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「秋元編集長のスクープ事件簿」  作者: 秋山 そら
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船内にて

船内にて


 カシャッ、カシャッ、カメラのシャッター音が波の音と共に響いた。


船内の乗客は、撮影されることに慣れている連中なのか真昼のカメラは気にも留めない様子である。


真昼は、船の客室がある廊下を探索していた。

船の様々な場所を捜査の参考用にと撮影している。

撮影しながらも真昼は独り言を吐いた。


「それにしても、なんで帝さんはシロさんを攫う必要があったのだろう。というか、一日も船の中に置き去りにされてシロさん大丈夫かなぁ」


 船の上には巨大なプールが何よりも目立っていた。中には、水着ではしゃぐ若者たちやビーチで日焼けを楽しむパンダなどがいた。


ビーチを撮影しそこを抜けると今度は、船内では、オーケストラのコンサートが行われていた。オーケストラは、団員のほとんどはトラで構成されている。

トラのオーケストラは優雅な演奏を船内に響かせていた。ステージの周りには多くの観客が集まっていた。中には、赤いドレスを着た象の婦人やリーゼントの若者など様々な人がいた。真昼は、コンサートの演奏とそれに感動している観客の様子を撮影した。


「うん、皆楽しそうな顔しているなぁ。たくさんいい写真が撮れそうだ」


真昼は、観客の表情とオーケストラの演奏する姿を写真に収めている。人込みの中に、一際綺麗な人物がいた。黒いドレスを華麗に着こなし色は白くどこかのモデルのようなスタイルの人物であった。


「あれっ、どこかで見たような気もするけど誰だろう」


真昼は、一様数枚写真を撮影した。相手の女は、写真を撮り終えた真昼に気が付き慌ててその場から立ち去った。逃げたようだ。


「あっ、待って」


真昼は、手を伸ばしたが相手はすぐに会場からいなくなった。

気を取り直して、一階の客室に足を運んだ。一階から四階までは、部屋になっており客室は自分の荷物を置くためや、部屋で休むために帝がそれぞれに客室を割り与えたと聞いている。たった一日の誕生パーティのためにしては配慮が行き届いている。使えるドアを見渡している。ドア越しには貴婦人たちが楽しそうに生け花やテニスなどの趣味の話に花を咲かせている声が聞こえてきた。

真昼が客室の廊下を半分ほど歩いた時にある部屋にボーイが料理を運んでいるのを目撃した。真昼はボーイが客室に料理を出し終えるのを持ってから声を掛けた。


「すいません。少しだけ尋ねたいことがあるのですが、すこしいいですか」


彼は、申し訳なさそうにしながら聞いた。ボーイは、料理を運んできたカートを押す手を止めた。


「はい、何でしょうか」


どのように質問しようか少し迷ったが、5秒ほど考えてから答えた。


「ここら辺で、使われていない客室はありますか。もしくは、客室ではないけれども人が入れるくらい大きな物置場所とか」


「さぁ、この階にはお客様以外のお部屋はありませんし、物置部屋は確かパーティ会場の裏側にしかなかったと思いますけど」


「そうですか、ありがとうございます」


「何か大きなお荷物でも置くのですか、でしたらお手伝いしますが」


ボーイは首を傾げながら真昼が持っていたカメラに目をやった。


「もしかして、機材かなにかですか」


真昼は、ボーイの気の利いた答えに少し焦りながらも言葉を返した。


「ああっ、いえ。大丈夫ですそんなに大きな荷物ではないので、ありがとうございます」


その場から急いで逃げ出し一つ上の客室の方へ向かった。

階段を少し上がると同じような造りをした客室が並んでいた。一通り廊下を歩き出てくる客の動きとおかしな客室はないか調べたが、特に怪しい部屋は見当たらなかった。

延々と続いているような廊下を歩き行き止まりへと指しかかろうとしていた。

廊下は奥に行くほどに薄暗くなっていくような錯覚がある。


「ここの階は、さっきみたいに乗客が騒いだり、廊下で話し込んでいたりしないのかなぁ。全然いないような気がするのだけど」


階段を上がるまでは、下の乗客たちの話し声が聞こえていたはずだが今はその声すら聞こえていたのか怪しいほどのこの階の廊下は静かであった。


 真昼は心配になり歩いてきた廊下を振り返った。しかし、廊下には人もいない。さらに、来たはずの廊下も照明が薄暗いのか見えていない。


「なんか、いきなりホラーな雰囲気が醸し出されているの」


誰もいない廊下に一人言を吐いている。


「もしくは、編集長が何か仕掛けたか。とにかく僕は早くビンゴ大会に出ないと」


真昼は、首から下げたカメラに手を伸ばしながらも前に歩き出した。

しばらくは、暗い廊下を進むと一つだけ、ドアの開いている客室があった。


「あからさまに、なんかいそうだな。引き返すか」


彼は来た道を戻ることにした。しかし、人間は気になるものがあると覗いてしまうものである。


「いや、でも何があるだろう。すこしだけならいいかな」


真昼は来た道を少し戻りドア越しに部屋の中を覗いた。恐る恐る覗いた目に客室の明かりが移りこんでいる。


「んっ、あれおかしいな」


部屋の中は、明かりは点いているが人の気配がなかった。

それどころか、椅子やテーブルなどには使った形跡がない。彼は、部屋の中を詳しく見渡そうとドアをさらに押し開け、部屋の前に立った。部屋を見渡すと客室は至って普通の客室なのだが真昼は何かに対して違和感を覚えた。


「人気がないのにドアが開いている。それになんでこの部屋だけ明かりが灯してあるのだろう。まぁ、誰か鍵でも閉め忘れたのかなぁ。」


そのとき、突然スマートフォンのアラームが鳴り出した。彼は、少し驚きスマートフォン彼の足もとに落とした。


「あぁ、そうだ時間をアラームで設定したのを忘れていた。なんだよ、驚いた。それよりのビンゴ大会に急がないと」


真昼は、その部屋の扉を閉めて暗い廊下を駆けて、客室を後にした。

その客室の中では、人影がうごめいていた。実はドアの影には人がいたのだ。


「危なかった、彼が携帯を落としたときはバレるかと思ったわ。」


ドア越しにいたのは、なんと慶子であった。

そして、慶子の腕の中には薬で眠らされぐったりとしているシロであった。



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