表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の十字路【全話統合版】  作者: 時雨青葉
【第2部】守護する獣の街
103/1258

〝自滅すりゃあいいさ〟


 ……下のレストランが騒がしい。



 ぼんやりとそう思いながら、実はフェンの頭からゆっくりと手を離した。



 フェンは呆けたまま動かない。



 そんなフェンを見下ろしていた実の体が、ふと後ろへ傾いだ。



「実!!」



 倒れた体が床に打ちつけられる寸前に、そこに滑り込んだ拓也がその体を支えて座る。



 実の表情からは、血の気が完全に引いていた。

 額には脂汗が浮かび、浅い呼吸音が微かに拓也の耳に届いてくる。



「実……お前、なんてことをしたんだ…っ」



 大きく震える拓也の唇と全身。

 それを感じ取った実は、開きたがらない目をなんとかこじ開けた。



「……大丈夫だよ。」

「どこが大丈夫なんだ!?」



 拓也は切羽詰まった表情で怒鳴る。



「自分の魔力を他人に、しかもあんな大量に注ぎ込むなんて…っ。死にたいのか!? 限界以上に魔力を使ったり、短時間に(いちじる)しく魔力が減少すると、命に危険が及ぶ! そのくらい、常識として知ってるだろ!!」



 拓也が言うことももっとも。

 しかし、実はそれに対して微笑むだけ。



「だから、大丈夫だって。俺からすれば、大した量の力は注いでない。……ただ、今の俺が使える力の半分くらいは使った。これの力に反発した分、それ以上に持っていかれてる。」



 そう告げた実は、顔をしかめながら右手を動かして左腕の(そで)をまくった。



 シャツの袖から覗く白い手首。

 それを見た拓也は目を()いた。



 実の手首には、魔封じの腕輪がはめられている。

 その周辺の皮膚が、火傷(やけど)をしたかのように赤くなっていたのだ。



「魔封じに逆らって魔力全開にしたんだから、このくらいは当然だよね。」



 実の右手が腕輪に何度か触れると、手首から外れた腕輪が床に転がる。



「預かってて。これをつけてちゃ、魔力の回復に時間がかかる。とはいっても、何日かは眠ることになりそうだけど……」



 自嘲するように実は笑った。



「なんで、こんなことを……」

「腹が立ったからだよ。」



 実の声のトーンが一気に下がる。



 それと同時に実がまとった冷たく刺すような雰囲気に、拓也は無意識に身震いしてしまう。



「ふふふ……」



 小さな笑い声をあげた実は、依然として呆けているフェンへ(あざけ)りの意を込めた冷笑を向けた。





「力はくれてやった。せいぜい楽しんで―――自滅すりゃあいいさ。」





 その一言が限界だったのか、拓也にかかる実の体重が一気に増す。



 実が目を閉じて気を失うのと、血相を変えた尚希が息を切らせてシェイラと共に飛び込んでくるのは、ほとんど同時のことだった。



<第3章 こじれ>END 次章へ続く…



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ