タヌキの事件解決編
タヌキの事件解決編
秋元は帝を指さした。追い詰められたのは帝のほうであった。
「やっといたねぇ、探す手間が省けたよ」
「あぁ、秋元さんちょうどよかった。船内に不審な人物がいるので捕まえてください」
帝はシロを指した。
シロは、秋元の方へ急いで走っていった。
秋元は、帝を指差すと話し始めた。
「シロ君を攫ったのは君だろう。そして、僕らに招待状なんて出したのも」
「その方は、シロさんというのですか。知りませんでしたよ。招待状ワシはそんなもの出した覚えなどないのじゃけどのぉ」
帝は、秋元の後ろにいる女に顔を向けた。
「招待状を出したのは、君か。慶子くん」
女は、笑みで帝に返事をした。帝は、慶子から秋元に視線を移した。
「証拠は、あるのか」
「証拠は、あの赤い液体と君の髪の毛だよ」
「その赤い液体とはなんのことかい」
「鑑識によれば水、次亜塩素酸塩 、 水酸化ナトリウム 、アルキルアミンオキシド 、純石けん分 、安定化剤と赤くするために着色料の赤色が使われていたそうだよ。」
「くっ、バレたか」
「もう降参したらどうだい、帝君」
秋元は、両手を広げると帝を挑発した。
そばにいた。真昼は、藤堂にこっそりと聞いた。
「えっと、つまり何なのですか」
「要するに髪の毛などを分解する成分が入っているモノなのですよ」
藤堂は、静かに答えた。
それを聞いた秋元は、真昼にもわかるように簡単にまとめてしゃべり始めた。
「つまり、人間や動物の皮脂やタンパク質、髪の毛を分解できるのだよ。要するに奴は証拠を隠すためだね。」
「髪の毛を溶かす。あぁ、そういえばこの前のコロコロの毛は何の動物だったのですか」
「あれは、狐の毛でした。ちなみに種類はキタキツネ日本に多くいた種です。」
「狐とタヌキの化かし合いまさに日本昔話に出てきそうだねぇ。ねぇ、帝君」
帝は、秋元の態度に苛立ち始めた。
「そうだねぇ、あとねぇ。証拠隠滅を怪談話に見せかけたことが悪かったね。逆に髪の毛を隠滅しなければならないなんて、獣の種族であるとはっきりとわかったよ。それに、盗まれたのがシロ君の土偶なら犯人はそのうちシロ君の周りに現れるであろう獣だ。そして、なにより映っていたのだよ。真昼君が撮っていた館内の写真に君の姿がね。もちろん客として来ていたのだろうけど今や人気スターの君がわざわざ平日に美術館なんておかしいのだよ。そして、決定的なことは、君はいつも人の姿をしていて狐の姿を一回も出さないことだよ」
「ふっ、確かにワシは獣族じゃが。なぜ狐であるとわかるのじゃ。ウサギかも知れんよ。それに獣族の中には人型を好む者も多いがねぇ」
「いやっ、君は狐だよ。しかもあの有名な本条の狐だろ」
「くっ、なぜ本条家が狐族だと知っている。知っているのは大学の同期くらいって」
「やっと本性をだしたね、狐さん。いや学年で有名だった本条君」
「貴様が、まさか同じ大学にいたとは不覚だったよ。」
「そうだよ、僕も慶王の同期だよ。けど、あの時は結構君有名だったよ。毎週、高級車が止まって迎えに来るって」
「狐族であってもワシとは限らないだろう」
「いや、だから証拠がちゃんと移っていたのだよ。美術館にいたよねぇ」
秋元は、真昼のカメラを指した。
「いやぁ、無理言って美術館の写真のデータさぁ、コピー取った甲斐が合ったよ」
罰が、悪くなったのか帝は慶子の方に喋りかけた。
「慶子君、シロ君をこっちに」
慶子は、突然すばやく動くと秋元の側にいたシロの腕を掴み帝の方へ歩み寄った。
慶子は、シロの腕を後ろに回し彼女の動きが取れない状態にした。
「卑怯だぞ。慶子君、君はそんなことをする人じゃないはずだ」
帝と慶子はシロを人質に取りながら、船の上を甲板に向かい移動した。
秋元と藤堂は急いで走っていった。
しばらくして、人気のない甲板へ来た。
「くっ、やはり来たか。この大食いタヌキめ、ワシの正体に気づいていたのには感心する。しかし、貴様にこの娘を渡すわけにはいかん。ワシには、彼女の技術が必要なのだ。これ以上割り込んでくるなら彼女は海の底に沈むかもしれんよ」
「技術が必要なら無茶は良くないよ。そこだよ、なんでシロ君なんだい」
秋元は、真剣な表情のまま帝の方に1歩近づいた。
「教えては、やらん。なんせ本条家の秘密に関わる事じゃ」
「とにかく、シロ君を危険に晒さないでくれ」
しばらく、秋元と帝の交渉が続いた。そのとき、真昼が何やら近くに置いてあったカートに手を伸ばした
秋元が、帝の様子を窺っていると真昼がいきなり、秋元を担いだ。驚いた秋元はタヌキに戻った。真昼は、秋元を茶釜の上に乗せるとカートごと帝の方に全力の力を込めて押した。
「狸鍋です。どうぞ」
秋元は、高速で進むカートに驚きながらも捨て台詞を吐く、真昼に文句を返した。
「真昼君。あとで覚えていろよ」
見事な、ストライクを帝に決めた。秋元は、帝にぶつかった衝撃で弾き飛んだ。
帝は、シロを手放すと甲板に倒れ込んだ。その隙にシロは、急いで真昼の方に駆け寄った。
「真昼さん」
「シロさん大丈夫ですか」
真昼は、シロに駆け寄るとシロを自分の後ろに庇った。藤堂は、二人の様子を見て安堵した。
「ウチは平気や」
シロには、外傷はなく元気そうだ。帝は、ぶつかった衝撃で変化が解けた。
そこには、黄色い狐が透明なケースを咥えていた。
「くっ、覚えていろよ。しかし、鍵はもう出来た。後は、土偶を完成させるだけだ」
そのとき、慶子は服のポケットからリモコンを取り出した。慶子は、素早くリモコンのスイッチを押すとどこからか水上を掛けるモータバイクの音が聞こえてきた。慶子は、自分の胸に腕を当てると秋元の方を向き大きい声で喋り始めた。
「ごめんねぇ、秋元君でも私は、美術館なんかよりも自分で素晴らしい作品を集めたくなったのよ。美術館に飾られる作品の大半は一定期間飾られて他の所でも展示される作品なのよ。だったら、私は、この手で素晴らしい作品を集めてみたいのよ」
そういうと慶子は、船上から数メートル下の海上へと落ちて行った。
「慶子君、危ないっ」
秋元は叫んだが、慶子は人とは思えない運動神経でモーターバイクの上に降りっていった。
帝は、すぐに慶子の乗る水上バイクに飛び乗ると広い海を逃げて行った。
真昼は、慌ててカメラを構えると海の地平線へと消えていく二人を写真に収めた。
「これは、大変なことになりそうだ」




