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第26話 激突

 瞬く間に、砦は戦場と化した。


 小鬼ゴブリンたちは猛然と走り寄り、村の門に体当たりをしている。

 それを中から、槍や弓で撃っているけど、あいつらは全く意に介せず、扉に体当たりをし続ける。痛覚がどうかしてる。

 い、いまこそ、管理部の能力で……って無理!!


 心配だったアーシュリーの持ち場では、ラウロたちが奮戦中。


「心臓だ! 心臓を突け!」

 眼下のラウロが柵を超えようとした小鬼から剣を引き抜いて返り血を浴びながら叫んだ。わああ! 物騒! ああ、でも戦場だし!


 一方のブージェらは、無理のない戦い方を選択している。

 ブージェが振り下ろす剣を合図に、無数の矢が橋の上のゴブリンに突き刺さる。

 足元の釘のせいか、橋の上のゴブリンたちは、他よりも動きが鈍い。立ち止まったゴブリンは、ブージェの号令で、みるみるうちに矢を体中に生やして、そのまま堀の中に落ちて沈んでいく。


「いいぞ! もう少しだ!」


 もう少しも何も、まだ橋の後ろに小鬼が控えている。村人を安心させたいのだろう。このまま……いや、ダメだ!


「ブージェ、気を付けて! 橋向こうに弓小鬼アーチャゴブリン! 狙ってる!」


 その矢はブージェの隣にいた護衛武官の肩に当たった。


「シェリル。聞こえる? ノイエをブージェのところに。武官が矢を食らったわ」

「近づけるの?」

「え?」


 そうか。衛生兵ってどのタイミングで兵を治療するのか決めてなかった。

 こういう時は、どうすれば?


「負傷した人は下がれるの?」

「ブージェ。矢を受けた武官を教会まで下げられる?」


 ブージェが武官に声をかけているが、立てないようだ。どうする……。

 すると、ブージェがその兵を肩に担いで教会に走り出した。


「ダメ! いまは狙われているから! 門から離れないで!」


 遅かった。もう、ブージェは走り出している。

 しまった。ミスだ。私の指示ミスだ。弓小鬼が弓を構えている。

 走るブージェのその背中に矢が飛ぶ。


 眼下にノイエが教会から飛び出し、ブージェに合流するのが見えた。

 ノイエの服も目立つ。格好の矢の的だわ。


「二人とも! 無茶しないで!」


 飛んでくる矢をブージェが剣で払い、ノイエと怪我人を守っているらしい。

 その時、白く輝く矢が、教会の屋根を越し、北門の外にいる弓小鬼の額に突き刺さった。


 飛んできた方向を見ると、ヒメカだった。

 もう一度矢をつがえ、何やら口ずさんで、その矢を放つ。

 矢は再び白く輝き、もう一匹の弓小鬼の眉間に突き刺さった。とんでもない遠距離狙撃だ。

 ヒメカの南西門には、既にいくつかの小鬼ゴブリンが矢を眉間に立てている。


「構えろ! 手前の小鬼から撃て!」


 弓小鬼がいなくなったのを見計らって、北門を守る兵が自主的に弓を撃ち始めた。

 一斉射撃に怯んだ小鬼は逃げだそうと背を向け、みるみる背中に矢を生やして死んでいく。


 一方、ラウロの守る西門ではまだ激闘が繰り広げられている。


「ラウロを手伝って、ヒメカ!」


 西門だけ頑丈な柵だが、柵の隙間が少なく、弓矢による攻撃がしにくそうだ。

 門扉が不気味に揺れている。小鬼の体当たりでも食らっているのだろう。


「ヒメカ!? ラウロ隊の援護、出来ない?」


 振り向くとヒメカが自分の守る門の外と、ラウロの門を交互に見ている。あの遠距離射撃は回数制限があるのか、撃てない様子だ。


「南西門に、まだ敵がいるの?」


 遠くでヒメカが頷く。くそ。見えてなかった。


「ブージェ! 弓兵を西門に回し……」


 舌打ちをした。いま、ブージェは前線から離れている。北門にはブージェの姿がない。


 その時、全く予期せぬ場所から、柵が倒される音がした。

 背後からだ。

 門のない東側の柵が引き倒され、そこに小鬼の一団がいた。


「東方向にも小鬼! 数は……十! 柵が……破られたわ!」

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