女の子初日からハードルが高い
桜に引っ張られて、強制的に入店させられる
ああ、もうあの頃のぼくには戻れないんだね
涙が出ちゃう…だって女の子だもん
うん、これ違う意味でも悲しくなって涙が出そうだよ
しかも店内に陳列されている商品がまぶしいっ!
「ぐっ!まぶしい!まだぼくには早かった―――」
踵を返して、店の外に出ようとしたら桜に肩をつかまれた
「なに言ってるの。ささ、あきらめて奥に行こうねー」
「……もう、好きにしてください」
結局ぼくが折れて、ズルズルとぼくの知らない世界が広がっている店の奥に桜に引きずられるように、足を踏み入れた
☆★☆★☆★
「あれもいいなー、でもこっちかな?桜ー、どっちが槙に似合うかな?」
「んー、右かなあ、でも左も良いかも。うーん、両方!ねね、これいいんじゃない?」
女三人寄ればかしましいというけれど、買い物に限ってはどうやら二人いればかしましい
まあ、今ぼくも女ですけどねっ!
そんなわけで、ショッピングモールに来てまず買うものはまず下着らしい
女の子生活初日のぼくにとって、めちゃめちゃハードルが高いような気がするのは気のせいではないだろうな
しかも、本人そっちのけでどんどんかごの中に入れられていく
「って、ちょっと持ってよ!いくつ買う気なの!?」
「「え?」」
「え?じゃないですよ!そんなに買っていったい何週間で全部着終わるんですか!?それに、まだ買わなきゃいけないものがあるのに、ここで全部お金使い切るつもりですか!せめて五つまでにしなさい!」
「「…はーい」」
どうやらこの姉妹は全部買うつもりだったらしい
渋々といった感じで、いくつか戻しに行く
先が思いやられる
まだ、一件目なのにこの調子で行ったら今日はバタンキュー確実だ
今度はあーじゃないこーじゃないと二人で論争を起こしながら少しずつ絞っていく
と、いうか本人の意向を完全無視しているが、どうせ聞かれてもばくにはよくわからないのでお任せしている
まあ、その結果これですが
で、ようやく指で数えられるぐらいまで絞られてきた時に、ぼくにお声がかかった
「じゃあ、あとは槙お姉ちゃんに選んでもらおうよ」
「やっぱり着る本人が選ばないとな、うん」
「え、えーと。じゃあ、これとこれと―――」
残っていたものの中で、派手じゃなく、大人しいデザインのものを選ぶ
「イエーイ、勝った」
「この私が、槙への愛にあふれている私が、負けただと…」
どうやら桜が選んだもののほうが多かったらしい
そして負け犬の姉さんがすごい落ち込んでる
「そんな、勝負じゃないんだから気にしなくても」
とはいっても気にするんだろうけどね
「よし!次は服だ服!!どんどん買うぞー」
前言撤回、あんまり気にしてなかった
「と、そのまえに試着しないとね」
「……やっぱり?」