表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の十字路【全話統合版】  作者: 時雨青葉
【第1部】日常の崩壊と覚醒
42/1258

対峙する両者

 翌日の早朝。

 まだ登校する生徒も少ない時間。

 人のいない校舎はしんと静まり返って、がらんとしていた。



 自分の下駄箱から上履きを取って、床に放る。

 上履きが床を打ち鳴らす音が、(うつ)ろな校舎内に大きく響いた。



「おや、村田君。おはよう。」



 狙いすましたようなタイミングで、声をかけられた。

 拓也は、上履きを履き終えてから顔を上げる。



「おはようございます。高嶺(たかみね)先生。」



 笑顔でこちらを見ているサリアムに、拓也も晴れやかな笑顔で答える。

 それが互いに、学校という環境に合わせたものであることは明らかだった。



「早いね。」

「そんなことはないですよ。」



 くすりと笑い声を漏らす拓也。



「ちょうどよかった。村田君に話があったんだ。少し、時間をもらえるかな?」

「もちろん。」



 快諾するする拓也。



「おれも、そうだろうと思って早く来ましたから。」



 聞くだけなら、どこにでもありそうな会話。



 しかし笑顔の二人の間には、見た目の雰囲気とはかけ離れた殺伐とした空気が微かに漂っていた。



 ただ見つめているように思わせながらも、その裏では相手の動向や仕草を観察し、互いに相手が出過ぎた行動に出ないように抑え合っている。



 笑顔の中に光る眼光は、切れそうなほどに鋭い。



 拓也たちの傍を何人かの生徒が通り過ぎていったが、その違和感に気付く者はいなかった。



 誰の目にも留まらない、二人の静かな睨み合い。

 それは、サリアムが体の向きを変えたことで終わりを告げた。



「それじゃあ、こっちへ。」



 サリアムは、昇降口に面した階段を(のぼ)っていった。

 拓也もそれに続く。



 二階に着くと、横に長く伸びる廊下に出る。



 そこから右手に行けば三学年の学年職員室と三学年の教室があり、左手に行けば社会科準備室などの教科準備室があるのだ。



 サリアムは迷わずに、廊下を左方向に進んだ。



 それについていくと、心なしか耳に入っていた微かな喧騒がぐっと(とお)退()いた気がした。



 聴覚が静寂に塗り潰され、サリアムと自分の足音がやけに大きく響いて聞こえる。



 サリアムは、廊下の一番奥で止まった。

 すぐそこには数学準備室があるが、サリアムはそこには目もくれない。

 もちろん、拓也もそこは見ていなかった。



 二人の視線は、本来なら行き止まりであるはずの壁に向けられている。



 そこには―――一つの引き戸が。



 サリアムがその引き戸に手をかけて力を込める。

 すると、引き戸は一切の音を立てずに開いた。



「どうぞ。」



 サリアムが(うなが)したので、拓也は素直に扉をくぐる。





 その光景を目撃している人物がいたとは、二人して全く気付かなかった―――……





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ