タヌキ、パーティの開始
パーティの開始
船内は、百人程の人が入ることが出来るような作りになっており左右の窓側にはテーブルと壁沿いにはソファが設置された作りになっている。
食事は、バイキング形式であり調理専門のシェフがいる。彼らは、一枚一枚丁寧に肉や魚などを調理している。
天井には豪華なシャンデリアが複数飾られている。
入って一番奥には、大きなステージが用意されておりそこには、帝がステージに立っていた。
帝は、多くの人に囲まれながらステージの上から下にいる人間を見ている。彼は、自分が頂点であるというような自身が漂っている。
「やぁ、みなさん本日は貴重なお時間をこの私なんかのためにわざわざお越し下さりありがとうございます。ぜひ、この素晴らしい海を眺めながらこのパーティを思う存分楽しんで行ってください」
観客は、帝の話を聞き終わると自然と拍手を送っている。
「ふふ、では皆さん楽しんで」
帝は、観客に手を振るとステージから降りて近くにいる客たちと雑談を楽しんでいる。
船内に入った秋元と真昼は、船内を隈なく見まわした。
真昼は、船内の客や、風景をカメラで撮影し始めた。
「あっ、正面に帝氏がいるね」
秋元が、帝を見つめると指で彼がいる方を人差し指で指した。
「そうですね、なんかこの前以上にオーラーが漂っていますね」
真昼は、周りに聞こえること恐れてか声を小さくしている。
「そうだね、それよりもまずはあそこにある大きな肉の塊から生まれるであろう。極上のローストビーフを頂かないとねぇ」
秋元は、中央に置かれた大きな肉の塊めがけて走りだした。ズボンの裾が長いのか左手を使い、太腿あたりの布を引っ張りながら走っていった。
「ヒト型に化けても食い意地はそのまんまなんだな。編集長は」
真昼は、人込みをかき分けながらも秋元の後に着いていった。
真昼が秋元に追いつくころには、秋元が薄く切り分けられたローストビーフを何枚もまとめると皿から生きよい良く自分の口へと頬張った。
「うん、これはなかなかおいしいねぇ。国産牛だね、これ」
肉を切り分けているシェフに話しかけている。
「おお、よくわかりましたね。これは、米沢の肉ですよ」
シェフは、ニコニコとした笑顔で秋元の話に返している。
「だろう。僕は、肉の味にもうるさい方なのだけどねぇ。これは絶品だよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
真昼は、近くにいたボーイに声を掛けるとシャンパンを一つ持った。
「編集長って、何でも食べますよねぇ。タヌキは雑食って本当なのですねぇ」
「雑食とは失礼だねぇ。好き嫌いはないに越したことはないのだよ」
真昼は、シャンパンを飲みながら相槌を返した。
「まぁ、それはそうですけどねぇ」
「真昼君」
「はいっ、なんですか。肉が喉に詰まりそうですよ」
「君に、少し頼みたいことがあるのだ」
秋元は、肉を飲み込むと声を小さくして言った。
「僕は、これから帝氏にこれから直接、話をしてくるから、そのうちに船内からシロ君を探してきてほしい。頼めるかい」
真昼は、目を見開いて、持っていたシャンパンを大きく揺らすほどの勢いで驚いている。
「編集長、まさか直接聞きに行くわけじゃないですよね。そんなことしたら、もの
すごく警戒されるし編集長もどこかに監禁でもされるかもしれないですよ」
「そんなに、直線的には聞かないよ。ただのインタビュウーということにして本人に聞くだけだからねぇ。それに、こんなに客がいるから簡単には僕に手出しは出来ないと思うよ」
「でも、編集長一人は危険じゃないですか」
「そこは、問題ないよ。とっておきの用心棒を付けるからね」
秋元は、スマートフォンをズボンのポケットから出すと誰かに電話を掛けた。その電話はすぐに切られた。秋元は微笑むとパーティ会場の入り口の方に視線を移した。
「あー、やっと来た。やぁ、藤堂君久しぶり」
ニコニコしながら、藤堂にわざとらしく手を振る秋元である。
真昼は、そこに灰色のスーツを着た藤堂を目撃した。
「あれ、藤堂刑…、ンっ」
刑事という発言をしようとした真昼の口は、秋元のハンカチで抑えつけられた。
「んっ、編集長・・・・」
秋元は、真昼の顔を珍しく睨みつけた。
「真昼君、彼は僕の高校の時からの親友で仕事仲間の藤堂君だよ。何を言っているのだい」
真昼は、藤堂が刑事であることは黙るように秋元に指示されたと理解するとさっきまでハンカチで抑えられていた口で大きく深呼吸をした。彼は、腕で口元を拭うと近くに来た。藤堂に視線を向けた。
藤堂は、作り笑顔で挨拶をしてきた。
「やぁ、あ。はじめまして、今回は秋元君の親友の藤堂と申します。よろしくお願いします」
彼は、片言にも程があるレベルではあるが、何とか役になりきって挨拶をしてきた。
「あぁ、はじめまして、よろしく」
真昼もぎこちない挨拶を交わした。
「編集長、確かに彼が居れば安心ですね。あっ、そうだ。藤堂さん今度一緒に飲みに行きませんか」
「ええっ、いいですよ」
真昼は、藤堂のそばによると小声で秋元に聞こえないように言った。
「藤堂さん、どんな弱みを握られたか、知りませんけど。ダメですよ。アンナ人の、タヌキの言いなりになっては、そのうちどんどん付け上がりますからね。ほんとに」
真昼の忠告に、どうリアクションを取っていいかわからない藤堂は平常に答えを返した。
「何を言っているのですか。真昼さん。ただ私は捜査の一環として潜入捜査をしているのです。秋元氏には、こちらの情報を渡す代わりに手伝って頂いているのですから脅されたわけではありませんよ」
藤堂はコホンッと、咳払いをするとさらに付け加えた。
「それに、潜入捜査なんて刑事コロンボみたいじゃないですか。燃えてきますよ」
藤堂は、キラキラした瞳で拳を握りながら答えた。
あぁ、そういえばこの人コロンボマニアだったと真昼は納得した。
「でも、でもほんとにあの人には気を付けくださいねぇ。ほんとに利用できるものは、近所のアマチュァカメラマンも利用するような人ですからね」
真昼は、真剣に藤堂に忠告すると秋元のもとに戻った。
「でっ、僕は船内を見てくればいいんですね。どこかいそうな場所とか検討は着いていないのですか」
「んー、さすがの僕でもそこまではわからないからねぇ。よろしく、真昼くん」
「わかりましたよ。でも、ビンゴが始まりそうになったら戻りますから」
真昼は、一人パーティ会場から抜け出した。スマートフォンにビンゴ大会開始の時間にアラームをセットした。




