表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読書好きの悪役令嬢は、世界の筋書きを読まない  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/92

シーン3:理論書との遭遇(核心書籍)

王立魔導図書室の奥には、

人の足がほとんど向かわない一角がある。


禁書区画ではない。

封印も、警告文もない。


ただ――

読まれない。


棚に並ぶ書籍は、どれも地味だ。

装丁は簡素。

題名は抽象的で、即効性がない。


レイスは、そこに足を踏み入れた。


目的は、

はっきりしている。


偶然について。


最初に手に取ったのは、

一冊の薄い理論書だった。


『偶然が重なる理由についての仮説』


ページをめくる。


数式。

概念図。

そして、淡々とした文章。


「偶然とは、観測されなければ意味を持たない」

「意味を持たせるために、確率は操作されうる」


レイスは、読み進める。


次に、

『因果律補正と観測者効果』


ここでは、

世界が「整合性」を保つために、

確率を歪める可能性が論じられていた。


最後に、

『必然を演出するための確率操作』


書き手は、

まるで前提として受け入れている。


物語が進むためには、

偶然は散らばっていてはならない。


集められる必要がある、と。


(……なるほど)


レイスは、ページを閉じた。


否定は、湧かない。

怒りも、ない。


ただ、

理解がある。


世界は、

無秩序では困る。


人が成長するには、

出来事が必要だ。


物語的要請に応じて、

偶然を選び、

特定の人物へ集中させる。


それは、

冷たい仕組みではない。


むしろ、

効率的だ。


(……合理的ね)


小さく、内心で呟く。


悪意は感じない。

誰かを陥れるための装置でもない。


世界は、

進ませようとしているだけだ。


理解した瞬間、

自分の結界の位置が見えた。


音を遮断し、

視線を散らし、

存在感を薄めた。


それだけではない。


偶然の集中を、

削っている。


レイスは、

ゆっくりと本を棚に戻した。


世界を敵だと思う必要はない。

壊す理由もない。


ただ、

構造を知ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ