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「秋元編集長のスクープ事件簿」  作者: 秋山 そら
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救急隊

救急隊


秋元と藤堂は、パーティ会場の入り口付近化から帝の姿を確認した。


秋元は、懐中電灯を片手に真昼が消えた客室階に戻った。暗闇に一筋の光が指し先ほどよりは見透視が良くなった。秋元は、厳しい表情で何かを考え込んでいた。


「うむ、真昼君を攫ったのは、犯人は誰だろうねぇ。帝は、パーティ会場にいるから」


藤堂は、あたりをキョロキョロと見渡し始めた。


「おーい、真昼さんどこにいますか、いたら返事してください」


秋元は、慌てて藤堂を一喝した。


「君は、刑事に癖にバカなのかい。犯人が近くに居たら僕たちが今ここにいることがバレバレだろう。もし犯人が真昼君を人質にして拳銃でも持っていたらどうする」


藤堂は、慌てた様子で手を使い自分の口を塞いだ。


「すいません、つい先程、捜査の癖で鑑識と犯人や人質を探すときは互いに声を掛けていくことが多いもので」


秋元は、藤堂の顔を睨みながらも訝しげな顔を崩さなかった。


「これからは、静かに行動してくれよ。でないとコロンボのような渋さは出ないよ」


秋元は口元に笑みを浮かべながら、藤堂を励ました。


藤堂は、コロンボの単語を聞いた途端にやる気が増したようである。両方の拳を握りしめた。


「はいっ、コロンボように華麗に犯人を説得して見せますよ。見ていてください」


暗い廊下に並ぶドアを照らすとドアの色は一見すると紫とも取れるような赤黒い色をしていた。廊下の床には、赤い絨毯が敷かれているようで懐中電灯を照らすと以前の暗い廊下よりも不気味な雰囲気を漂わせていた。また、秋元達の来た入り口は階段が見えないほどの暗さを保ったままであった。

入り口の方から光がこちらに近づいてきた。何やら話し声も聞こえる。どうやら二人いるらしい。


秋元は、こちらに近づいてくる人影をよく見ようと目を細めながらも入り口の方を注意深く眺めた。


男女の声が徐々に近づいてくるに連れて会話の内容が分かってきた。


「まったく、なんでこんなところに具合の悪い乗客がいるのよ。ここは、不気味だから、私、あんまりきたくないのに」


「あー、わかる、わかる。ここの階だけ電気系統が故障したらしいぜぇ。どうやらネズミにケーブルを噛まれたらしい。今時、ネズミに配線噛まれるなんてめずらしいよなぁ」 


「暗いし、ネズミとかお化けとかでないよねぇ」


女の声は若干震えていた。歩いてくる男女もこちらの懐中電灯の明かりに気が付いたらしい。


「あれ、向こう側に人がいる。おーい、ここは暗いから危ないですよ」


秋元は、手に持っていた懐中電灯を向こうから来る男女に向けた。光に照らされた男女の服には先ほど立ち寄った。救護室の人間が来ていた救護班と書かれた蛍光緑のベストを着ていた。


救護班の男は、二人の姿を確認すると質問をして来た。


「どうしたのですか。こんなところに、あっもしかして部屋にいる具合の悪いという方のお友達ですか」


「具合の悪い乗客ですか」


秋元は、相手の質問をオウムのようにそのまま返した。


「そうなのですよ、救護班に具合の悪い乗客の方が部屋から出られないから救護室まで連れて行ってくれと連絡がありまして」


「そうですか」


救護班の女は、秋元と藤堂の間をすり抜けると一番奥から二番目の部屋の扉に向かった。ズボンのポケットからリング状になった合鍵を取り出すと鍵を指してドアを開けた。


簡単にドアがカチッという音を立てて開いた。ドアを開けると部屋の明かりが廊下一帯を照らしている。


「佐藤さん、乗客の方が居ましたよ。どうやら、ベッドから動けないようです」


秋元と、藤堂はドアの前に向かい中にいる人物を確かめた。

中には、ベッドでスヤスヤと寝息を立てている真昼の姿があった。真昼は、寝返りを打つほど熟睡しているようだ。


秋元と藤堂は安堵し、ため息を吐いた。


「真昼さん、無事でしたねぇ。よかった」


「それにしても、良く寝ている」


秋元は、部屋にズガズガと入り込むと、真昼の体を大げさに揺さぶった。


「真昼君、起きろ」


しかし、真昼は寝息を立てたまま寝ている。

救護班の女性が慌てて、秋元を止めに入った。秋元の手を掴み注意した。


「なにするのですか、いったん救護室に運びますよ」


真昼は、救護班の男性に背を割れる形で救護室へと運ばれた。その間も、真昼は一回も目を覚ますことはなった。


救護班の男女と一緒に秋元と藤堂も救護室へと歩いた。


救護室には先ほどの単発の女性がいた。彼女は、こちらに気づくと駆け寄ってきた。


「どうされたのですか、早く開いているベッドへその人をどうぞ」


救護班の男性に担がれた真昼は動かない体をベッドにそっと置かれた。

真昼は救護室のベッドでいまだに寝息をスヤスヤと立てていた。救護班の男性は真昼に目立った外傷はないかパッと見で確認し、外傷がないことを確認すると中腰の体制ままベッドから顔だけを挙げた。


「大丈夫ですね、目立った外傷もないですし、顔色もいいですから」


「よかった、ありがとうございます」


一歩下がった所から、見ていた秋元と藤堂は、近くにあった椅子へ腰かけた。

秋元が、椅子に腰かけて足を組んだ。秋元は、ベッドの傍にいる救護班の彼に話し掛けた。


「ところで、誰から救護室へ知らせがあったのですか」


「あぁ、帝さんですよ」


救護班は、笑顔で返答した。


「やはり、帝かぁ。ふむ」


秋元は、徐に天井を見上げながら顎をさすり出した。見上げた天井は白い壁紙が貼られていて、照明の白さをより引き立てていた。


秋元は、天井を見上げたと思うと、背中を丸めて目線を部屋の左右にやったりしてなにやら考え事を始めた。


片手には、先ほど借りた懐中電灯がまだ握られていた。


藤堂は、秋元の様子を窺いつつ真剣な顔付きで胸ポケットから折り畳み式の型の古い携帯電話を取り出しメールを打ち始めた。


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