力は、何もかもを奪っていく……
<第3章 こじれ>
昔からそうだった。
私の周囲にいる人たちは、力を求めてばかり。
自分の力を過信していた父は、街外れで盗賊に襲われて死んだ。
きっとあの人のことだ。
自分なら蹴散らせると思ったのだろう。
母も地位欲しさに王都へ出稼ぎに出て働き続け、望みの地位を手に入れてもさらに上を目指し、過労と病気であっという間に死んでしまった。
今は母が遺した金銭と家があるし、近所の雑貨屋さんで働かせてもらっているので、生活には困っていない。
領主様もそのご家族も、私を気にしてよくしてくれている。
本当にいい人たちばかりだ。
それなのに―――力を求めない穏やかなこの街の中で、私の周りだけが力を求めている。
分からない。
力を求め、それを手に入れたところで、一体なんの得があるのか。
私にとって、力は悪魔か死神か、それ以上に邪悪なものでしかない。
力を求めた人たちは、みんな死んでいってしまったんだもの。
力なんて、あるだけ不吉じゃない。
なのに、その力で私を守るなんて言う人がいる。
彼の世界は、全てが力だった。
私にとってその世界は水中のように息ができない場所で、決して住むことはできない場所だった。
彼の存在は、私を蝕む毒となる。
人一倍力を重んじて力を求める彼の存在に、私は耐えられない。
彼の傍にいるだけで、彼の願望が鋭い刃となって私の心を傷つけていく。
彼が自分の価値観を語れば、その言葉は縄となって私の首を絞め、徐々に呼吸を奪っていく。
じわじわと自分が殺されていく感覚を覚えながら、何度切に願ったことだろう。
来ないで、と。
私には、あの人がいるから。
でも……いつ頃だっただろうか。
―――あの人も彼によって、私の嫌う色に染められ始めていると気付いたのは。
あの人は力を求めることを知ってから、私から少しずつ距離を置くようになった。
自分には力がないと身を引いて、彼の僕のようにつき従うようになった。
力に縛られた憐れな人。
昔のあの人は、もうそこにいなかった。
それが分かった時、私は最後の希望すらも奪われてしまった。
分からない。
分からないよ。
彼とあの人の言葉が。
悲しい。
大切なあの人が穢れていくことが。
苦しい。
大切なはずのあの人を、受け入れられないことが。
憎い。
大切なあの人を穢した彼が。
神様。
私はどうすればいいのですか?
あなたは、私から大切なものを取り上げていきました。
これ以上、何を奪うというのですか。
奪われて奪われて、奪われ尽くして、もう何も残っていないのに。
もう、何も失いたくない。
何も……




