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読書好きの悪役令嬢は、世界の筋書きを読まない  作者: 南蛇井


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74/92

シーン8:第七章の締め ― 少しだけ自由な世界

世界は、安定していなかった。


因果は一本に収束せず、

出来事は重なり合い、

理由は複数の形を取る。


同じ選択が、正しくもあり、間違ってもいる。

同じ失敗が、成長にも停滞にもなる。

結論は、常に一つではない。


それでも、誰も強制されていない。


剣を取れ、と命じられる者はいない。

憎め、と促される相手もいない。

役割は提示されず、物語は押し付けられない。


世界は読みにくくなった。

整理されず、説明も不足している。

展開は遅く、ときに矛盾を孕む。


正解が一つだった世界は、読みやすかった。

筋が通り、理解しやすく、安心できた。


正解が一つでない世界は、生きにくい。

選ばなければならず、迷いが残り、

答えは常に暫定だ。


それでも。


世界は、後者を選んだ。


誰かに決められる正しさより、

自分で抱える不確かさを受け入れた。

物語としての完成度より、

続いていく余地を残した。


終わらない。

閉じない。


だが、前に進める。


世界は、完結を拒み、

沈黙と混乱を内包したまま、動いている。


それは不親切で、

ときに不安定で、

決して優しいとは言えない。


それでも――

生きるには、十分だった。


物語は続く。

ただし、誰のものでもない形で。

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