シーン2:世界修正核 ― 管理から記録へ
世界修正核は、久しく行っていなかった処理を実行していた。
介入フラグ、全解除。
因果集中アルゴリズム、停止。
優先度テーブル、破棄。
剣を抜かせる条件も、告発を成立させる要件も、もはや参照されない。
かつて世界を前へ押し出していた数式は、静かに無効化されていく。
一拍の空白。
その後、新しいプロセスが起動した。
――記録モード。
ログ形式が切り替わる。
主人公指定:なし。
正解判定:未設定。
分岐数:算出せず、ただ保存。
因果は束ねられない。
結果は評価されない。
選択肢の優劣も、成功失敗も、ここでは意味を持たない。
ただ、起きたことが起きたまま、時系列に並べられていく。
衝突も、逡巡も、矛盾した感情も、削除されずに残される。
結論ログが生成される。
「評価を行わない」
「保存のみを実行」
世界修正核は、進める存在であることをやめた。
物語を成立させるために、未来を一つに絞る役目を放棄した。
代わりに、それは覚える存在になる。
誰が何を選び、何を選ばなかったか。
正しかったかどうかではなく、存在したという事実だけを。
沈黙ではない。
停止でもない。
世界は、記録されながら、進んでいく。




