タヌキのシロ救出作戦
タヌキのシロ救出作戦
数時間後シロはアトリエに籠り作業に入っていた。そこに、ある男が訪ねて来た。シロはアトリエの扉を開いた。
男の顔には見覚えがあった。
「こんにちは。御嬢さん、これは偶然ですね。またお会いするとは」
そう話し掛けてきた男は、高級スーツをきっちり着こなしている、本条帝であった。
「おう、いつぞやのイケメン弁護士さんか」
シロは、明るく返事をした。シロの顔面には絵具や白いシャツには汚れが付着している。
「突然なのですけど、シロさん。本日は、仕事で来ました。あなたの作品についてなんですがね。実は、大変言いにくいんじゃがぁ、盗作疑惑が浮上しているのじゃよ」
シロはそれを聞くなり目を大きく見開いた。
「はぁ、なっ、なんでや。ウチの作品は正真正銘オリジナルや」
帝は、悲しそうに下を向き言いづらそうに答えた。
「まだ、ほんの一部の間でしか知られていないことなのですがね。作品を土偶にしたのはあなたが、ある博物館で似たような作品を見たからではないかという噂があって」
「そっ、そんなことない。あれはウチのオリジナル作品だ」
シロは、動揺をしていたが、首を左右に振ると大声で答えた。
「いえいえ、そんなに動揺しないで、まだ、あまり世間では騒がれていないようじゃから、今のうちに私がお調べしてあげたく今日は伺ったのじゃよ」
シロは、動揺するとアトリエの中をグルグルとまわり一周すると帝の目の前で止まった。
「どっ、どうしたらええん。盗作なんてしてないわ。ウチは、アンタみたいな大物弁護士を雇う金なんか持ってないのに」
「いえいえ、お金なんていりませんよ。御嬢さんは盗作なんてしないでしょう。
ワシが勝手に申し出た話じゃからねぇ」
「ほんとうに盗作なんてしてない、ビリケンさんにも誓えるわ。
あんた良い人だ。」
シロは、動揺しながらも少し落ち着いたようである。
「その代り、いったんワシの会社に来てくれんか。詳しい話をしたいからなぁ。
車を外に任せてあるから。さぁ」
「わかった、少し待っていてくれ。今、普段着だから着替えてもええかい」
「ええ、どうぞ」
シロは、急いで着替えを済まそうと後ろを向いた。
そのとき、彼女の首からバチンと電気がはじけるような音がした。
背後から帝が持ったスタンガンで気絶させられたのだった。
帝は、倒れて床に転がり落ちるシロを立ったまま不敵な笑みを浮かべて眺めていた。
「ふっ、会ったばかりの人には例え相手が警察官や弁護士でも気を付けた方がいいですよ。御嬢さん」
帝は、シロを担ぐと黒いワゴン車にシロを連れて行った。車には運転手のある女がいた。
後ろのドアを開けると気絶したシロを座席に横になるように置き、彼女の猿ぐつわと手を白いタオルで縛った。助手席に乗り込んだ帝は、笑いながら言った。
「ふふっ、これからが本番だからな」
しばらくして、誰もいないアトリエにシロの弟子が訪ねて来た。
「シロさん、今日もよろしくおながいします。入りますよ」
弟子がドアを開けるとそこには、シロの姿がどこにもなかった。
「あれ、おかしいなぁ、アトリエに来て作品を手伝ってほしいって連絡あったのに」
不振に思った弟子は警察に通報した。
弟子の名前は宇山健である。都内の美術学校を卒業後シロの手伝いをしている。
2時間待っても連絡がないことやアトリエに鍵がかかっていなかったことを不審に思った
宇山は思った弟子は警察に通報した。
20分後、警察が到着した。シロのアトリエは小高い山の上に建てられているため
到着するのに時間を要した。
一人の刑事がパトカーから降りてきた。
「初めまして、刑事の藤堂というものです」
刑事は、宇山に名刺を渡した。
「今回の事件はあの事件に関係しているに違いないなぁ」
刑事が一人考えていると彼の後ろから声が聞こえてきた。
「失礼ですが、あなたが通報した人ですね。現場から何か盗まれたものや不審な人物などは目撃しませんでしたか。」
「不審な人物は見ていません。それに盗まれたものもないですね」
「んっ」
「フムフム、不審者はいなかったか」
刑事は後ろに振り向くと予想しなかった人物がいたことに驚いた。
「秋元さん。なんでこんなところにいるのですか。それに関係以外立ち入りは禁止ですよ」
「出たよ。刑事の決め台詞2パターン。真昼君、早く、早く」
「編集長待ってくださいよ。これ重いのですからね」
真昼は、急な坂道を秋元に持たされた思い鞄を持ちながらゆっくり上ってきた。
「カメラ分は働いてくれよ、真昼君」
秋元は、腕を組みながら笑っている。
「で、他に何か情報はないのかな。」
「ええっと、話して話してもいいですか。刑事さん」
宇山は、刑事に聞いてきた。
「少しお待ちください。秋元さん、出版関係者が勝手に捜査に加わられてはこちらとしても責任が取れません。もし事件に巻き込まれたりしてもこちらとしては責任を取れません。次に、勝手に捜査の情報を他の会社やマスコミにリークされでもしたらこちらは大迷惑です。ですから、お帰りください。」
「ふーん、そんな口聞いてもいいのだねぇ。藤堂刑事、せっかくいい情報持ってきたのに。てゆうか、シロ君が今どこにいるか大体わかるのだけどなぁ」
秋元は、自慢げに話した。
「えっ、どうゆうことですか」
宇山と藤堂が同時に声を上げた。
「はいっ、そこで真昼君の活躍です。パチパチ」
秋元は、短い前足をパチパチと鳴らした。
ようやく階段を上り終えた真昼は、近くのアトリエの階段に思い鞄をドスッンと肩から降ろし鞄を開いた。中には、ノートパソコンとパラソル型の装置がつけられた通信機器が入っていた。
刑事たちは、真昼の近くに集まった。秋元は、ポトポトと真昼の近くに寄ると勝手に説明を始めた。
「これは、発信器を探索する機会でね。真昼君に持ってきて貰いました。でねぇ、藤堂刑事………。これ以上は、わが社の企業情報でもあるからねぇ。教えてほしければ協力してくれるかなぁ」
秋元は、小さい体を思いっきり藤堂に着きだすと自信満々に腕組みをしながら睨んだ。
「んっ、本当にわかるのですねぇ」
「ええっ、わかりますよ」
藤堂は、口をへの字に曲げ苦渋の表情を浮かべると、唾を飲み込んだ。
「わかりました。私、個人が出来る限りならば協力しましょう」
「よしっ、じゃあよろしくね★」
真昼は、藤堂が了承したことを確認するとしゃがみ込み装置を黙々と組み立て始めた。
秋元は、説明を始めた。
「じゃぁなんで、わかるか説明してあげようか」
「僕も聞いていいのですか」
宇崎は、手を挙げて質問した。
「ええっ、いいですよ。その前にまだ事情聴取や現場検証をしていませんでしたね。ここで軽く事情を聴くとして後日署に来てください。また、後1時間後には鑑識も到着しますからあなたはそれまではここに残っていてください」
「はぁ、わかりました」
「一人で残すわけではありませんから安心してください。私の車にもう一人刑事が乗っていますから彼が付きますから」
「んっ、じゅあ、説明するね。そもそも僕はさっきまで警察署にいてシロ君と一緒にランチを食べていた。その時に、気が付いたのだけどね。」
そうゆうと、タヌキは自分の肩に手を乗せた。
「シロ君の肩に、発信器らしき何かが着けられていたのだよ。でねぇ、最近小森美術館かシロ氏が作った土偶が盗まれた事件が起きたじゃないか。そして、シロ氏はそのことを詳しく説明されるために警察署に呼ばれたわけだよねぇ。つまり、シロ君は今回の事件の最重要人物そんな人物に発信器が着けられていたら、犯人が発信器を付けた可能性が高い。しかも、シロ君は今日発信器を付けられている。犯人は、シロ君がどこにいるのか犯人は確認して起きたかった。つまり、犯人は今日何かアクションを起こそうとしている。だから、シロ君と食事しているときに僕も服の背中に追跡用の小さな機械を仕掛けさせてもらった。もちろんシロ君はそのことを知らないけどねぇ」
「編集長、やっぱり将来捕まるじゃないか。とゆうか、今警察の目の前で犯罪を自白したようなものだけど」
「でっ、シロ氏は今どこにいるのかわかるのですね。まるで探偵のようですね」
藤堂の目がキラキラしている。
真昼は、藤堂がどのように反応するか汗をぬぐいながら見ていた。
「あれ、普通にスル―しているよ」
「そうそう、でねぇ。今はどこにいるのかというとお願いね、真昼君」
「あっはい、準備出来ましたよ」
真昼は、パソコンをカタカタと打ち終えると全員の顔を見た。
ノートパソコンには、ブーグルのような地図が表示されていた。
その中央には、赤く動く点がチカチカ点滅している。
「場所は、どこらへんだい」
「ここから、20キロくらい離れたところですね。まだ移動しているようです」
「刑事さん、僕の車で犯人を追ってもいいかなぁ」
「もちろん、それならば私も付いていきます」
「ええ、ご協力よろしくお願いしますよ」
秋元が運転している車に乗り込んでしばらく走っていると、隣の真昼は秋元に大きな声を挙げた。
「編集長、大変です」
大きな声に運転をしていた秋元は一瞬車のスピードを落とし車が揺れた。
「なんだい、真昼君。驚いたじゃないか」
「シロさんの行方が大変なのですよ。シロさん今は海の上いますよ」
「なんだって、海の上なんてどうやって見つけるのですか真昼さん」
刑事が慌ただしく聞いてきた。
「いや、それが結構有名な港にいるみたいですよ」
「どこですか」
「赤レンガの有名なY浜ですよ」
「なんで、そんな有名なところにシロさんがいるのですか」
「そんなの僕は知りませんよ」
「ん、でも船の上とかだったら厄介だねぇ。仮にどの船にいるか分かったところで
簡単に船になんて入れないからねぇ。警察とかの管轄じゃなくて海上に犯罪だと海上保安庁とかが出てこないとダメだからぁ」
秋元は、運転しながらも会話をしている。
「まぁ、とりあえず。船が見えるまでの所にはいってみようじゃないか」
秋元は、短い脚でアクセルを踏むと車のスピードを上げた。
しばらくして、三人は港に到着した。秋元は、発信器が反応している船を見つけた。
それは、大きな客船であった。豪華な作りになっていて甲板にはプールが着いている。
秋元は、困ったように顎を掻いている。
「んー、藤堂刑事。一様だけどシロさんがいなくなったかもしれなくて、発信器をたまたま着けていたので追ってきたら船から発信器の反応があるからクルーズ船の中を調べさせてほしいって理由で海上保安庁に掛けあうなんてことは出来るかい。君みたいな平刑事に」
「無理ですよ。そんなの、とにかく一旦戻って本当にシロさんが失踪したのか、
それとも連れ去られたのか。調べるしかないですねぇ」
「そんなぁ、せっかくここまで来たのに。編集長どうにかなりませんかね」
「そんなこといっても、真昼君。僕もいろいろ考えてはいるのだけどねぇ。
例え僕が猫にでもなって甲板に入ったとしてももし中に普通の乗客が居たら僕が無銭乗船で捕まるだけだしねぇ。人間と動物の法律は共通っていうことが日本のルールだから例え猫になっても捕まるしなぁ」
秋元の車の前で三人は頭を悩ませていた。
「しょうがない、ここは一旦引くとしよう」
「藤堂刑事、どうにか館内を捜索できるように出来るだけ掛け合って見てもらえませんか」
「わかりました」