいける。

 

 

――戦闘開始から10数分後。

 僕達を包囲する兵士は20人程になっていた。 

 魔法を駆使して慎重に戦ったし、僕はカエデとアドアの援護があったからほとんど無傷の状態だ。

 この調子なら時間は掛かるけど十分勝てそうだ。


「はぁ、情けない」


 ふとそんな声が聞こえてきた。

 その瞬間、目の前に立派な鎧を着た騎士が現れ、僕の首に向けて大剣を振るう。

 急なことで反応が遅れて剣で防ぐしかなかった。

 しかし大剣の勢いは強く、大きく仰け反らされる。

 

「王国の兵士ともあろう者がこんな子供に後れを取るとはな。これは一度兵士を鍛え直すべきか?」


 騎士は続けて攻撃はしてこないで、ゆっくりと僕に近づく。

 僕はその間に体勢を立て直す。

 さっき攻撃を受けてわかった。

 この人は強い。


「戦士魔法『エンチャントパワー』!」

 

 僕は自分自身の強化を重ねて掛ける。

 強化系の魔法を掛け過ぎると体が耐えられずに壊れる可能性もある。

 でもこうしないとこの騎士には勝てない。

 騎士は変わらずゆっくりとした足取りで僕の前に来た。


「さっきの一撃を受けたのを称して殺すのは止めてやろう」


 騎士は余裕のある態度で僕を見下ろす。

 やっぱりさっきの攻撃は殺す気だったか。


「逃がしてはくれないんですね」

「当然だ。ケイト様のご命令だからな」


 僕とこの騎士の基礎能力の差はかなりあるだろう。

 それがカエデと僕の魔法でどれだけ縮まっているだろうか。


「戦士魔法『ブレイク』!」


 戦士魔法『ブレイク』は今の僕が使える中で一番威力がある魔法。

 相手の内部に力を伝え、内側から体を破壊する。

 これならどんな鎧も意味がない。

 僕の剣が騎士を捉える――


「ふむ、それなりに速いな。しかしこの程度では私には勝てない」


 しかし騎士は全くダメージを負っていないようだ。

 そして僕の腕を掴み、空中に持ち上げる。

 その動作が速くて僕は防げない。


「さて、気絶してもらおうか」


 騎士が剣を納めて拳を握る。


「ロア君を離せ! 勇者魔法『バレット』ッ!」


 これまで援護だけをしていたカエデが騎士の後ろから攻撃をする。

 青白い光の弾丸が騎士目掛けて飛んでいく。

 それに気づいた騎士は僕を殴ろうとしていたのを止めてカエデの方を見る。


「騎士魔法『ウォール』」


 カエデと騎士の間に黒い壁が出来上がる。

 弾丸はそれにぶつかり消滅する。


「ほう、中々の威力。さすが勇者様だ。」


 そう言うと騎士は僕の方を見て、そして腹を殴る。

 僕はその一撃だけで意識が遠のいていく。


「ロア様!」

「ロア君!」


 アドアとカエデの声が聞こえる。

 でも体はもう動かない。


「コイツを城に運べ」


 その言葉聞いたのを最後に僕は気を失った。


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