物憂げな夜
<第1章 異変>
ハッと、実は目を開いた。
目の前には、自分の部屋の見慣れた天井がある。
天井は光に照らされて仄かに明るい。
どうやら、もう夜が明け始めているようだ。
実はしばし天井を見つめ、つめていた息をゆっくりと深く吐き出した。
体中が緊張していた。
心臓が大きく、そして激しく鼓動を刻んでいる。
ひどくうなされていたのかもしれない。
全身にぐっしょりと汗をかいていて、髪が肌に張りついて気持ち悪かった。
実は緩慢な動きで体を起こしてしばらく考え込んだ後、物憂げに溜め息を吐きながら額に手をやった。
「……だめだ。また覚えてない。」
そのまま、くしゃりと前髪を掻き上げる。
夢を見ていた、と思う。
しかし、その夢の内容を全く覚えていなかった。
不思議なことに、夢のことを思い出そうとすると急に思考が拡散してしまい、夢の輪郭すら掴めなくなる。
最終的には、何を考えているのか分からなくなる始末だ。
ただ、これまでの経験として、思い出せないこの夢を見た後は必ず全身がひどい疲労感に苛まれていた。
全身の重さと、靄がかった目覚め。
それが、記憶に残らない悪夢を見た証拠だ。
いつからこんな夢を見るようになったのかは分からないが、ここ数週間かはほぼ毎日こんな寝覚めをしていた。
おかげで、せっかく寝ても疲れなど取れやしない。
連日蓄積されてきた疲れが、ただでさえ寝起きで重い体をさらに重くする。
こんな最悪な目覚めの後に簡単に眠れるわけもなく、疲れに寝不足も加わって気分は下降の一途を辿る。
「………」
実は適当な一点を見つめた。
――――だめだっ!!
夢に関して覚えていることは、この声だけ。
いつもこの声で目が覚めるのだ。
耳にこびりついた言葉の意味は、当然分からないのだけど……
実は膝を抱えた。
「だめだって…一体、何がだめなの? ………父さん。」
ぽつりと、一言呟いた。




