シーン8:章の締め ― 結界の完成形
旅は、いつの間にか始まっていた。
出発の宣言も、区切りの言葉もない。
道を歩き、夜を越え、朝を迎える。その繰り返しの中で、レイスはすでに「旅の途中」にいる。
同行者は増えた。
イオが隣を歩き、時折、同じ火を囲む。
だが、そこに中心は生まれない。
誰かが導くわけでも、
誰かが物語を引き寄せるわけでもない。
結界は、もはや張りっぱなしではない。
必要なときにだけ、
必要な形で、
必要な相手に対してだけ機能する。
それは世界を拒むための膜ではなかった。
世界の中で、
どこまで関わるか。
どこから先を成立させないか。
その選択を、自分の手に戻すための技術。
世界修正核は、彼女を手放した。
管理も、修正も、観測も、もはや不要だと判断した。
そしてレイスは、世界を捨てなかった。
従うことも、抗うこともせず、
ただ、使い分ける存在になった。
近づくものは、近づける。
踏み込むものは、踏み込ませない。
意味を押し付けるものだけが、成立しない。
結界は壊れない。
閉じない。
だが、彼女を縛らない。
物語の中心は空白のまま。
それでも、旅は続く。
世界は少しだけ自由になり、
彼女もまた、その中を歩いていく。
——選べる距離を持ったまま。




