転校生は朝から大変
さて、そろそろ覚悟を決めるときが来たのかも知れない
物につられたとはいえもうここまで来てしまったら後戻りは出来ない
過去に戻れるならあのときの自分に「もっと後のことを考えろ」と言ってやりたい
「で、なんで姉さんがいるんですか?」
「いやなんていうか、老婆心?」
「なんで疑問系なんですか。それで、本音は?」
「槙が恥ずかしがって、モジモジしてる姿あががががっっっ!」
よからぬ事を言い切る前に釘ならぬボールペンを刺しておいた
「もう一度だけ聞きます。なんでここに姉さんがいるんですか?」
「くくく、聞いて驚くな、あ、ごめんなさい真面目に説明するんでボールペンはしまってください」
こんどこそ姉さんの腕の一本や二本持っていくつもりで獲物を握ったのに、先手を打たれてしまったのでしぶしぶポケットの中に戻す
はあ、姉から一つのことを聞き出すのになんでこんなに労力を割かなくちゃいけないんだろ
「ふう、さてここになぜ私が居るか、それはだな――」
ちょうどタイミングよく、かは定かではないが中から「入ってきていいぞー」という声が聞こえた
「あ、呼ばれたので、ぼくは行きますね」
言い切る前に回れ右してガララッと扉を開け入室する
姉さんが室内に入ってくる前に閉めておく
「ちょっとまっ」
扉を閉めたときに、姉さんの指を挟んだらしく「いでええええええ!!」といいながら床を転げまわっっているような音がする
いくらなんでもオーバーリアクションじゃ?と思ったけどもちろんツッこまない
入室したぼくを待っていたのはいくつもの視線の嵐
回れ右して帰りたい気持ちをぐっと抑えて、教卓の前にいるこのクラスの担任である藤郷先生の横に立つ
教室中の生徒から視線を感じてちょっと萎縮してしまう、あ、桜が手振ってる。同じクラスなのか
「今日からウチのクラスに仲間が増える。まあ適当にヨロシク頼むわ。ほい、じゃあ自己紹介してくれ」
適当な担任だなあ、とは思うけど憎めない感じの人だなあと思いつつ考えてきた自己紹介を発表する
「はじめまして、高城槙と言います。趣味は料理と裁縫です。ヨロシクお願いします」
ふー、噛まないで言えたとホッとしてると
質問の嵐がやってきた
「はいはい、しつも-ん高城って事は桜の親戚?さっき桜も手振ってたし」
桜はあちゃー見られちゃってましたかーなんておちゃらけてる
「はい、ぼくの妹です」
「「「ぼく?!」」」
クラスメイト達の疑問がハモッた
「やっぱり変でしょうか、一人称はわたし変えたほうがいいのかな」
といったらクラス中から止められた、貴重なぼくっ子が居なくなってしまうとかなんとか
まあ、理由はどうあれ一人称は「ぼく」で受け入れてもらったのでよしとしよう
「はい!わたしもしつもーん!!」
「えー、私も聞きたい事あるのに」
「あたしも、あたしも!」
藤郷先生が出席簿をボンボン叩きながら
「おい、おまえらー、まだHR終わってねーぞー、静かにしろー」
さすが先生、ぼくのことを助けてく
「じゃ、あと連絡事項はねーから、くれぐれも仲良く頼むぜ、後のことは高城妹あとはたのんだ」
れたわけじゃなかった
桜は「了解しました、大佐!」とビシッと敬礼まで決めてる
先生は「おう」と言いながらヒラヒラと後ろ手を振って教室を出て行った
しばらくの間、休み時間には質問攻めにされる自分が容易に想像できてため息が出た




