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読書好きの悪役令嬢は、世界の筋書きを読まない  作者: 南蛇井


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シーン7:例外性の定義

レイスは、

本を閉じた。


指で、表紙をなぞる。

『未読の魔法について』

その文字は、まだ何も主張していない。


結界は、

揺らいだままだ。


だが、

不安定というほどではない。


壊れる気配も、

拡張する兆しもない。


ただ、

問いが残っている。


(……整理しましょう)


レイスは、

静かに考える。


この本は、

物語を進めるためのものではない。


誰かを断罪しない。

誰かを救済しない。


成長も、

破滅も、

要求していない。


世界に、

何もさせようとしない。


だからこそ、

世界の仕組みから零れている。


結界を通過した理由も、

もう見えている。


この本は――

理解を拒まない。


読まれていないことを、

恐れていない。


意味を与えられない状態を、

否定していない。


干渉を、

求めない。


読め、

とも言わない。


ただ、

そこにある。


未読であることを、

許容している。


(……なるほど)


レイスは、

小さく息を吐く。


結界は、

すべてを拒んでいたわけではない。


遮断していたのは、

音でも、視線でも、因果でもない。


押し付けだ。


理解を強要するもの。

役割を要求するもの。

意味を即座に結びつけようとするもの。


それらにだけ、

反応していた。


だから――

この本は、通過した。


拒む理由が、

どこにもなかったからだ。


伏線が、

ここで静かに回収される。


結界は、

理解を拒まない存在には、

反応しない。


レイスは、

本を机に置く。


扱いに困る。

だが、

排除する理由もない。


(……困ったわね)


再び、

その言葉が浮かぶ。


今度は、

少しだけ意味が違った。


これは、

世界の敵ではない。


だが――

自分の結界に、

問いを投げ返してきた最初の存在だ。


第五章は、

ここで核心を越えた。


残るのは、

この問いをどう扱うか。


そして、

その問いが

世界にどう返されるか、だ。

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