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「秋元編集長のスクープ事件簿」  作者: 秋山 そら
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秋元と真昼のコンビ結成

秋元と真昼のコンビ結成


朝、真昼が昨日の疲労を引きずりながらも会社のドアを押し、社内の自分の席へと向かった。真昼の席は比較的窓際にあり、窓のすぐそこには秋元が堂々とした風貌で腰を据えている。秋元は、新聞を開きながら、回る椅子を回転させている。彼は、真昼を新聞越しに見つけた。

「おはよう、元気かい☆。僕は元気だよ☆。」

「おはようございます。昨日はどうもありがとうございました」

朝から、良くジョークを飛ばす元気があるなぁと感心しつつ、真昼は自分の机に機材を置いた。

秋元は、新聞を畳むと、机に鞄を置き、中から大量の菓子袋を取り出した。そして、それを空にしはじめた。

「今日も大量のお菓子ですね。糖尿になりますよ」

真昼は、秋元の菓子に目をやりながらため息まじりに注意した。秋元は、目線だけ真昼の方に向けると菓子を口に運んだ。タヌキ特有の丸い手を使い器用に食べ物を持っている。

「僕の一番のファンが毎日、家にいれてくれるのだよ。食べないともったいないだろ」

そう言いつつも、秋元はチョコレートの包みを解いている。

「ファンなんているのですか」

たしかに見た目はともかく……。と真昼は、デップリ太ったタヌキの体型を観察した。

仕事もでき、才能もある人物だ。物好きもいるのかもしれない、いやタヌキ愛好家かとも真昼は思ったが、その考えはすぐに消えた。

「僕自身が僕の一番のファンだよ☆」

「それ、要は食べたいだけですよね」

「それは置いといて今日も小森美術館に行くよ」

秋元はお菓子専用のバックへ、机の奥からお菓子袋を取り出し詰め始めた。

「わかりました」

真昼は机から取材に必要そうなものを探し始めた。

「君には写真を撮ってもらうよ。準備してくれ」

秋元はファイルに入った書類を無造作にバックに詰めた。

「じゃあ、カメラとライトとレンズとか持っていくので表で待っていてください」

「わかったよ。そういえば、面白いことが昨日起きたのだよ。スクープになるかもしれないからカメラも多めにね。」

秋元がいつになくニヤニヤしている。

「スクープですか?」

「そうだよ。警察もいるから気を付けて。特にアズマってゆう刑事がいると思うから気をつけてくれ」

秋元はアズマとゆう人物をあまり良く思ってはいないようだ。

「警察?まさか殺人事件とか?」

真昼は、手早く機材を運び車に乗せる荷物を整えた。


 美術館


 真昼と秋元が美術館に着いたころには警察のパトカーが三台到着しいていた。

それを目にすると自分の手が少し汗ばんでいることを自覚した。

一方で秋元は少し笑っている。おかしいのかスクープが撮れるかもしれないことに期待しているのかわからない表情である。

「で、どうやって中にはいるのですか。警察がいるなら中には簡単に入れませんよね」

真昼は、車から降りてカメラを肩に掛けた。そして、重いレンズを入れたカバンを掛けた。

「それは問題ないよ。とりあえず着替えようか。はい、これ」

ゴソゴソと小さい体を器用に車のトランクへ押し込むと、ドラマの中で刑事が着ていそうな服を取り出した。所々には誰かが来たものなのかシミが着いている。

「こんなのどこで売っているのですか」

「秋葉原だよ、コスプレ専門の店がたくさんあるのだよ。これは、その店の中古品だよ。古い方が本物らしいだろ」

秋元は、衣類を両手で広げ始めた。

「確かにそうですね、でもこんなの着てもすぐバレますよ」

タヌキのようのコスプレ衣装の寸法はいったい何が基準なのだと真昼は少し考えたがやめた。この世にはいろいろあるらしいと真昼なりに解決させた。

「その点は問題ないよ、上司命令だよ」

彼の命令は真昼にとっては絶対であるため、とりあえずは人間用の衣装を林の茂みに隠れ着替えることとなった。

二人は服を着替えて美術館へ向かった。もし、美術館に大勢のマスコミや野次馬がいたなら一番目立つだろう。

 美術館の入り口へと行くと警察官らしき人物が二人、入り口に立っている。真昼は、一旦歩くのをやめ止まったが、秋元は堂々と警察官の下へと向かう。

「よっ、川島君、こっちは新人の真昼君。今日もよろしく」

「はっ、了解しました。アズマ警部」

警察官の一人は何の躊躇もなく敬礼と挨拶をしている。

難なくKEEPOUTと書かれた検問テープをくぐり抜けた。川島という警察官は敬礼した。そのまま秋元を疑う様子もない。

「なんであんな簡単にくぐれたのだ」

真昼が後ろを振り返り警察官を見て、考えていると秋元は唐突に説明をしだした。

「アズマという警部は僕の双子の兄だよ。普段顔を見る機会の少ない警察官には僕と兄の違いはわからないだろうね」

「双子………ありえっ…」

「どうゆう意味かい」

秋元が少し不機嫌になった。

「いえ、何でもありません…。双子……」

双子=美男美女というイメージが崩れた瞬間だった。補足になるがタヌキや他の動物にも顔がある。よって必然的に美系の顔やその他の顔も存在するのである。

「しかし、すんなり入れたのは、良いがくれぐれもアズマには会わないにしてくれ、すぐにバレてしまうからね」

「わかりました」

真昼は秋元の後に着いて行った。

「よろしい」

秋元は頷くと前を見ながら進んでいった。

二人は、美術館の中に入った。周りの警察官は真昼のことを不振に思っているようだが、隣にアズマの顔した秋元がいるので警察関係者だとおもわれているらしい。

真昼は、館内を見ると息を呑んだ。

 館内は異様な空気に包まれていた。床のところどころに血のような液体が広がっていた。しかし、腐臭はない。館内は、それ以外一見すると昨日のままのようである。

「事件ってなんだ?」

真昼は呟いた。秋元は、館内に入ってすぐにある女性を見つけた、慶子である。

慶子は、不安そうな顔でこちらを見ていた。

「秋元さん、大変なのです………。なんですか、その恰好?」

慶子は駆け寄ると二人の全身を確認した。秋元はその質問を流した。

「怪異な盗難事件だろ、館長から連絡が来たからね。君にも連絡があったのだろ。」

「はい、盗難時刻が昨日の深夜頃らしく前日にいた人が怪しいと……」

慶子がうつむきながら喋った。真昼は状況を理解した。

「そうなのですか、ん。じゃあ忍び込まなくてもよかったじゃないですか。編集長」

真昼は秋元を睨んだ。

「いや、フツーに入ったら僕の兄に絶対会う。それだけは勘弁してくれ」

秋元はここ数年で一番嫌そうな顔をしていたことを本人は知らない。元の服に戻し館内に入った。

「怪異な盗難事件か、確かにネタになりそうだ。それにしても、そんなに嫌いなのか、どんな人(?)なんだ、お兄さんは」

紺色のスーツを着た、七三で細目の中年男性がこちらに来た。いかにも刑事というよりは銀行員のようにきっちりとスーツを着こなしている。刑事は七三を一回かきわけるといった。

「はじめまして、藤堂直樹といいます。今回は小森美術館にて盗難事件が発生いたしましたので、皆様に昨日一日のアリバイをうかがいたいと思います。また、館内の広範囲に赤い液体が撒かれていることから怨恨の線も視野にいれています」

藤堂は名刺を胸ポケットからとり取り出し各自に渡してきた。

「こちらこそ、はじめまして東都出版の社長兼編集長の秋元です」

「はじめまして、同じく東都市社の真昼です」

「はじめまして、小森慶子です」

秋元と真昼、慶子の順に挨拶した。

「では、みなさん詳しいお話は別館にある会議室でよろしくお願いします」

四人は、会議室に移動した。移動途中には、周りには鑑識の人たちが多くいる。鑑識は美術品から指紋の採取をしていた。会議室には、職員の人々がいた。

「では、お話します」

刑事はホワイトボードを裏返すと書いてあるものを指さしていった。

「今回、盗まれたのはギリシア文明の発生当初にキュクラデス諸島で農民が作ったとされる象をモデルにしてつくられた新型の土偶です。今注目の新人芸術家である。遠山シロ氏の作品です。みなさんも遠山氏の名前くらいご存じでしょう」

「今回の取材で一面に使う予定の作品ですよ」

真昼は手を挙げて言った。

刑事は、腕組みをして言い出した。

「今回の事件関係の資料として、あなたが昨日撮った写真を没収したと思いますが」

真昼は肩を落とした。

「しかたない、ですね。あとは、館長の写真を撮るだけだったのですけどね」

真昼がカメラを首から取り外し刑事に渡そうとしたとき、秋元が笑いながらそれを遮り勝手に喋りはじめた。

「じゃあ、その代わりに今回の事件はうちの社の独占取材でいいかな。でないと協力はしないよ。資料提出は確か任意だったよね」

秋元はなんと刑事を脅しにかかった。

「わかりました。検討します」

渋々藤堂は答えた。藤堂は、カメラを真昼から受け取ろうと手を伸ばした。しかし、秋元の手で遮られた。

「じゃあ、まずは現場の状況は。どんな感じなんだい」

さらに、秋元は自分のペースに持ち込もうと話を進めた。

「現場は、昨夜の……」

藤堂は渋々事件の概要を話しはじめた。話が長いのでまとめると犯人は美術館の警備システムをくぐりぬけ二階の本展示室に行くと何らかの方法で作品を運び出したらしい。一通り話終えたことを確認した後、秋元が何かたくらんだようにニヤけていた。

「よし、真昼。昨日の写真を見せてみろ」

「刑事でもないのに、編集長は謎解きでもするつもりですか」

真昼は一眼レフのカメラを渡した。

「捜査資料となるものを勝手に観てはいけません」

藤堂は秋元を止めに入った。

「一回でいいから中のデータのチェックをさせて貰えないか。中に社の大事なデータが入ったまま渡してのちに回収できない。なんてことになったら困るぞ」

「わかりました。チェックしたら、とりあえず署までご同行願います。任意ですが事情聴取を受けて頂くことになりますのでご協力ください」

刑事は、こいつは扱いにくいという顔だった。

「わかった。」

秋元はカメラを手にした。メガネを外し、目を擦りメガネをかけ直して画像をチェックし始めた。

真昼は、この時秋元が掛けているメガネに小型のカメラが付いていて目を擦るふりをしてそのカメラのスイッチを押したのだろうと理解していたが、真昼としても写真データがいつ帰ってくるかわからないため、秋元の行為を黙っていた。

「抜け目がないというか、編集長は絶対いつか捕まるだろうなぁ」

その後、秋元、真昼と刑事は警察署にいた。慶子は一足先に事情聴取を終え帰った。 

「事情調査ならかつ丼はないのかね。かつ丼は判田屋のかつ丼がいいな」

秋山の事情聴取の第一声である。

「編集長、かつ丼なんて出るわけないじゃないですか。あとで食べましょうよ」

向かいの刑事が出前のチラシを机から出した。

「いいですよ。判田屋のかつ丼ですね。三つ頼むよ」

藤堂は電話を開くとボタンを押して、出前を取り始めた。

「あるのか………」

真昼は、驚いて一瞬固まった。

その日は、事情聴取とかつ丼とメガネのデータを確認して終わった。



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