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第11話「過労魔王との決戦」

 宰相の真の正体は、人間ではなかった。

 彼はこの世界をブラックに染め上げる存在――【過労魔王】。

 人々を休ませず、疲弊させ、魂を搾り取ることで力を増していたのだ。


「休むことは罪! 怠惰は人を腐らせる!」

 魔王の咆哮に、兵士たちの心が縛られる。

 だが僕は、リシアと並んで声を張った。


「休むからこそ、次に進める!」

「癒やしこそ、神が与えた力!」


 兵士たちは一人、また一人と武器を取り直す。

 “休んでこそ強くなれる”という真実が、彼らの胸に灯った。


 鐘が鳴る。

 定時。

 僕の体は静止し――次の瞬間、光が爆ぜた。


 全身に駆け巡る覚醒の力。

 棒を振るうと、過労魔王の黒い魔力を切り裂いた。


「この一撃は……みんなの“休息”の力だ!」


 轟音とともに魔王は砕け散り、暗雲は晴れた。



第12話「ホワイト革命」


 戦いのあと、王都は変わった。

 兵士たちは交代制を導入し、休暇日を設けるようになった。

 ギルドも規約を改め、冒険者が“定時”で帰ることを推奨するようになった。


「ホワイト冒険者」の呼び名は、やがて憧れの言葉になった。

 街の子どもたちは笑顔でこう言う。


「将来は、定時で帰れる冒険者になりたい!」


 僕は苦笑しながらも、胸の奥で温かさを感じた。



エピローグ「定時の鐘が鳴る世界で」


 草原に立ち、風を受ける。

 リシアが隣で微笑む。


「ねえ、これからどうしますか?」

「そうだな。依頼は続ける。でも、無理はしない」


 僕は夕焼けに染まる空を見上げた。

 かつての世界では叶わなかった願い。

 この世界では、それを守ることができる。


 ――定時に帰り、休んで、また笑って生きる。


 鐘が鳴る。

 その音は、僕にとって新しい一日の始まりを告げていた。


(完)

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