シーン2:第一章・第二章の記憶の再接続
図書室の奥で、
レイスは一度、本を閉じた。
静かすぎる空間。
集中には最適だが、
今日は少し、思考が外に向いている。
――入学当初。
思い返せば、
一日は、ずいぶん騒がしかった。
廊下を歩けば、
誰かと出会う。
温室に入れば、
先客がいる。
図書室の前では、
必ず声をかけられた。
偶然、偶然、偶然。
一日に、何度も。
(……多すぎたわね)
当時は、
煩わしさの方が先に立っていた。
だが、
今振り返ると、
別の印象が浮かぶ。
用意されていた。
そう言った方が、
正確だ。
曲がり角の位置。
時間帯。
立ち止まる理由。
すべてが、
自然すぎるほど自然で、
だから疑わなかった。
今はどうか。
廊下では、
誰とも出会わない。
温室は、
ただの温室だ。
図書室の前で、
足を止める人はいない。
誰とも、
何も起きない。
(……極端ね)
偶然が、消えたわけではない。
人はいる。
すれ違う。
けれど、
重ならない。
特定の人物に、
出来事が集中しない。
以前のような、
「何度も同じ顔に出会う」ことがない。
レイスは、
ノートを開き、
何も書かれていない頁を見つめる。
思考が、
一本の線になる。
(偶然が起きていた、というより)
言葉を、内心で区切る。
(偶然が、集められていた)
偶然は、
本来、散らばるものだ。
だが、
入学当初の学院では、
それが一点に集まっていた。
人に。
感情に。
物語に。
(……仕組み、ね)
ここで、
初めて輪郭が現れる。
因果干渉。
まだ、
そう名付ける前段階だ。
だが、
世界が「何か」を
押し付けていたことだけは、
確かだった。
レイスは、
もう一度、本を開く。
今度は、
違うものを探すために。




