表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読書好きの悪役令嬢は、世界の筋書きを読まない  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/92

シーン5:即行動(悪役令嬢らしくない)

予定表は、過不足なく整えられていた。


刺繍の稽古。

舞踏の練習。

お茶会の招待状。

どれも、貴族令嬢としては正しい。

間違いはない。


「こちらが今月のご予定になります、レイス様」


侍女は丁寧に説明する。

声の調子からして、これが日常なのだと分かる。


(……なるほど)


レイスは、一つひとつを確認した。

確認はする。

だが、評価は別だ。


刺繍は、完成品が残る。

舞踏は、評価が曖昧。

お茶会は、消費される。


どれも、読み終えたあとに残るものがない。


「全部、後にして」


言葉は、簡潔だった。


侍女が瞬きをする。

一瞬、聞き間違いかどうかを確認するような間。


「……すべて、ですか?」


「ええ」


否定も、補足もない。

当然の選択として頷く。


「まずは、図書室に行きたいの」


王立魔導図書室。

その名を出すと、侍女の表情に困惑が浮かんだ。


「ですが、社交界への顔出しは――」


「必要になったら行くわ」


必要になったら。

その基準が、すでに違っている。


侍女は言葉を探したが、

やがて、小さく頭を下げた。


「……承知いたしました」


止めない。

説得もしない。

それが、この家のやり方なのだろう。


(助かるわ)


レイスは、内心でそう思った。


翌日の準備は、静かに進んだ。

派手な衣装は用意されない。

宝石も、最小限。


代わりに、

動きやすい外套と、筆記具。


(正しい)


翌朝、馬車は王立区画へ向かった。

社交界とは逆方向だ。


窓の外を流れる街並みは、

華やかでも、特別でもない。


それでも、

レイスの意識は前にあった。


今日、

本がある場所へ行く。


それだけで、十分だった。


この日から、

レイス・フォル・デイオールは

社交界の中心から、静かに距離を取り始める。


誰かと衝突したわけでもない。

拒絶したわけでもない。


ただ――

優先順位を、最初から明確にしただけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ