シーン11:第六章の締め ― 揺れは、可能性
世界は、
安定してはいなかった。
偶然は多く、
判断は分かれ、
出来事は重なり合う。
それでも、
壊れてはいない。
誰かが救われれば、
誰かが取り残される、
そんな単純な構図は、
もう成立しなかった。
代わりに、
小さな不整合が残る。
説明できない納得、
納得できない正しさ。
世界は揺れている。
だが、それは崩落ではない。
生きている、という揺れだった。
レイスは、
図書室の窓辺に立ち、
その様子を見ている。
介入はしない。
修正もしない。
距離を保ったまま、
ただ観測する。
彼女には分かっていた。
結界を張っていた頃、
世界は美しかった。
矛盾がなく、
筋書きがあり、
必ず誰かが裁かれ、
必ず誰かが救われた。
正解が一つだった世界は、
物語には向いていた。
だが――
未来には向いていなかった。
未来とは、
選択の結果ではなく、
選択そのものが積み重なるものだ。
答えを一つに絞る世界では、
続かない。
揺れがあるから、
進める。
迷いがあるから、
生きられる。
レイスは、
もう世界の正解役ではない。
そして、
それでいい。
世界は今、
自分で揺れている。
誰かに決められた結末ではなく、
誰かが歩きながら作る可能性として。
正解が一つでない世界は、
混沌を孕む。
だが同時に、
未来を持つ。
第六章は、
静かに終わる。
世界はまだ不安定で、
未完成で、
未定義だ。
それでも――
生きている。
それが、
新しい世界の誕生だった。




