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001

 俺が目覚めた場所は、見知らぬ小屋だった。

 気付いたのは数分前。

 意識が戻った俺は、二度寝するべく布団を引っ張ろうとした。

 掴んだ布団から使い慣れた布団とは違うにおいがした。

 そのにおいに寝ぼけていた意識がはっと覚醒する。

 視線を落として見ると服も違う。素材の分からない不思議な服を着せられていた。

 少しごわごわしているが、作りは洋服とそこまで変わらないようだ(ちなみに長袖である)。

 上半身を起こし、周囲を見渡す。

 この場所は木材で組まれたログハウスのようだ。

 八畳くらいの部屋には、俺が寝ているベッド、木製の机と椅子くらいしか置かれていない。

 布団を押しのけて、床の上に立った。

 あ、パンツはいてない。

 シャツもなかった。何だろう、サイズが合わなかったとかかな。

 ぺたぺたと裸足で歩いてみる。

 ごわごわした服は肌に合わず、擦れあう感じだった。

 ひとしきり歩いた後、ベッドに腰掛けてみた。

 ベッドの対面には扉があったが下手に外に出ていいものかと考えた結果、先送りすることにした。



 ベッドの上でごろごろ。

 妙に身体が疲れていたので、考えるのは後にして休むことにした。

 少なくとも今すぐ危険というわけではなさそうだし。

 硬い枕と布団だけど、疲れた身体には十分すぎる。

 そうやってしばらくごろごろしていると、部屋の扉が開いた。

 やってきたのはおじいさんだった。白髪で、ひげもたっぷり蓄えていた。

 大魔法使いみたいな感じ。どこかの魔法学校の校長とかやっていそうなイメージだ。

 寝転がったまま対応するのも問題だと思ったので、俺は起き上がり、ベッドの上に座った。

「――――?」

 何か話しているのは分かるけど、内容はまったく分からなかった。

「ええっと……すみません、言葉が分かんないんですけど」

 俺が困ったように言うと、おじいさんは顎に手を当ててなにやら考えているご様子。

 はっと何かに気付いたおじいさんは、俺の額に人差し指を伸ばすと、何やらぶつぶつとしゃべりはじめた。

 魔法でも唱えているのかと思ったら、本当に魔法を唱えていたらしい。

 知らない言語の知識が頭の中にどんどん流れ込んでくる。

 俺はされるがままだった。

 次第に流れ込んでくる知識量が少なくなる。

 最後の知識の一滴がぽたんと落ちた。

 不思議なことに、自分の知識の中に知らない言語と文字が存在していた。

「ふむ。これでわかるかな」

「え、はい」

 俺は自分が出した声に驚く。明らかに日本語じゃなかった。

 かといって何語といわれても……あれ? カルド語というらしい。頭の中の知識が答えてくれた。

 一般常識レベルの知識もついでについてきたらしい。魔法すげぇ。

「さて、突然ですまないが君はどこから来たのかな。カルド語が通じないとなると、余程田舎からだと思うのだが」

 知識を参照して、カルド語を調べる。

 どうやら世界共通の言語のようで、余程の田舎でない限りは使われていないという。

 俺は少し迷ったが、正直に話してみることにした。

 知識を参照した結果、どうやらこの世界は俺が暮らしていた世界とは違う世界らしいと理解できた。

 なにせ俺が今まで高校生として集めてきた知識と先ほど得た知識がまったく繋がらない。

 そのことを話すかどうか迷う。頭の中にはこの世界の基本知識が詰め込まれているので、ごまかすことも出来るだろう。

 だけど俺としてはこのおじいさんに嘘をつくより、協力してもらったほうがいいと思った。

 俺はおじいさんの目を見て、正直に話すことにした。

「……その。実は俺、異世界から来たんです」

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