第24話 サイファ村砦
村に着いて、まず状況の確認。
サイファ村砦の西側には、広い丘陵地帯があり、そこが村の畑と牧草地だ。村長に言って、ここの収穫を急がせた。
少々収穫には早い野菜もあったが、この際、仕方がない。
村人も護衛武官も夫人も総出で、収穫を行なった。
あらかた収穫が終わると、そこは見晴らしの良い丘陵となった。
サイファ村砦自体は、Cの字をした水堀に囲まれており、この堀に沿って頑丈な柵が施されている。豊富な湧水が堀を満たしている。
村の出入口は三つだけ。
一つは『西門』。西側の丘陵地に面した門だ。
一番立派な門で、門扉は分厚く、木橋も大きい。
周辺の柵も巨木だ。
ここはアーシュリーとラウロが守備することになった。
護衛武官のほとんどが、ここを守る。
もう一つは『北門』。
ここは西門ほど立派ではないが、多くの弓兵を配置できる構造らしい。
柵は細めの板木で組まれており、隙間から弓を射ることができる。木橋も狭い。
ここは元騎士のブージェが一部の護衛武官と村人を率いて担当することになった。
ブージェは、橋に釘を打たせ、橋の上で魔物を足止めさせると息巻いている。
最後は『南西門』。
ここは、南の林から陸続きになっていて守りにくいらしい。
周辺に林があり、可能な限り木を倒したが、全部は無理だ。
話し合いの結果、ヒメカが担当することとなった。
それぞれの門に、時間の許す限り、監視塔や、弓兵台などの仕掛けを作ることになった。ここまで来ると現場指揮官の裁量だ。
私、シェリル、ノイエは、村の旧教会を指揮所にし、状況を見守った。いざとなったら、教会に村人を入れて立て籠もるつもりだ。
教会にはまだ鐘塔が残っている。
そこに目の良い村人を置き、監視塔とした。
日々、村人と一緒に作業をすることで、徐々に村人と仲良くなった。食事に関してもそうだ。最初は村人と我々は、別で作っていたが、いつしか、全食を我々が作るようになった。
「手間は一緒なので、このほうが楽ですよ」
というが、そんなことはないだろう。
食事を作っている文官はアルデジラ大臣だった。
村人も自主的に食材を提供してくれて、我々の兵糧事情はよくなった。
大臣自らこの魔物討伐に同行したのは、どんな酔狂かとも思ったが、彼なりに真剣にこのサイファ村での討伐を考えた結果らしい。
ちなみに大臣の出す料理は評判で、そのレシピを教えてほしいとせがまれている。人気者だな。
手の空いた村人は矢の制作、また戦えるものは弓の訓練をさせた。
ヒメカとブージェが指導をしている。
武官長のラウロはアーシュリーのそばを離れない。
そのアーシェリーは、毎日、砦を外から眺めて、細かい指示を出している。
そんな日々を数日過ごした後、教会の鐘が鳴った。
◇
「どこに出た?」
「西の花畑丘陵の端です。二匹。奴ら、畑を見て、もう収穫されていることに驚いていました」
「種類は?」
「小鬼族です。弓使いに見えました」
指揮所で報告を聞いたアーシュリーは頷き、夫人らを振り返った。
「いよいよだ」
「二匹?」
「斥候だ。た多分、明日、押し寄せせるぞ」
アーシュリーの剣がカタカタと鳴った。
「……どうしたの?」
「ん? 何がだだ?」
「……いや、さっきから」
アーシュリーが腰の剣を押さえた。
「ははは。ななんでだろ?」
そっとその肩をヒメカが触った。
「だだいじょう、大丈夫だってて」
……いや、これ、全然、大丈夫じゃないやつだ。
え、なに? 震えてんの? え?
そのまま、真っ青になってアーシュリーは倒れた。




