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理を極めた俺、異世界で女王を最強に育てたら国ごと無双してしまった  作者: 慈架太子


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第10章 至福の連鎖 (若き天才と十万店舗のインフラ)

民も豊かになった。 ミレーヌの4種のかつ丼を自由に食べられるように かつ丼店を 王国第2王国合わせて 5万店舗オープンしてくれ カトリーナ 頼んだよ



五百二十万人の胃袋を預かる経営顧問、カトリーナの瞳に、かつてない商機と使命の炎が宿った。ウォルゼインの知恵とアリシアの慈愛によって豊かになった民は、今や単なる「生存」を超え、日常の中に「美食の至福」を求めている。


「お任せください、賢者様。我が王国の繁栄を、胃袋から証明して差し上げますわ」


カトリーナが扇を広げ、号令を下した。それは、ローゼライト王国と第2王国を跨ぐ、空前絶後の巨大チェーン展開プロジェクト――**「国立かつ丼殿堂・五万店同時開業」**の幕開けであった。


五万店舗。それは、王都の目抜き通りから、第2王国の開拓村の辻、さらには鉱山の入り口に至るまで、文字通り民の生活圏すべてを網羅する数である。この膨大な店舗を支えるのは、ハナが実現した「無限の米と豚」の供給網と、ミレーヌが門下生たちに叩き込んだ「三位一体の魔法」だった。


各店舗の厨房には、ミレーヌの調理理論を完璧に再現した「魔導温度管理釜」が設置された。これにより、どの村の店であっても、サクサクの衣を纏ったオークカツと、黄金の出汁が織りなす究極の一杯が提供される。


メニューは、カトリーナがプロデュースした「クアトロ・カツ・サーガ」を主軸としている。

朝の活力を求める労働者には、どっしりと重厚な『王道・玉子とじ』。

爽やかな昼下がりを過ごす婦人や老民には、清涼感溢れる『清廉・ポン酢』。

好奇心旺盛な子供たちや、刺激を求める冒険者には、赤い輝きを放つ『情熱・トマトソース』。

そして、ガツンとした食べ応えを求める若者には、スパイスの効いた『峻烈・ソース』。


「識字率が九割を超えた今の民なら、メニュー表のこだわりも、各薬味の効能も完璧に理解できますわ。知識と味覚を同時に満たす……これこそが、ローゼライト流の贅沢ですわ」


カトリーナの狙い通り、五万の店舗は瞬く間に民の「第二の食卓」となった。かつては奴隷として泥水を啜っていた者たちが、今や白米の輝きに目を細め、好みの味を注文している。第2王国では、食後にブランデーを一杯嗜むのが、至高の嗜みとして定着し始めていた。


「すごいわ、カトリーナ。本当に五万ものお店を……。これで、この国のどこにいても、誰もが王家の味を自由に楽しめるのね」


アリシアは、街角に新設された店舗から漂う芳醇な出汁の香りに、満足げに目を細めた。

五万店舗の灯りは、夜になっても消えることはない。それは、五百二十万人の民が「飢え」という恐怖を完全に過去のものとし、自由と幸福を謳歌していることを示す、地上に降りた星々のような輝きであった。




王宮の喧騒を離れ、ウォルゼインとアリシア、五人の神賢者、そして十人の使徒たちを合わせた十七人に、案内役のペーターを加えた十八人の一行は、第2ローゼライト王国の広大な丘陵地帯に広がる「国立ペーター魔物牧場」を訪れていた。そこは、かつて人類を恐怖に陥れた魔物たちが、ペーターの慈愛と魔導技術によって「共生」という新たな役割を与えられた、生命の理想郷であった。


「皆さん、ようこそ! 今日はうちの子たちの活躍を、じっくり見てやってください!」


麦わら帽子を揺らしながら、ペーターが十八人を迎える。広大な牧草地には、かつて森の暴君と呼ばれたギガントオークたちが、ハナの品種改良した巨大カボチャを丁寧に収穫し、特製の荷車へ積み込む姿があった。彼らの瞳に凶暴さはなく、ペーターとの対話を通じて得た労働の喜びと、報酬として与えられるミレーヌ特製の栄養食への期待に満ちている。


「信じられないわ……。あのオークたちが、あんなに繊細に農作物を扱っているなんて」

アリシアが驚嘆の声を漏らす。その隣でウォルゼインは、オークたちの背に取り付けられた魔導デバイスを観察していた。

「なるほど、ペーター。あのデバイスで感情の波を安定させつつ、君の声(思念)を増幅して伝えているんだね。野生の闘争本能を、集団行動の規律へと見事に変換している」


視察団がさらに奥へ進むと、そこには透き通るような白銀の毛並みを持つ魔狼フェンリル・パピーの群れが、ペーターの指示一つで家畜の群れを誘導していた。その動きは、ベネディクトら十人の使徒たちが驚くほどに統率されており、もはや高度な戦術機動の域に達している。


「騎士団長殿、彼らは今や、牧場の守護神です。不審者が近づけば一瞬で制圧しますが、仲間にはこの通り……」

ペーターが指を鳴らすと、一頭の魔狼がカトリーナの足元に寄り添い、甘えるように鼻を鳴らした。冷徹な経営者である彼女も、その愛らしさと毛並みの美しさに、思わず扇を止めて相好を崩した。

「……素晴らしいわ。この毛並み、リネットとソフィに伝えれば、新しい最高級繊維のリソースになりますわね」


ミレーヌは、牧場併設の加工場で、ペーターが特別に育てた「魔乳牛」から絞りたてのミルクを試飲し、その濃厚さに衝撃を受けていた。

「この乳……。三位一体の出汁に加えるだけで、ホワイトソースの概念が変わりますわ! お菓子作りの天才があの子に夢中になるのも頷けます」


十八人の英雄たちは、牧場を一周する間に、ここが単なる食料供給源ではなく、王国の「共生」という理想を体現する精神的支柱であることを悟った。魔物すらも慈しみ、役割を与える。その圧倒的な寛容さが、五百二十万人の民を支える強さの根源なのだ。


夕暮れ時、丘の上で十八人はペーターが用意した新鮮な乳製品と、魔物たちが収穫したばかりの野菜を囲んだ。

「ペーター、あんたは本当に凄いことを成し遂げたわ」

アリシアの言葉に、ペーターは照れながら空を見上げた。十八人の影が、黄金色に染まる牧場に長く伸びる。それは、人間と魔物、そして神賢者たちが織りなす、新時代の平和を象徴する美しい光景であった。



ペーターの魔物牧場を視察したあの日、ミレーヌと「お菓子作りの天才」がその濃厚なミルクを口にした瞬間に、この新時代の幕開けは約束されていた。第2ローゼライト王国の豊かな大地と、ペーターが慈しみ育てた「魔乳牛」がもたらす究極の滴。それを、カトリーナの辣腕が世界最高の娯楽へと昇華させた。


「賢者様、アリシア様。五万店舗のかつ丼に続く、我が王国の次なる戦略物資……『魔導至福冷菓・ローゼライト・アイスクリーム』の完成ですわ!」


カトリーナが広げた扇の先には、魔導冷却器の中で宝石のように輝く、純白のアイスクリームがあった。

材料はシンプルだが、その一つ一つが王国の叡智の結晶だ。ペーター牧場の絞りたてミルク、ハナが品種改良した甜菜から抽出した上品な甘み、そしてミレーヌが隠し味に加えた、三位一体の出汁を極限まで薄めた「旨味のブースト」。これらを、ウォルゼインが考案した「魔導攪拌かくはん機」で、空気の含有量を一パーセント単位で調整しながら練り上げた。


カトリーナのプロデュースにより、本国三百万五千人と第2王国二百二十万人の五百二十万人の民へ、一斉に販売が開始された。


「かつ丼の後の、最高の一口」


このキャッチコピーと共に、全国五万店舗のかつ丼店には、アイスクリーム専用の魔導冷凍ショーケースが併設された。熱々のかつ丼を頬張った後、キンキンに冷えた、しかし口の中で濃厚に溶け出すアイスクリームを流し込む。この「熱と冷の往復書簡」は、国民たちを瞬く間に虜にした。


「……何これ、魂が洗われるような冷たさだわ!」

アリシアがスプーンを口に運び、その滑らかな舌触りに目を輝かせる。

「バニラの香りだけじゃない。ミルクそのものの生命力が、冷気と共に弾けるみたい。カトリーナ、これ……止まらなくなるわよ」


カトリーナは満足げに頷き、次々とバリエーションを展開していった。

『王道・ミルク』に加え、第2王国のブランデーを贅沢に練り込んだ『大人の琥珀』、ハナのトマトとポン酢のジュレを添えた『清廉・ソルベ』。これらは識字率九割を超える民に向け、詳細な「成分解説」と「幸福度グラフ」を添えて販売され、知的な好奇心と食欲を同時に満たしていった。


特に第2王国では、蒸留酒の天才が作る焼酎をアイスにかける「アフォガート・スタイル」が爆発的に流行。甘みと苦み、そして冷たさが織りなすその味は、五百二十万人の民に「生きている喜び」を再確認させた。


「ウォルゼイン、見て。みんな、かつ丼を食べて、アイスを食べて、本当に幸せそうな顔をしているわ」


アリシアの視線の先では、かつて鉱山で泥にまみれていた者たちが、家族と共に冷たいデザートを囲み、笑い声を上げていた。

五万店舗の灯りに加え、今や王国の至る所にアイスクリームの旗がはためいている。

カトリーナが仕掛けたこの冷たい革命は、ローゼライト連合王国の繁栄が、もはや「生存」のためではなく、一時の「至福」のために全力を尽くせる域に達したことを、大陸全土に知らしめたのである。




王宮の円卓に、新たな「理」を刻む三人の若き才能が並び立った。賢者ウォルゼインの提言とアリシアの裁定により、彼らは従来の六人に加わり、王国の至宝たる**「九人の神職人」**として正式に列せられることとなった。


「紹介するよ、アリシア。彼らこそが、五百二十万人の生活をさらに彩り、守り抜く新世代の旗手たちだ」


賢者ウォルゼインの言葉を受け、まず一歩前に出たのは、甘い香りを纏った十六歳の少女、菓子作りの天才エルナだった。小柄で少しふっくらとした健康的な体型の彼女は、丸い頬を赤らめながらも、堂々と胸を張った。


「初めまして、アリシア陛下! 菓子職人のエルナです。私は、食べた瞬間に悩み事が全部吹き飛んじゃうような『甘い魔法』を形にしたいんです。これからは九人の神職人の一人として、皆さんの心に極上のデザートを届けますね!」


続いて、二十一歳の長身で引き締まった体躯を持つ青年が、琥珀色の小瓶を手に静かに頭を下げた。酒造りの天才、リュカである。その知的な佇まいと繊細な指先には、蒸留の理を見極める職人としての風格が漂っていた。


「第2王国で蒸留の理を追究しております、リュカです。私の仕事は、素材に眠る魂を凝縮し、時の流れを琥珀色に変えること。カトリーナ様の戦略を支え、民が語らう夜に最高の酔いと安らぎを提供することをお約束します」


最後に、風のように音もなく進み出たのは、十五歳の少年、剣の天才シオンだ。柳のようにしなやかで無駄のない、中性的な体つき。しかし、その瞳にはベネディクトをも驚嘆させた鋭い光が宿っていた。


「剣士、シオンです。……僕は、誰も傷つけないために剣を振ります。陛下が作られたこの平和な居場所を、影から守る風になりたい。九人の神職人の末席として、この国の安寧を一身に背負う覚悟です」


アリシアは、三人の真っ直ぐな瞳を受け止め、力強く頷いた。

「いいわ。エルナ、リュカ、シオン。あんたたちの才能は、もはや一職人の域を超えている。今日からあんたたちは、アリシア、カトリーナ、ハナ、リネット、ソフィ、ペーター、そしてミレーヌと並ぶ**『九人の神職人』**よ。この国を、もっと楽しく、もっと強くしなさい!」


こうして、ローゼライト連合王国を支える中枢は、賢者ウォルゼインと女王アリシア、十人の使徒、そして九人の神職人による強固な体制へと進化した。


ミレーヌは十六歳のエルナの才能に「私の座も安泰ではありませんわね」と不敵に微笑み、カトリーナは二十一歳のリュカが醸す酒の市場価値を弾き出し、ベネディクトは十五歳のシオンの剣筋に新たな武の可能性を見出していた。

五百二十万人の民が見守る中、最強の職人集団が、王国の黄金時代をさらに盤石なものへと変えていく。




王宮の円卓に新たな「理」が刻まれてから数ヶ月。ローゼライト連合王国を揺るがす、これまでにない瑞祥が舞い込んだ。それは、九人の神職人の末席を汚す十五歳の剣の天才シオンと、十人委員会の遊撃隊長として若手兵士の先頭に立つ二十二歳のリュカの婚約である。


「……本気なの、シオン? あんた、まだ十五歳じゃない」

アリシアが目を丸くして問いかけると、柳のようにしなやかな体躯を持つ少年、シオンは、あどけなさが残る顔を真っ赤にしながらも、その瞳に強い決意を宿して頷いた。

「はい。機動力と突撃力で常に最前線を駆けるリュカさんの、あの迷いのない背中を見た時……僕は、この人を影から守り、支えるための剣になりたいと願ってしまったんです」


対する遊撃隊長のリュカは、二十二歳の精悍な面構えに、戦場で見せる鋭さとは違う柔らかな笑みを浮かべて一歩前に出た。

「陛下、お許しください。私はアリシア様の切っ先として突撃するのが役割ですが、戦いの合間に見せるシオンの純粋な志に、私の方が射抜かれてしまいました。歳の差など、私の機動力で一気に駆け抜けてみせます!」


この「武」を司る者同士の結びつきに、王宮は沸き立った。カトリーナは即座に「十人委員会と九人の神職人の歴史的融合」という特大の宣伝効果を見出し、リネットとソフィは、シオンのしなやかさを際立たせる白銀の礼装と、隊長リュカの猛々しさを引き立てる深紅の正装のデザインに着手した。


酒造りの天才である二十一歳のリュカ(別人)も、この同名の戦友の門出を祝し、自ら醸造した最高級の焼酎「双星の盾」を樽ごと担いで駆けつけた。


結婚式当日、会場となったのはペーターの魔物牧場を見渡す黄金の丘だった。五百二十万人の民を代表する者たちが見守る中、二人は誓いを立てた。ハナが育てた祝福の花々が舞い散る中、シオンは愛剣を抜き、空に向かって「祝福の剣舞」を捧げた。その剣筋はもはや誰を傷つけるためのものではなく、愛する者を守り、王国の平和を寿ぐための光の軌跡となっていた。


「……いいわね。守るべきものができた戦士は、もっと強くなるわ」

ベネディクトが満足げに頷き、遊撃隊の若手兵士たちが一斉に剣を掲げて、自分たちの隊長の門出を祝した。


五百二十万人の民は、この若き二人の門出を、五万店舗のかつ丼店で一斉に乾杯して祝った。最前線を駆ける隊長を、背後から守る最年少の天才剣士。この絆は、ローゼライト連合王国の繁栄が、単なる力の集積ではなく、互いを想い合う「愛」によってさらに強固なものへと進んだことを象徴していた。


夕闇が迫る頃、十八人の影が長く伸びる中、シオンとリュカは手を取り合い、新しい家庭という名の「聖域」へと歩み出した。それは、王国の黄金時代に刻まれた、最も凛々しく、最も美しい一頁であった。




シオンと遊撃隊長リュカの婚約に沸く王宮で、アリシアはある男の存在を思い出していた。五百二十万人の胃袋を支える魔物牧場の主、ペーターである。


「ペーター、あんたもいい加減、独り身はやめなさい。王国と第2王国、合わせて五百二十万人も民がいるのよ。あんたの好みを言いなさい、私が最高の嫁を探してあげるわ!」


女王の直球すぎる問いかけに、純朴な二十一歳の青年ペーターは、麦わら帽子の下で顔を真っ赤に熟したトマトのように染めた。彼は、十八人の視察団や使徒たちの前で、おずおずと、しかし男としての本音を漏らした。


「そ、そんな……。でも、強いて言うなら……俺、毎日牧場で力仕事をしてるっすから。こう、自分に負けないくらい健康的で、包容力があって……その、いわゆる『ダイナマイトボディ』な人が、いいっす……。母ちゃんみたいに温かくて、ドカンと頼りがいのある女性に、一日の終わりに抱きしめてもらえたら、最高っすね」


その瞬間、カトリーナの扇がパチンと音を立て、ウォルゼインの魔導端末が超高速で五百二十万人の住民データベースを検索し始めた。


「分かりましたわ、ペーター様。その『ダイナマイトな包容力』、我が流通網と情報網を駆使して、本国三百万五千人と第2王国二百二十万人の中から、砂金の一粒まで探し出して差し上げますわ!」


数日後、カトリーナが連れてきたのは、第2王国の開拓村で「石突き(いしづき)の姐御」と慕われていた、二十三歳の女性マルタだった。

彼女は、ハナの農場で巨大な魔導トラクターを素手で押し戻すほどの怪力と、豊かな母性を象徴するような、まさにペーターの理想を体現したダイナマイトボディの持ち主だった。はち切れんばかりの健康美を湛えた彼女が、牧場に現れた。


「あんたがペーターかい? 魔物を慈しむ優しい男だって聞いてきたよ。あたしのこの体、牧場の仕事で使い倒してくれて構わないよ!」


マルタが豪快に笑い、ペーターの細い肩を抱き寄せると、彼女の圧倒的な抱擁力ボリュームにペーターは文字通り埋もれた。その瞬間、ペーターの顔には、かつてないほどの至福の表情が浮かんだ。


「……これだ、これっす! 俺、この人と一緒に、もっと美味しいミルクを作りたいっす!」


二人の意気投合は早かった。マルタは即座に牧場の副代表に就任し、そのダイナマイトなバイタリティで、魔物たちさえも「姐さん!」と慕うようになった。

ミレーヌとエルナは、二人の門出を祝し、特製の「ダブル・ダイナマイト・パフェ」を開発。全国五万店舗のかつ丼店で、ペーターの結婚を祝う大増量キャンペーンが展開された。


アリシアは、牧場の丘でマルタに抱えられて幸せそうに笑うペーターを見て、満足げに頷いた。

「いいわね。優しさと強さが合わさって、この国はまた一歩、無敵に近づいたわ」


五百二十万人の民は、新たな「神職人の伴侶」の誕生を、最高の乳製品と美酒で祝った。ローゼライト連合王国の繁栄は、こうして個人の幸福を積み重ねることで、より深く、よりダイナマイトに熟成していくのである。




王宮の黄金の丘に響き渡った、二組の若き「天才」たちの誓い。十五歳のシオンと二十二歳の遊撃隊長リュカ、そして二十一歳のペーターとダイナマイトボディの嫁マルタ。この立て続けの瑞祥は、五百二十万人の民を熱狂させたが、同時に王宮の中枢に「未曾有の危機感」を撒き散らした。


「……ちょっと、おかしいじゃない。十五歳の子供にまで先を越されるなんて、聞いてないわよ!」


アリシアは、執務室の机をバンと叩いて立ち上がった。その瞳には、かつて復讐に燃えていた時以上の、切実で焦燥に満ちた炎が宿っている。彼女の視線の先には、常に泰然自若として魔導端末を操作する唯一の賢者、ウォルゼインの背中があった。


「ウォルゼイン! あんた、さっきの式の感想は? 『熟成が足りない』とか『データの不足だ』なんて理屈は聞き飽きたわよ。私……私は、あんたとあの丘に立ちたいって言ってるの!」


女王の直球すぎる「宣戦布告」に、それまで静観を決め込んでいた神職人たちが黙っているはずがなかった。扉を蹴破らんばかりの勢いで、五人の才女たちが雪崩れ込んできた。


「あら、陛下。抜け駆けは感心しませんわね」

カトリーナが扇を鋭く閉じ、ウォルゼインの隣に陣取った。

「五百二十万人の経済を回す私と、賢者様の知恵。この二つが交われば、大陸全土を買い取ることも容易たやすいですわ。さあ、ウォルゼイン様、私との『合併契約書(婚姻届)』にサインを」


「商売の話は後ですわ! 男の胃袋を掴むのが先決です!」

ミレーヌが、湯気の立つ特製「超・至福かつ丼」をウォルゼインの鼻先に突き出した。

「四種の出汁をさらに極めた、愛の結晶ですわ。これを食べて、私以外の味を受け付けない体にして差し上げます!」


「あ、ずるい……。私は、ウォルゼインさんと一緒に、新しい生命たねを育てたいのに……」

ハナが、頬を赤らめながら世界に一つだけの「愛の結実の花」を差し出す。その横では、リネットとソフィが二人がかりでウォルゼインの採寸を強行していた。

「ウォルゼイン様のタキシード、もう型紙はできてるの。私の意匠と……」

「私の魔導裁縫で、世界一幸せな新郎にしてあげる。逃がさないわよ」


六人の美女――女王アリシアと、五人の神職人。

三百万五千人の本国と二百二十万人の第2王国を実質的に支配する彼女たちが、一人の男を巡って「猛烈なアタック」を開始したのである。かつての使徒たちとの死闘さえ生温く感じるほどの、すさまじい魔力と執念の嵐が執務室に吹き荒れる。


「……やれやれ。五百二十万人の統計を取るより、君たちの感情のエネルギーを計算する方が、よほど難解な数式になりそうだね」


ウォルゼインは、殺気にも似た熱視線を浴びながら、困ったように、しかしどこか嬉しげに口角を上げた。

「いいだろう。君たち全員の『想い』という名のデータを、これから一生かけて解析させてもらうよ。……ただし、まずは一人ずつ、ゆっくり話を聴かせてくれないか?」


その言葉が終わるか終わらないかのうちに、アリシアが彼の腕を強引に引き寄せた。

「順番待ちなんてしないわよ! 私が一番なんだから!」


五万店舗のかつ丼店から流れる祝福の香りと、第2王国の琥珀色の美酒。それらすべてが、今や一人の賢者を巡る「恋の戦場」の供物と化していた。ローゼライト連合王国の黄金時代は、今、最も熱く、最も騒がしい「愛の乱世」へと突入したのである。



王宮のバルコニーに、救国の女王アリシアが立った。その隣には、困惑しながらも覚悟を決めた唯一の賢者ウォルゼイン、そしてカトリーナ、ミレーヌ、ハナ、リネット、ソフィという、王国を支える五人の神職人たちが並び立つ。五百二十万人の民が固唾を呑んで見守る中、アリシアの声が魔導拡声器を通じて全土に響き渡った。


「全臣民に告げるわ! 我らローゼライト連合王国を未曾有の繁栄に導いた賢者ウォルゼイン……彼はもはや一人の男ではない。この王国の安寧と未来を象徴する『共有財産』よ。よって私は女王の権限を使い、私を含む六人全員との同時婚約という超法規的措置をここに宣言するわ!」


一瞬の静寂の後、三百万五千人の本国と二百二十万人の第2王国を揺るがす、地鳴りのような大歓声が沸き起こった。

「異議なし! ウォルゼイン様なら当然だ!」

「救国の女王と五人の神職人……これ以上ない、最強の布陣じゃないか!」

民の反応は驚くほどに肯定的だった。かつての帝国の圧政を打ち砕き、五万店舗のかつ丼店と至高のアイスクリーム、そして琥珀色の美酒をもたらした七人の英雄たちが、一つの家族として結ばれる。それは、この王国の黄金時代が永遠に続くことを約束する「勝利の確定」に他ならなかった。


この「全員正妻ハーレム宣言」は、単なる王室の慶事を超え、五百二十万人の民に凄まじい熱狂を伝播させた。

「女王陛下や神職人様たちがあれほど情熱的に愛を貫くなら、俺たちも後に続こうぜ!」

「あやかり婚」を望む男女が全土で爆発的に増加し、王国には空前の結婚ブームが到来した。カトリーナは即座に「合同結婚式・特別減税措置」を発令し、五万店舗のかつ丼店では「夫婦円満・特盛りセット」が飛ぶように売れていく。


リネットとソフィは、六人それぞれの個性を活かしつつ、ウォルゼインを中央に配した「七位一体の婚礼装束」のデザインに着手。ハナは国中の街路樹を「常に満開の祝福花」へと変え、ミレーヌとエルナは、五百二十万人が同時に食べられる巨大な「愛の重層アイスケーキ」の製造を開始した。


「……やれやれ、統計学的には予測できない展開だが。この五百二十万人の幸福指数ハピネス・インデックスが天井を突き抜けている以上、私の計算もここからは『愛』という不確定要素を定数に組み込む必要がありそうだね」


ウォルゼインが苦笑しながらも、隣に並ぶ六人の手を取ると、国民の熱狂は最高潮に達した。

救国の女王の決断は、法も常識も超えて、ただ一つの「愛という正解」を導き出した。ローゼライト連合王国は今、五百二十万人の民が互いに愛を誓い合う、世界で最も幸福で、最も熱い「愛の帝国」へと昇華したのである。





王宮のバルコニーで宣言された「超法規的婚約」から、ローゼライト連合王国は文字通り「熱い」時代へと突入した。救国の女王アリシアと五人の神職人、そして賢者ウォルゼイン。この七人の絆が公式なものとなったことは、五百二十万人の民にとって、これ以上ない生の活力となった。


「陛下たちに続け! 我らも未来のローゼライトを担う宝を授かろうではないか!」


その熱狂は凄まじい「あやかり婚」と、それに続く空前の子作りブームを巻き起こした。新婚はもちろん、すでに家庭を持つ既婚者たちも、この黄金時代の繁栄を信じ、次世代を育む決意を固めたのである。カトリーナは即座に「出産・育児特別助成制度」を敷き、ハナは妊婦の滋養強壮に特化した「安産野菜」を全土に普及させ、ペーターは最高品質の「魔乳牛ミルク」を全家庭へ無償提供するラインを構築した。


そして十ヶ月後。王国の歴史に永遠に刻まれる「奇跡の月」が訪れた。


本国と第2王国を合わせて、なんと百万人のベビーが一斉に産声を上げたのである。五百二十万人の人口に対し、一度に百万人の新生児が誕生するという、生物学的な常識を遥かに超越した現象。しかし、それを支えるだけの「三六五パーセントの食料充足率」と、ウォルゼインが整えた「魔導医療ネットワーク」が、この奇跡を現実のものとした。


そして、この国家的な慶事の中心には、同じく母となった六人の姿があった。


救国の女王アリシアは、銀髪を揺らしながら、自らの命を継ぐ愛娘を抱いた。かつて孤独な戦いに身を投じていた少女が、今は慈愛に満ちた母として、賢者の血を引く我が子に微笑みかけている。

「見て、ウォルゼイン。この子が、私たちが守り抜いた平和の答えよ」


その傍らでは、カトリーナ、ミレーヌ、ハナ、リネット、ソフィの五人も、それぞれがウォルゼインとの間に授かった愛しき嬰児を抱いていた。

カトリーナは我が子の才覚を見抜き、すでに帝王学の準備を始め、ミレーヌは究極の離乳食を構想する。ハナは生命の神秘に涙し、リネットとソフィは世界で最も贅沢な産着をその小さな体に纏わせた。


「……私の計算でも、これほど幸福な統計結果は導き出せなかったよ」


六人の妻と六人の我が子、そして百万人の新しい臣民に囲まれ、賢者ウォルゼインは静かに、しかし確かな感動と共に呟いた。

全国五万店舗のかつ丼店では、百万人の誕生を祝う「特製お食い初めセット」が振る舞われ、第2王国のリュカが醸した「祝杯の極上酒」が全土で酌み交わされた。


五百二十万人の国民が、百万人の赤子を等しく愛し、育てる。

ローゼライト連合王国は、ただの「国家」であることをやめ、一つの巨大な「家族」へと進化した。百万の産声は、旧帝国の負の歴史を完全に掻き消し、眩いばかりの光に満ちた新大陸への希望を歌い上げていた。



ローゼライト連合王国が「百万人のベビーラッシュ」という驚天動地の祝祭に包まれる中、その狂騒の中心には、王国の武を司る若き夫婦たちの姿もあった。


十五歳の剣の天才シオンと、二十二歳の遊撃隊長リュカ。そして、二十一歳の魔物牧場主ペーターと、ダイナマイトボディの愛妻マルタ。この二組の「天才夫婦」もまた、女王アリシアや五人の神職人たちと同じく、賢者ウォルゼインの導きと王国の繁栄がもたらした「愛の結晶」をその腕に抱いていた。


シオンとリュカの間に産まれたのは、シオンに似たしなやかな四肢と、リュカ譲りの意志の強い瞳を持つ男児だった。一方、ペーターとマルタの間には、マルタのバイタリティをそのまま受け継いだような、元気いっぱいの産声を上げる健やかな女児が誕生した。


この二つの新しい命に対し、誰よりも、そして意外すぎるほどの変貌を遂げたのが、鉄の規律を誇る騎士団長ベネディクトであった。


「……おお、おお。これがシオンの……そして、あの猛将リュカの血を引くわっぱか」


かつて戦場では鬼神と恐れられ、十人の使徒の筆頭として冷徹に剣を振るっていたベネディクトが、今やその巨大な体躯をこれでもかと折り曲げ、ゆりかごを覗き込んでいた。その顔は、もはや「厳格」の二文字が霧散したかのような、締まりのない、とろけきった笑みに支配されている。


「団長、あまり顔を近づけすぎると、子が怖がりますわ」

リュカが苦笑して窘めるが、ベネディクトの耳には届かない。彼は、シオンの息子がその小さな指で自分のごつい人差し指を握りしめた瞬間、「……ぐはぁっ!」と、心臓を射抜かれたような声を上げて悶絶した。


「見たか! 今、この子は私を『師』と認めたのだ! いや、じいじ……いや、ベネディクトと呼ぼうとしたぞ!」

「団長、まだ産まれて数日ですよ」

シオンが柳のようにしなやかな所作で赤子を抱き上げると、ベネディクトは今度はペーターの家へと馬を飛ばした。そこでは、マルタのダイナマイトな包容力に包まれた愛娘を見て、再び鼻の下を伸ばしていた。


「ペーター! この子の将来は私が保証する! 騎士団の特別顧問として、私が直々に……いや、まずはこの特製の『魔導ガラガラ(純金製)』を受け取れ!」

「団長、そんな重いもの振り回せませんよ……」

ペーターの困り顔を余所に、ベネディクトは「猫かわいがり」を通り越し、もはや「神格化」に近い勢いで赤子たちに尽くし始めた。彼は自らの騎士団に「非番の時は赤子の護衛に従事せよ」という、公私混同も甚だしい(しかし国民からは絶賛される)特別命令を下す始末である。


アリシアとウォルゼインは、王宮の窓から、広場で赤子をあやすベネディクトの情けない、しかし幸福に満ちた背中を眺めていた。

「……最強の騎士団長が、赤ん坊一人の笑顔に完敗ね」

アリシアが可笑しそうに呟くと、ウォルゼインも静かに頷いた。

「計算外の変数だが……悪くない。あの百万人の産声こそが、剣よりも強い、この国の真のプロテクションになるんだから」


五万店舗のかつ丼店では、ベネディクトの奢りによる「祝・誕生記念特盛り」が振る舞われ、王国の黄金時代は、勇猛な戦士たちが赤子の前で相好を崩す、最高に平和で騒がしい「子育ての季節」へと、その色を深めていったのである。


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