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世界の十字路【全話統合版】  作者: 時雨青葉
【第2部】守護する獣の街
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妨害魔法

 大きく目を見開いて自分の手を見つめる実。



 しかし、次の瞬間に冷静さを取り戻した実は、右手を一回転させて風の中心となっていた力の塊を握り潰した。



「実?」



 拓也が懐疑的な表情で首を傾げる。

 実はそんな拓也に答えを寄越さず、考え込むように手を口元にやっていた。



「拓也……ちょっと、拓也が移動魔法を使ってみて。」

「え…? ああ、分かった。」



 急にそう言われて目をしばたたかせた拓也は、実の意図を理解しないまま、実と同じように手をひらめかせる。



 特に問題なく光の風が拓也と尚希を包んでいくのを見て、実は呟いた。



「なるほど…。俺だけってことか。」

「何が?」

「なんでもない。ちょっと、二人で先に帰ってて。」



 拓也と尚希は、実の発言に瞠目する。



「何言ってるんだよ。ほら、早く。」



 拓也が後退しようとする実の腕を素早く掴んだ。



「あっ、馬鹿!」



 思わぬ展開に実が焦るが、もう遅い。



 途端に何かが弾けるような音がして、実と拓也は互いに反対方向に吹き飛ばされてしまっていた。



「いった……」

「拓也!? 実!?」



 ただ一人飛ばされなかった尚希は(せわ)しなく左右を見回し、すでに起き上がろうとする実を確認すると、未だに起き上がらない拓也の方へ走った。



 拓也を抱き起した尚希は、その頬を軽く叩く。



「おい、拓也! しっかりしろ!」



 だが、尚希がどれだけ声をかけても、拓也は一向に目を覚まさない。



「しばらく起きないと思いますよ。魔法を使っていた拓也に、一番負担が来ているでしょうから。……ったく、だから先に帰ってって言ったのに。」



 最後に小さくそうぼやき、実は溜め息をついて立ち上がった。



「どういうことだ?」



 状況を理解できない尚希が実に訊ねる。



 抜け切らない衝撃に額を押さえていた実は、その手をゆっくりと下ろして口を開いた。



「俺が移動しようとすると、妨害魔法が働くようになってたんですよ。どうやら今回は、俺にあっさりと帰ってほしくないようで。」



 今頃、レティルは思ったとおりの展開になってほくそ笑んでいるだろう。

 憎たらしい彼の顔が脳裏をよぎり、実はうんざりと肩を落とした。



 先ほど移動魔法を解除したのは、こういう理由。

 妨害に逆らって無理に移動を試みれば、その反動でどこへ飛ばされるか分からない。



 気を失っている拓也の様子を(うかが)う限りでは、妨害魔法といってもそこまでの威力はなさそうではあるけど。



 実の説明を受けて事態を把握し、尚希も息をつく。



「なるほどな。どうしたもんか……」



「そうですね…。拓也が目を覚ましそうにないし、とりあえずは休む場所が必要ですよね。まあ、当てはありますよ。」



 そう言う実の手から、光と風があふれ出す。

 それに、尚希はぎょっとした。



「うわっ! 実、待っ―――」



 慌てる尚希の声を待つこともなく、光が瞬く間に実たちを包んだ。



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