シーン4:イベント補正という概念の定義
レイスは、
いつもの席でノートを開いた。
新しいページ。
罫線の上に、ゆっくりと題名を書く。
――イベント補正について
言葉は、まだ仮だ。
だが、今の感覚に一番近い。
ペン先を止め、
思考を整理する。
イベント。
出来事。
それ自体に、価値があるわけではない。
重要なのは、
誰に起きるかだ。
レイスは、ノートに短く書きつける。
・特定人物
・成長
・変化
・感情
線で結ぶ。
イベント補正とは、
成長や変化が必要な人物に、
出来事を集中させる仕組み。
世界が、
物語を進めるための機能。
(……分かりやすい)
必要だから、起こる。
起こるから、意味を持つ。
無作為ではない。
選別されている。
ここまで書いて、
レイスは手を止めた。
自分の結界を、思い返す。
防音。
視線遮断。
存在感希薄化。
どれも、
「触れさせない」ためのものだった。
だが――
理論書を読んでから、
視点が変わる。
音を、ほどいた。
視線を、散らした。
認識を、後回しにした。
結果として、
何が起きたか。
偶然が、
集まらなくなった。
ノートに、
新しい行を書き足す。
・因果の集中が起きない
・偏りが発生しない
(……削ってるのね)
因果そのものではない。
必然でもない。
尖りだ。
特定の場所。
特定の人物。
特定の瞬間。
そこに集まるはずだった因果が、
均されている。
(……世界構造に、触れてる)
初めて、
そう自覚する。
怖さは、ない。
後悔も、ない。
ただ、
規模が思っていたより
少しだけ、大きかった。
レイスは、ノートを閉じた。
結界は、
単なる個人的な工夫ではない。
世界の仕組みと、
噛み合ってしまっている。
第三章は、
ここで次の段階へ進む。
次は、
どうするか。
壊すか。
止めるか。
――どちらも、違う。




