シーン7:王太子アレイン ― 正解過多の苦悩
執務室の机に、
書類が並ぶ。
どれも、
間違っていない。
税制改革案。
学院支援の拡充。
地方自治の裁量強化。
数字も、
論理も、
支持も揃っている。
アレインは、
一枚ずつ目を通す。
どの案も、
「王として正しい」。
採用すれば、
称賛される。
反対も、
限定的だ。
(……選べないのではない)
彼は、
そう理解している。
選択肢が多すぎる。
しかも、
どれも排他的ではない。
かつてなら、
正解は一つだった。
他は、
犠牲として切り捨てられた。
だが今は――
切る理由が、ない。
(選びすぎている)
決断の重みが、
分散している。
一つを選んでも、
物語は収束しない。
支持は、
集まる。
だが、
意味が集中しない。
アレインは、
ペンを置く。
迷っているわけではない。
恐れてもいない。
ただ、
「選ぶ」という行為が、
以前ほど世界を動かさない。
王としての決断が、
物語の分岐点にならない。
(……これが、今の世界か)
彼は、
書類をまとめる。
一つを選ぶ。
だが、
それで終わりにはならないと知っている。
決断は、
軽くなったのではない。
薄く、広がった。
それでも、
やるべきことはある。
アレインは、
王太子として、
今日の決断を下す。
ただし――
世界は、
それを唯一の答えとはしない。




