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第5話「ブラックギルドとの衝突」

 森の入り口は、朝露に濡れた草木が光っていた。

 依頼内容は《森の狼》の討伐。普段は小さな群れで動くが、最近は飢えのせいか人里に近づいてきているという。

 僕とリシアは武具を整え、深呼吸して森へ足を踏み入れた。


「狼は素早いです。回復魔法の準備はしていますが……気をつけてください」

「ありがとう。定時までに片付けよう」


 リシアは小さく笑った。

 その一言が合図のように、二人で並んで進む。



 森の奥から、低い唸り声。

 灰色の毛並みの狼が三匹、茂みから現れる。鋭い牙を剥き、今にも飛びかかろうとしていた。


「来ます!」


 リシアの声と同時に、先頭の一匹が突進する。

 僕は棒を構え、横から叩きつけた。衝撃で狼がよろめき、地面に転がる。

 残り二匹が左右から襲いかかる。だがリシアが詠唱を終え、聖なる光が狼たちの足元に走った。


「《聖縛》!」


 光の鎖が絡みつき、動きを封じる。僕はその隙に踏み込み、棒を振り下ろした。

 狼は呻き声を上げ、森の奥へ逃げていった。


「やった……!」


 リシアが胸に手を当てて安堵の息を吐く。

 僕も息を整えながら笑った。

「無理はしない。これなら定時までに終われる」


 しかし、そこで背後から別の声が飛んだ。


「へえ、やるじゃねえか。だが――それ以上に稼げるか?」


 振り返ると、黒い鎧を着た男たちが五人。昨日、僕を追放した冒険者たちだ。

 その顔には、嘲笑と軽蔑が浮かんでいた。


「ギルドの依頼を勝手に奪ってんじゃねえぞ、定時坊主」

「お前みたいな無能が受けていい仕事じゃねえんだよ」


 彼らは僕たちの前に立ちふさがり、木札を突き出した。

 同じ依頼――《森の狼》退治。


「それ……ダブルブッキングですか?」

 リシアが不安げに呟く。

 男たちはニヤリと笑った。


「依頼は俺たちが先に取った。お前らが受けたのは手違いだ。だから報酬は全部俺たちのもんだ」


 僕は受付の顔を思い出す。彼女は確かに僕たちに依頼を渡した。

 つまりこれは、ブラックギルドの連中による“押し付け”だ。

 彼らは強引に依頼を奪い、弱い冒険者を潰してきたに違いない。


「仕事を横取りするなんて、間違ってます!」

 リシアが勇気を振り絞って言い返す。だが男たちは笑い声を上げた。


「甘ちゃんだな。冒険者は弱肉強食だ。休んで強くなる? 笑わせんな!」


 胸の奥で、何かが静かに燃えた。

 彼らはかつての上司と同じだ。弱者を踏み台にし、無茶を押し付けて、自分だけ得をする。


「……なら、やってみせます」


 僕は棒を構えた。

 男たちは一瞬目を丸くしてから、にやつきを深める。


「ほう、定時坊主がケンカ売るか。いいぜ――その八時間で、俺たちを止められるか試してみろ!」


 森の静寂を破って、戦いの幕が開いた。


(つづく)

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