解放の呪文
「―――っ!?」
突如すさまじい力が爆発するのを感じて、部屋から連れ出されようとしていた拓也は大慌てで後ろを振り返った。
実の周りを、再び陽炎のようなものが包み込んでいた。
バチンと電気が弾けるような音がして、サリアムとセリシアが陽炎に弾き飛ばされる。
「実…」
拓也は、その光景を茫然と見つめる。
先ほどと同じように、実の周りを陽炎が包んでいるという光景。
だが、それは先ほどの暴走とは明らかに雰囲気が違うようだった。
これがどういう意味なのか。
今から、実の身に何が起ころうとしているのか。
自分には、その全てが分かる。
だからこそ、複雑にならざるを得ない。
あれが、もしもの時のためにエリオスが講じてあった策。
サリアムに言うことを伏せた、とある仮説。
それが今、こうして実現しようとしている。
こうならなければ、実の命は確実になかった。
しかし、こうなるということは、実が再びこの世界のしがらみに囚われることを意味する。
―――もう、地球での平和な生活には戻れない。
(それでも……お前は、いいのか? もしかしたら、いっそ死んだ方が楽かもしれないぞ? 実……)
踏ん張ってほしいと訴えたくせに、何を思っているのだろう。
そんな矛盾した気持ちになりながら、拓也は同情するように悲しげな表情で目を伏せた。
(体が……軽い。)
実は、陽炎の中でゆっくりと立ち上がる。
嘘みたいに体が軽い。
疲れも眠気も吹き飛び、全身に力がみなぎっている。
そして、胸のざわめきは最高潮を迎えていた。
―――封印ヲ、解ケ
「―――ああ。お望みどおり、解いてやるよ。」
にやりと不敵に微笑む実。
頭の中に、自然と言葉が浮かぶ。
実は、その言葉を高らかに叫んだ。
「我を守りし封印よ。今、我が意志を鍵としてここに命じる。その内に眠る力を、全て解き放て!!」
その瞬間、自分の中にある何かの蓋が開くような感覚と共に、視界が闇に満ちた。




