シーン6:エリシア ― 成長は始まるが、線にならない
失敗した。
それは、
はっきり分かった。
魔法陣の組み方を、
間違えた。
理論は合っていた。
でも、
手順が追いついていなかった。
結果、
術は途中で崩れ、
教室に小さな混乱を生んだ。
叱責は、ない。
ただ、
沈黙があった。
エリシアは、
俯く。
(……失敗した)
胸の奥が、
少し痛む。
だが――
次の言葉が、来る。
「でも、発想は良かった」
教員の声は、
淡々としている。
周囲も、
頷く。
同情ではない。
評価だ。
(……え?)
混乱する。
失敗したはずなのに、
否定されていない。
むしろ、
前より多くの視線が集まっている。
(でも……)
もう一度、
自分のノートを見る。
崩れた箇所が、
はっきり分かる。
何が足りなかったか。
どこを補えばいいか。
以前より、
理解できている。
(失敗した)
(でも、前より分かる)
その二つは、
同時に存在している。
どちらかを選ぶ必要はない。
エリシアは、
息を整える。
悔しさもある。
手応えもある。
感情は、
一本につながらない。
だが――
動いている。
成長は、
始まっている。
それは、
一直線ではない。
曲がり、
枝分かれし、
時に戻る。
それでも、
確かに進んでいる。
エリシアは、
もう一度、
ペンを取った。
今度は、
少しだけ迷わずに。




