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読書好きの悪役令嬢は、世界の筋書きを読まない  作者: 南蛇井


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20/92

シーン4:視線が邪魔だと気づく(第二段階)

音は、届かなくなった。


それだけで、

図書室の奥はずいぶん静かになる。


呼びかけは成立しない。

声は、途中でほどける。


(……いい)


レイスは、再び本に戻った。


文字を追い、

思考を沈める。


だが――

完全ではなかった。


ふと、

背中に何かを感じる。


視線。


誰かが、こちらを見ている。


(……)


振り返らない。

確認もしない。


それでも、

集中の糸が、わずかに緩む。


見られているだけで、

思考は浅くなる。


(……そうか)


音は、干渉の一部にすぎない。


(視線も、干渉ね)


内心で、そう定義する。


見られるという行為は、

触れられていなくても、

確かに近い。


意識が、引き寄せられる。


レイスは、視線を本から外し、

周囲を見渡した。


数人の学生がいる。

誰も、悪気はない。


ただ、

何か珍しいものを見るように、

時折こちらに目を向けているだけだ。


(……見えなくする?)


一瞬、そう考えて、すぐに否定する。


光学迷彩。

不可視化。


それは、防御だ。

拒絶だ。


それに――

図書室で使うには、

少し騒がしい。


(違う)


必要なのは、

消失ではない。


存在は、ここにあっていい。

見えていても、問題ない。


(重要度を下げる)


その言葉が、

すっと、腑に落ちた。


人は、

見えていても見ないものがある。


壁の染み。

天井の梁。

毎日通る廊下の角。


そこにあるのに、

意識に上らない。


(……それでいい)


レイスは、ノートを開く。


遮断。

防音。


その延長線上に、

新しい項目を書き加える。


――認識の優先度制御


難しい言葉だが、

意味は単純だ。


「気づかない」

「後回しになる」


視線は、向く。

だが、

留まらない。


(できるかどうか、じゃない)


やることは、

もう決まっている。


音を、行き先ごとほどいたように。

視線も、

意味づけの手前でほどく。


レイスは、静かにページをめくった。


結界は、

防御から、さらに離れていく。


まだ誰も、

それが“結界”だとは呼ばない。


けれど、

世界との距離は、

確実に広がり始めていた。

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