表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
15/39

第15話 アペリティフ

 食堂に七人の夫人が着席した。

 こうして、一堂に会するのは初めてのことらしい。


「なんじゃ。こう皆が揃うと、何か新鮮な気持ちになるのぉ」

 余裕をかます第一夫人リディア。相変わらずの露出だ。


「で、どのようなご要件?」

 冷たい視線を投げかける第二夫人エレナ。


「早く終わらせてくださらない?」

 つまらなさそうにしている第三夫人、幼女のシェリル。


「まあまあ皆さま。重要な話ですので、どうかお聞きください」

 場を和ませてくれる巨乳眼鏡神官ノイエ。第四夫人だ。


「……」

 腕組みをしたまま、口を尖らせる第五夫人アーシュリー。あれから、ずっと怒っている。


「ははは」

 黒服黒髪の第六夫人ヒメカ。多分、何を話してもニコニコするだけだろう。


「では、現状を報告いたします。その前に、僭越ながら……庶民出身第七夫人アニカが乾杯の音頭をとらせていただきます」


 一度、やってみたかったんだよね。乾杯の音頭。宴会部長の気持ちを味わってみたかった。


「乾杯!」

「「「乾杯」」」


 んん。芳醇な香りの……え、なにこのワイン……すごっ。

 今日は特別な日だから、特別なワインをと、侍従官には伝えてあったけど、これは、日本でもここでも今まで味わったことのない超高級なワインね。


 ちなみに、この国では18歳からの飲酒が認められているから。日本じゃ絶対にダメ。私は外が18。中身は35。セーフ。


「ところで、なぜに、ぬしが音頭をとっておるのじゃ?」


 飲み干したワイングラスで人を指す。

 ほんと、この人、態度悪いわね。


 そのワイングラスに、ささっと、後ろから侍従官がワインをさりげなく注ぐ。

 アルデジラ大臣だ。ソムリエとしても一流。このワインも彼のチョイスね。侍従官と行政官を兼任する、私がこの世界で見た最も優秀な男だ。頭が禿げ上がっているのが残念だが、きっと若い時はいい男だったに違いない。


 領内の人員整理は限界まで削減している。

 夫人が多いくらいだ。


「えー、皆さまには、この領地の状況をお伝えしようかと思い、お集りいただきました」


 ◇


「これが我らが第三皇子ゼファーさまの治める、ラヴァンダ領の現状です」


 ふぅ。


 説明が終わった後、目が点になっているものが三名。リディアさま、エレナさま、シェリルさま。目を瞑っているのが二名。ノイエさまとアーシュリーさま。内、アーシュリーさまは、お眠りになっている。そして、ニコニコとしながら明らかに理解できていないのが一名。ヒメカだ。


 さて、何人が理解したものやら……。


 この数日、行政官たちが集めた過去数年分の税収の推移と、領地経営経費。これはPL、つまり損益計算書にあたるもの。赤字になりつつある。


 次に、所有する領地、家屋、設備など所有する財産を列挙し、仮金額をつけたもの。この金額査定はかなりいい加減だけど、BS、つまり貸借対照表代わり。税収がどんな資産に変わったのかを示している。


 この国では土地の私有権を認めているから、領地そのものは資産に計上できないけど、屋敷のある土地や、この建物なんかは資産にできる。

 だけど、売ることは難しい。ただ価値を出したというだけね。


 最後に、キャッシュフロー。これもいい加減だけど、この国も基本、掛け取引なのよね。中世欧州が掛け取引で行われていたように、ほとんどの売買が掛け取引。でも即金で支払わなきゃいけない状況はある。特に行政官と屋敷のスタッフへの給金は、ギリギリ。


「なるほど。つまり、この領地の維持は、このままでいくと1年か2年で、まず現金が底をつくと?」


 意外なことに、この状況を理解し、結論にたどり着いたのはエレナさまだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ