彼の遺言
―――ああ、もう無理だね。
これ以上、僕はここにいられないみたい。
仕方ないね。
君も僕も、本気で消えることを受け入れちゃったから。
君が桜理の望みに応えて生きる道を選んだとしても、そこに僕はついていけない。
たとえもう一度僕という存在を生み出したとしても、それは僕であり僕じゃないモノだと思う。
言わなかったけどさ、君が無意識で再構築した僕の存在って、それくらい稀有なものなんだからね?
ここまで綺麗に自立した存在が構築できる確率、ほとんどゼロに近いんだ。
まあ、だからね。
遺言っていうの?
消える前に、伝えられることは伝えられればなって思うんだよね。
死ぬなら謎のままでもいいかと思ってたんだけど、どうやら君はまた死ねないみたいだし。
……君に届いているかは、賭けみたいなもんだけどね。
君は僕の存在について、色々と誤解している点が多いんだよね。
君は僕のことを、記憶を消す前の自分の分身だと思ってるでしょ?
そう思って、無条件に昔の自分を拒絶してるでしょ?
でもね、本当は違うんだよ?
………………
……………
だからね、君が僕を憎むのは自由。
でも―――……
うん、これが伝えたかったことの一つ。
もう一つあるんだ。
これは、未来を生きる君への忠告だ。
―――僕のことを、理解しちゃだめだよ。
君はあくまでも、君としての道を生きて、君本来の心と向き合えばいいんだ。
決して、僕の――………
………………、………
……………
万が一にも僕の心を受け入れてしまったら、きっと君は―――…………
まあ、君には少し難しい忠告かもしれない。
……………………
……………
……ああ、もう限界。
さっきから、眠くて眠くてたまらないんだ。
じゃあね。
あとは、君の気持ち次第だよ。
どうか―――




