妨害魔法
大きく目を見開いて自分の手を見つめる実。
しかし、次の瞬間に冷静さを取り戻した実は、右手を一回転させて風の中心となっていた力の塊を握り潰した。
「実?」
拓也が懐疑的な表情で首を傾げる。
実はそんな拓也に答えを寄越さず、考え込むように手を口元にやっていた。
「拓也……ちょっと、拓也が移動魔法を使ってみて。」
「え…? ああ、分かった。」
急にそう言われて目をしばたたかせた拓也は、実の意図を理解しないまま、実と同じように手をひらめかせる。
特に問題なく光の風が拓也と尚希を包んでいくのを見て、実は呟いた。
「なるほど…。俺だけってことか。」
「何が?」
「なんでもない。ちょっと、二人で先に帰ってて。」
拓也と尚希は、実の発言に瞠目する。
「何言ってるんだよ。ほら、早く。」
拓也が後退しようとする実の腕を素早く掴んだ。
「あっ、馬鹿!」
思わぬ展開に実が焦るが、もう遅い。
途端に何かが弾けるような音がして、実と拓也は互いに反対方向に吹き飛ばされてしまっていた。
「いった……」
「拓也!? 実!?」
ただ一人飛ばされなかった尚希は忙しなく左右を見回し、すでに起き上がろうとする実を確認すると、未だに起き上がらない拓也の方へ走った。
拓也を抱き起した尚希は、その頬を軽く叩く。
「おい、拓也! しっかりしろ!」
だが、尚希がどれだけ声をかけても、拓也は一向に目を覚まさない。
「しばらく起きないと思いますよ。魔法を使っていた拓也に、一番負担が来ているでしょうから。……ったく、だから先に帰ってって言ったのに。」
最後に小さくそうぼやき、実は溜め息をついて立ち上がった。
「どういうことだ?」
状況を理解できない尚希が実に訊ねる。
抜け切らない衝撃に額を押さえていた実は、その手をゆっくりと下ろして口を開いた。
「俺が移動しようとすると、妨害魔法が働くようになってたんですよ。どうやら今回は、俺にあっさりと帰ってほしくないようで。」
今頃、レティルは思ったとおりの展開になってほくそ笑んでいるだろう。
憎たらしい彼の顔が脳裏をよぎり、実はうんざりと肩を落とした。
先ほど移動魔法を解除したのは、こういう理由。
妨害に逆らって無理に移動を試みれば、その反動でどこへ飛ばされるか分からない。
気を失っている拓也の様子を窺う限りでは、妨害魔法といってもそこまでの威力はなさそうではあるけど。
実の説明を受けて事態を把握し、尚希も息をつく。
「なるほどな。どうしたもんか……」
「そうですね…。拓也が目を覚ましそうにないし、とりあえずは休む場所が必要ですよね。まあ、当てはありますよ。」
そう言う実の手から、光と風があふれ出す。
それに、尚希はぎょっとした。
「うわっ! 実、待っ―――」
慌てる尚希の声を待つこともなく、光が瞬く間に実たちを包んだ。




