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シーン8:第五章の締め ― 物語の“外”から来たもの
レイスは、
ゆっくりと本を閉じた。
重みが、
手のひらに残る。
『未読の魔法について』
まだ、
読み切ったとは言えない。
だが、
読む必要があることだけは、
はっきりした。
結界は、
再び安定している。
音は届かず、
視線は留まらず、
因果は偏らない。
ただ――
完全ではない。
揺らぎは、
消えていない。
それでいい。
世界は、
沈黙している。
断罪は起きず、
剣は抜かれず、
物語は始まらなかった。
だが、
その沈黙の外側から――
声ではなく、問いが落ちてきた。
命令でも、
糾弾でもない。
進め、
とも言わない。
ただ、
「なぜ」と問うだけだ。
結界は、
破られたのではない。
力で、
押し切られたわけでもない。
理由ごと、
揺さぶられた。
それが、
この章のすべてだった。
レイスは、
本を机の脇に置く。
排除しない。
だが、
答えも出さない。
今は、
未読のままでいい。
第五章は、
そうして終わる。
物語は、
まだ始まらない。
だが――
問いだけが、
そこに残った。




