その後
それからの実は、しばらく絶対安静を余儀なくされた。
傷を治療したといっても、出血しないように表面を塞いだだけで、枝に貫かれた内側までは完全に治癒できていないからだ。
無理に動かそうとすれば、傷が開いて大惨事になりかねない。
それでも毎日地道に治癒魔法を繰り返したおかげで、安静期間は一週間程度で済んだ。
拓也と尚希の協力があったのも、時間が短く済んだ要因の一つだろう。
事件が終わり、後から事の顛末を聞かされた尚希は、まさに寝耳に水といった様子だった。
しかし、実の桜理に対する気持ちを考えると、実の行動に文句は言えないようだった。
最終的に実は死んでいないので、それで妥協したのだろう。
ぐだぐだと説教されるような事態には陥らなかった。
「無事で何より。」
ただ一言、そう言われるだけで終わった。
梨央と桜理に関しては、関係修復はまず不可能と言っていい。
根本的な原因として、初めから互いに良い感情を抱いていないことが大きい。
しかも、梨央からすれば、桜理は恋敵である以前に、実を殺そうとした絶対悪。
桜理に歩み寄る気があったとしても、梨央がそれを許すとは思えない。
桜理もそれを分かって、自分から梨央に歩み寄ることはないだろう。
無理なく動けるようになるまで実が桜理と共に過ごすことに大反対していたのが、梨央に桜理を許す気がない何よりの証拠と言えた。
桜理は自分の行動を弁えてか、梨央に対立意見を述べるようなことはしなかった。
しかし、絶対安静の実に負担のかかる次元移動というのも無理な話。
仕方なく、嫌がる梨央には眠ってもらって、拓也に連れ帰らせた。
それがいとも簡単にできるのは、やはり生まれ持った力の差かもしれない。
事実、梨央には魔法に対抗する術など与えられていないのだから。
その後の桜理は、落ち着いたものだった。
すでに、死を覚悟していたのだろう。
彼女は、実と過ごすことに残りの全てを注いでいるように見えた。
最後の時間を実と共に過ごすことが、桜理にとって唯一の幸せだった。
桜理はそうだった。
対する実には、このままで終わらせる気など全くなかったのだが……




