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世界の十字路【全話統合版】  作者: 時雨青葉
【第1部】日常の崩壊と覚醒
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崩れていく日常

 拓也は、それ以上は言葉を重ねることなく帰っていった。



 本当は彼とのやり取りなんてなかったことにしたかったのに、床に咲いたサルフィリアの花畑が現実逃避をさせてくれない。



『これはそのままにしておくから、好きなだけ確かめるといい。』



 帰り際に、拓也がそう言ったのだ。



 帰宅した詩織には激昂された。



 何せ水分も取っていなければ、薬も食事も取っていなかったのだ。

 怒られるのはもっとも。



 しかし、実の耳には詩織の説教など一文字として入っていなかった。

 実の視線も意識も、ただ詩織の足元に注がれていたからだ。



 詩織は、あの花の中に足を置いていた。



 あんなものをストッキングに包まれた足で踏んだら、怪我でもするだろうに……



 ぼんやりとそう思う。



 しかし、詩織は痛がる素振りはおろか、花を踏んでいる違和感に気付く様子さえない。



 実は見た。



 詩織の足元で、花が潰れることなく立っているのを。



 花は詩織の足をすり抜けながら、踏まれる前と変わらない姿をさらしている。



 きっと、クラスメイトが花を踏んだ時もそうだったのだろう。



 あの時は花が潰れているという先入観のせいで、透けながら揺れる花が見えなかっただけ。



(母さんには、見えてないんだ……)



 喪失感が全身を満たした。

 今までの平穏が、音を立てて崩れ落ちていく。





 もう―――戻れない。





 実の絶望をよそに、花はただ揺れ続けるだけ……



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