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「秋元編集長のスクープ事件簿」  作者: 秋山 そら
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合流

合流


帝は、パーティ会場を抜け出すと客室に繋がる階段へと向かった。

波が次第に高くなっているのか、船が左右に揺れ始めてきた。帝は、左右に揺れながらも客室の階段を上がり、自分の部屋がある特別階へと向かった。廊下にたどり着くとそこには、派手なパーティ会場から一転して人の気配もない廊下が広がっていた。


「さて、そろそろ本番だな、やっと私の野望が叶う」


帝は、部屋に行き、ドアの向こう側に小さく声を掛けた。


「私だ、いるか。カメラ小僧はどうなった」


ドアの向こうから、女の声が聞こえてきた。


「大丈夫、データは抜いておいたし彼には気が付かれないようにしたから」


「入るぞ」


帝は辺りを見回し人気のないことを確認すると、部屋のドアを静かに開けた。

帝の部屋は、船内の中でも一番大きな部屋を手配してあり相当広い作りになっている。

部屋の角に置かれた椅子にはシロの姿があった。

彼女は、目を覚ましており両手を縛られた状態で座っている。 


「やぁ、どうやら上手くやってくれたようだね」


「えぇ、もちろんですよ」


女は優雅にテーブルでお茶を飲み始めては終えた。

女は、ドレスを華麗に着こなしている。そして、飲んでいた紅茶をテーブルに置くと話し始めた。


「もうすぐ、船が港についてしまうから早めに制作して貰いましょう。ねぇ、シロちゃん」


シロは、括り付けられた椅子ごと体を揺らすと縄を解こうと抵抗してみた。しかし、かたく縛られた縄はそう簡単に外れるようなものではなかった。


「クッ、なんやウチをこんな船に連れ込んでアンタら何をさせる気や。ウチは簡単には従う気はないで」


シロは、出来る限りの大声で叫んだ。もしも、廊下に誰かいたら聞こえるかもしれないと思ったからである。しかし、この階は、帝の部屋しかなく廊下に声が響いても誰にも聞こえていない。

シロは、帝の方を向くとさらに大きな声を張り上げてこう言い放った。


「アンタ、弁護士なんやろ。なんで、ウチなんか誘拐しているの」


帝は、シロの様子を身降ろすように眺めながら鼻で軽く笑っていた。


「フン、弁護士と言うのは仮の職業ですよ。御嬢さん、我が帝家は代々美術品を収集することが職業ですよ」


「美術品の収集、どういうことや」


「つまり、我が家は代々怪盗をしています」


帝の隣にいる女は、口元を手で隠しながら笑った。


「フフッ、そうなのよ。だから、あなたの作った作品も彼は持っているのよ」


シロは、一瞬固まるとあの美術館での事件を思い出した。


「ウチの作品を盗んだのもアンタらか」


帝は、シロの傍に歩いていくと椅子に座る彼女を身降ろすように覗き込み喋り始めた。


「そうだよ、実にあの作品の出来は良いものだった。発想、作品の形、色、そして、あの正確な左右対称の作り、ぜひ君に作って貰いたいものがあってね。手荒ではあったのだがこのような形になってしまったのだよ。何君を殺したりはしない、それに用事さえ終わらせてくれればその後は、秋元と言うあの男が君を見つけてくれると思うよ」


「そのために、わざわざ招待状なんて出したものねぇ」


女は、にこやかに喋った。


「あのタヌキは、好奇心の向くものだったら必ず来るだろうと思ったからねぇ。それにわざわざ目の前でシロ君が攫われたら、助けにくるだろう」


「ウチに、作って欲しいモノがあるならなんでわざわざ誘拐なんか。頼まれれば作ったのに」


「君に、依頼しても断るだろうと思ったからだよ。なんせ、我が家の家宝を開ける鍵だからね。」


「んっ、鍵」


「そうだよ、ワシの家には、代々伝わる七つ道具があるのじゃけども。それは、なぜかワシの祖父の代で鍵を付けられた。普通の鍵ならば、そこらの腕のいい鍵師にでも頼めばいいんだが………」


帝は、両手を広げると首を左右に振り困った表情を浮かべると、今度は腕を顎に当てて喋り始めた。


「なぜか、鍵は土偶なのじゃ」


「………はぁ?」


シロは、大きく口を開いた。

帝もなぜか、自分で言ったことに対してがっかりと肩を落とし始めた。

女は、帝の肩に手を置くとまぁまぁと慰めはじめた。


「えっ、なんで土偶………」


「ワシにも、わからないわぁ。先祖の祖父は変わり者だったが怪盗としては一流だったと聞いている。しかし、なぜあのように立派な宝物庫を作っておきながら………」


なぜか帝が泣き出した。傍にいた女は、帝を慰める為か帝の肩をポンポンと叩いた。


「ちなみ、鍵は存在しないの。宝物庫を作った時にはあったのでしょ」


「それがのぉ、先祖が亡くなるときに墓に一緒に埋めてしまって今はもう土に帰ってしまったらしい」


「土に帰ったのねぇ、でもこんな船の上じゃ作れないわよ。というか作らないけど」


「それは、心配ない。ちゃんと準備はしてある」


帝は、部屋の奥からなにやらスーツケースを取り出すとそれをシロの目の前で広げ始めた。

中には、粘土のような茶色い土の塊と、大きなゴムの板を取り出した。


「ふふ、これで土偶を作製して欲しい。何形さえ精巧に作り上げてくれれば後は責任を持って焼くだけだからねぇ。問題は、土偶のフォルムなのだよ」


帝は、ズボンのポケットから紙を取り出した。それには、土偶が描かれていた。一見、どこにでもあるような土偶である。


「それは、遮光器土偶やないの、その横にアーモンド形の目が二つあるのが特徴の縄文時代の一般的な土偶や」


「さすが、詳しいねぇ。でも、問題はサイズなのだよ」


「サイズが」


「実は、とても小さいのだよ。小さいが、細部に至る模様まで完全に再現しないとこれは鍵として使えない様なのだよ」


「どのぐらい」


「それが、大体スマートフォンくらいのサイズで、しかも細部のデザインがとても細かいのだよ。こんなに小さい土偶を完全再現できるのは君しかいないよ」

シロは、設計図を見せられると途端に目の色を変えて真剣な表情で見始めた。


「確かに、土偶にしては小さいサイズや。しかも、手の先まで蔓みたいな模様が細かく書き込まれているし」


シロは、芸術家の血が騒ぐのかウズウズしている。


「どうだい、作ってはくれないか」


「いや、怪盗の手助けはしたくはない」


「そうかい、でももし君がこれを断ればここにいる何百人の客と共に海に沈むかもしれないよ」


シロは、驚き帝を見た。


「なんやと」


「この船には、爆弾が仕掛けてあるよ」


「クッ、あんたは卑怯や」


「僕にとっては、ご先祖の残した秘宝の方が客よりも大事なのだよ」


帝は、シロを見下げながら不敵な笑みを浮かべた。


「わかったわ、作ってはみるけど」


帝は、シロのロープを解くとシロの肩を強く握りしめた。


「よろしく、シロ君」


シロは、ゆっくりと帝の用意したゴム板に向かった。彼女はまずは土を丸め始めた。

 土は見る見るうちに丸くなりシロの手の中に収まるサイズとなった。次に彼女は手を器用に使い土偶の形に土を成型し始めた。

後ろには帝と女が後ろからシロのことを見つめている。

 シロが最初に作ったのは、胴体の部分であった。どうやら、土偶はパーツごとに分けて作成するらしい。数分もすると見事なクビレの着いた上半身が出来た。次に、腕の部分を作り出した。腕の部分はまるでお椀のように滑らかな形をしている。そして、脚を作り出した。これも腕のようにお椀の形をしているが若干大きく足首のようなクビレが着けられている。そして、粘土を再度丸めると今度はメインとなる顔を作り出した。顔は茶碗を二つ合わせたような形をしている。そこに、アーモンド形に薄く作った目を貼り付け、身長に横に選を引き顔が完成した。

最後に、ギザギザの入り口の着いた壺のようなものを作ると最後に土偶の頭に逆さにして被せた。そこには、バランスの取れ自立して立つことが出来るまでに完成した土偶が合わられた。


「問題は、ここからや。さっきの図面見せて」


帝はシロに図面を渡した。


「この細かい蔓の絵をどう掘ればいいか」


女が、後ろから声を掛けてきた。


「出来る限り正確に再現して、出ないと本当に開かないのよ」


「むっ、やっては見るわ」


シロは、手元にあった細い棒を使いゆっくりと器用に使い蔓の絵柄を描きはじめた。


「なかなか、絵柄が複雑なのね」


シロは、真剣に土偶に絵柄を刻みながらも喋った。


「どうやらその模様がパスワードの代わりらしいのだよ」


「そういえば、その宝物庫に入っているのってそんなに大切なものなの」


「そうだ、我が一族が四百年間かけ開発した。自慢の品なのだからなぁ」


帝は、勝手に回想を始めた。




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