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読書好きの悪役令嬢は、世界の筋書きを読まない  作者: 南蛇井


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第四章 「断罪イベントは、始まらなかった」 シーン1:断罪当日の朝 ― 世界の準備

王立学院の大広間は、

朝の光を受けて整えられていた。


高い天井。

磨かれた床。

中央には、玉座。


その脇に、剣が置かれている。

装飾は控えめだが、

抜かれることを前提とした配置だ。


証言台は、

わずかに前へ出されている。

声が、よく通る位置。


すべてが、

正しい場所にあった。


貴族たちが集まり始める。

衣擦れの音。

抑えた会話。


学院生や関係者、

そして噂を聞きつけた見物人。


群衆は、

期待と緊張を等分に抱えている。


誰も、

「起きないかもしれない」とは思っていない。


今日は、

何かが起きる日だ。


それは、

空気として共有されていた。


剣は、

まだ鞘に収まっている。


だが、

抜かれる未来を疑う者はいない。


証言台は、

まだ空だ。


だが、

言葉が投げ込まれることを、

皆が待っている。


世界は、

成功を予測していた。


条件は揃っている。

役者は集まっている。

舞台装置は、完璧だ。


欠けているものは、

一つだけ。


――引き金。


それが引かれれば、

物語は進む。


誰もが、

そう信じていた。


この朝の時点では、

まだ。

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