魔封じの腕輪
ピアノ部屋から出て、廊下を進むこと数秒。
ふと、実の前に拓也と尚希が立ちはだかる。
二人とも、威圧たっぷりの無表情。
そんな二人を前に、実はばつが悪そうに視線を泳がせた。
何を言われるかは、とっくに予測済みである。
「どういうことか、説明してもらおうか。」
やっぱりね。
実は困ったように頬を掻いた。
確かに二人には何も言っていなかったんだけど、黙っていただけでここまでの圧力をかけられてしまうことになるとは。
「え…と……部屋まで待てない?」
期待はせずに訊いてみると、案の定二人は大きく頷いた。
初めから隠すつもりはなかったのだが、ここまで大きく意思表示をされては降参するしかない。
「はは……そっか。」
実は二人の反応に苦笑を呈すると、ワイシャツの左袖をまくった。
そこから表れたのは、実の左手首にぴったりとはまった銀の腕輪。
腕輪には、模様か文字か判別がつかない細かな文様が彫られている。
腕輪は実の腕に隙間なくはまっているにもかかわらず、どこにも継ぎ目が見られない。
何か特殊な方法で身に着けているのだろうことは、尚希と拓也にもすぐ分かった。
「これ、魔封じの呪文だな。」
実の手首を取って腕輪を観察していた尚希がそう告げる。
「ええ、そうです。父さんがここに隠してあったんですよ。まるで、いつか俺がここに来ると分かってたみたいですよね。」
「分かってたみたいじゃなくて、実際に分かっていたんだろうな。」
尚希の呟きに、拓也もしみじみと同意。
魔力の強さに加え、予知能力の開花を期待されて知恵の園に召集されたエリオス。
その後期待どおりに能力を開花させた彼の予言は、かなり正確だと評判だ。
おそらく、エリオスは実がここに訪れることを能力で知り、先手を打ってこの腕輪を置いていったのだろう。
理屈は分かるのだが―――
「どうして、こんな物を……」
その理由が、とんと思い浮かばない。
尚希の疑問に、実はふと微笑む。
そして、意味ありげに人差し指を口元に持っていった彼はこう告げた。
「夜になれば、分かりますよ。」




