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武神さまと一緒 私、最強の力を手に入れてものんびりするのが希望です  作者: かっぱん


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75 今後の旅の計画を考える





 夕方、宿に帰った私は、あんまりお腹は減っていなかったけど、宿が用意してくれた夕食を簡単にいただいて――。

 食事の後は、お風呂に入って、宿が用意してくれた室内着に着替えて――。

 私達の服は洗濯に出した。

 服は、朝食の前に、部屋まで持ってきてくれるそうだ。

 さすがはお高い宿だけあってサーピスは良い。


 そんなこんなで、夜。


 あとは寝るだけの穏やかな時間になった。


「――というわけで。実は私自身は、大して強くないの。ごめんね」


 私はラズに私のことを話した。


「なるほど……。そうだったのですか」

「最初の時はね、とりあえずラズのことがよくわからなかったし、安全確保を第一に考えて契約したんだけど……」

「ご主人様、皆まで言われなくても大丈夫です。私はこの一日で確信したのです。アニス様こそがまさに理想のご主人様だと。今後ともよろしくお願いします」

「私でいいの……?」

「はい。だって私、昨日から殴られていません! これって奇跡ですよね!」


 なんというハードルの低さ!

 ともかくラズは、今後ともメイドとして仕えてくれることになった。

 正直、私としても助かる。

 ラズは、自己評価はいつでも最低だけど、実際には強いしね。

 それに、いい子だし。


「ねえ、ところで、ラズは何歳なの?」

「私ですか? 多分、二百歳くらいだと思いますが……。正確にはわからないです」

「私より、ずっと年上なんだねえ」

「竜種としては、まだまだ子供ですけど。竜種は、五百年生きて一人前なので」

「へー。人間とは基準からして全然違うんだねー」

「なので私のことは、お気軽にお使い下さい。ゴミクズ雑魚の分際ではありますが、頑張ってお仕えさせていただきます!」

「あはは。またもー。自分のことは悪く言っちゃダメだよー。自分のことは、まずは自分が信じてあげないとね」


 私が苦笑して言うと、カメさまに、


「アニスもである」


 と言われた。

 う。

 たしカニ。

 まさに、私もでした……。

 人間、そんな簡単に自分を信じられたら苦労なんてしないよねえ……。

 他人事なら簡単に言えちゃうけど……。


「で……。なんだけど……。これからどうしようね?」


 気を取り直して、私はテーブルの上に地図を開いた。


「ふむ」


 私の頭からテーブルの上に移動して、カメさまが地図を覗き込む。


「チュアムから馬車に乗って普通に八日かけて王都に向かうか……。ラズの翼で移動して、どこかに寄り道していくか。早めに王都に入って、王都見学も楽しそうだけど……」


 私が思いつくのは、その三つくらいだ。


 リムネーの我が家に一旦帰宅するという選択肢もあるけどそれは除外した。

 なぜなら私は旅気分なのだ。

 新しい場所に行きたい。

 カメさまとラズが一緒だから、全然寂しくないしねっ!


「私はどこでもついていきますね! アニス様の行くところ、私在りです!」

「カメさまはどう?」

「ふむ……」


 地図を見て、カメさまは考え込む。

 何かあるのだろうか。

 と思ったら、


「地図を見るだけでは、キノコの産地はわからぬのである……」


 とのことだった。


「なら明日、宿の人に聞いてみようか」


 私は笑った。

 キノコ巡りの旅、いいかも知れない。


「ふむう」


 だけどカメさまは乗ってこなかった。

 どうしたんだろうと思ってたずねたらこんなことを言われた。


「もちろん我としては、キノコは捨て難いが……。ここは涙を飲んで、残りの時間はアニスの修行に当てるべきな気もするのである」

「えー。いいよー。修行とか大変だしー。せっかくの旅なのにー」

「アニスよ、今日、負けたことを忘れたのであるか?」

「う」


 それは、覚えています。

 壁に激突して、そのまま抑え込まれました。


「我も不覚だったのであるが、身体強化だけではアニスには足りなかったのである。今日は我がいたからよかったものの、いなかったとしたら大変だったのである」

「私、いない時は静かにしているよ?」


 だから平気だよ?


「学院でタチの悪いヤツに絡まれたらどうするのであるか?」

「カメさまにお願いするよ?」

「アニスよ、残念ながら我の存在は、魔人の娘に認知されてしまっているのである。彼奴らの目の内では、最大限、憑依はしない方が良いのである」

「……じゃあ、私はどうなるの?」

「自力で頑張るのである」

「そんなー!」


 無理だよね!?

 私だよ!?


「安心するのである。我に秘策があるのである」

「どんな……?」

「アニスは武道を学ぶのである。アニスはすでに、マナの力で身体強化できるのである。その力は下手な刻印持ちには負けぬほどのものなのである。しかし現状では技術がなく、十全に活かすことができていないのである」

「それはねえ……。実感したけど……」

「加えて武道の達人には、刻印の力に頼ることなく、鍛錬の成果によってオドの力を練り上げ、扱う者もいるのである。それは『気』と呼ばれる力であるが、刻印に頼らないという点においてアニスの身体強化に近い力なのである。つまりアニスが武道家となれば、マナの力を『気』だと誤魔化せるのである。一石二鳥である」

「へー。そっかー」

「どうしていつも他人事なのであるか!」

「だってー。いろいろ言われても、私、わかんないしー」

「なら決定なのである。任せるのである」

「ねえ、カメさま」

「なんであるか?」

「私、キツイのとか痛いのとか、めんどくさいのはイヤだよ……?」


 水泳みたいに楽しいのならいいけど。


「ですよね! キツイのとか痛いのはイヤですよね!」


 すかさずラズが同意してくれる。


「ラズは黙るのである!」

「ひいいい!」

「まったく。ラズも一緒にやるのである」

「ええ……。私もですかぁ?」

「いい加減に百番から九十九番になるのである」

「あの、私、逆にむしろ二百番でもいいんですけど……。い、いえええ! 嘘です嘘! やりますやらせてください!」


 カメさまに睨まれて、ラズはあっさりと折れた。


「うむ。では、決まりである」


 カメさまが偉そうにうなずく。


「キツイのとか痛いのはやめてね……?」

「わかっているのである。リムネー湖でしたのと同じように、実践形式の楽しい修行を考えるのである。期待するのである」

「ならいいけどさあ……」







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