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武神さまと一緒 私、最強の力を手に入れてものんびりするのが希望です  作者: かっぱん


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34 湖岸の遭遇!





「こんにちは。初めまして。可愛らしいお声だねー」


 シアンさんがお上品な微笑みを称えつつ、カメさまたちの方に近づいた。


 カメさまたち……。


 カメさまは今、見上げるほどに大きなカメの頭に乗っている。

 一体、どこのカメなんだろう。

 て、湖のカメだよね……。

 湖から出てきたんだし……。

 こんなに大きなカメが湖に住んでいたなんて、私は知らなかった。

 見たことどころか、話に聞いたこともない。

 というか、精霊様なのだろうか。

 カメさまが連れてくるとすれば、他には思い浮かばないし。


 ちなみにカメさまの声は可愛らしい。

 カメさまは子供のメスのカメなのだ。


「ねえ、カメさんは、どこの誰なのかなー? 人語を口にするカメさんなんて、シアちゃんは初めて会ったんだけどー」


 シアンさんはあくまで友好的な素振りだ。

 だけど私はすでに理解している。

 このヒトは、ものすごく危険だ。

 それどころか、多分、本当はニンゲンではない。


「其方こそ誰であるか? ヒトにたずねるなら、まずは名乗るのである」

「これは失礼をば。私はシアちゃんと申します。オスタル公爵家に仕えるメイドで、世界の神秘に興味を持つ学者でもあるんだよー」

「我はカメである」

「うん。それはそうだよねー。見たまんまだねー」


 どうしよう……。

 カメさまに叫んで伝える?

 なんて?

 私は何かしなくちゃと思いつつ、何もできないでいた。


 あ、念話だ!


 ――カメさま! その子は危ないよ! その子がね、ファラーテ様に何かをしてファラーテ様を魔人とかいうのに変貌させたの!

 ――で、あるか。


 よかった!

 カメさまにちゃんと通じた!


 ――シアンという娘には、明らかに人外の気があるのである。ずっと感じていた違和感は、まさにそれだったのである。

 ――どうすればいいと思う?

 ――斬り捨ててしまえば良いのである。

 ――できるの?

 ――我を誰だと思っているのである。

 ――だって、さ。

 ――なんであるか。

 ――カメさま、ザルだし……。


 もっと早く気づいてくれればよかったよね……。

 私、あやうく死ぬところだったよ?


「その汚れなき水の魔力……。まさかカメさんは、精霊さんなのかな?」


 シアンさんがカメさまにたずねる。


「我はザルではないのである! カメなのである」

「うん。ザルではないよねー。それは見ればわかるけどさー」

「で、ある」

「それでカメさんは、精霊なのかな?」

「ふむ。確かに彼女は精霊なのである」


 カメさまが答えた。

 彼女というのは、カメさまが乗っている大きなカメのことだろう。

 やっぱり、大きなカメこそが精霊様のようだ。


「ふふ。ふふふふ! あはは! やっぱりそうなのかー! 凄い! 凄いね! シアちゃん、実体化した精霊さんを見るのは初めてだよ! 精霊さんは恥ずかしがり屋で実体化してくれることなんてまずないよね! どうしてここに!?」


 手を合わせて、片足を曲げて、シアンさんが可愛らしい態度で興奮する。


「遊ぶためである」

「なるほどー! じゃあ、遊ぼうかー! お嬢様、さあ、この大きなカメさんを蹂躙して、最初の欲望を満たしなさい!」


 シアンさんが、脇でうずくまっていたファラーテ様――魔人に微笑みかける。

 だけど彼女は動かない。


「ワタクシ……。コレ……。ワタクシ……ノ……。テ……」


 魔人は……。

 自らの変貌した手のひらを見つめていた。


「あらまあ。なんとびっくり、進化直後なのに理性を保っているんだ? さすがはお嬢様。普通なら殺戮衝動に支配されて、満足するまでは暴れるものなのにー」


 その様子にシアンさんが大いに驚いた顔をする。


「シア……ン……?」


 魔人が揺れる瞳をシアンさんに向けた。

 シアンさんは拍手した。


「おめでとうございます、お嬢様。お嬢様はついに、ヒトの殻を破り、星の女神の眷属へと進化することができたんだよー」

「コレ、ガ……?」

「うん。立派な魔人だよー! おめでとー! ぱちぱちぱちー!」

「ソ、ソンナノ……。ワタクシハ……。ノゾンデ……」

「ふふ。ふふふふふ! あはははははは! もう手遅れだよー、お嬢様! お嬢様はこれから人外として生きていくんだよ! どうぞ、好きなだけ暴れて、好きなだけ殺して、まずは今までの恨み辛みをすべて叩き出しちゃいなよ!」

「イヤ……。ソンナノ……ワタクシハ……。アアアアアアアアアアア!」

「あはははは! 早く! 早くすっきりしちゃいなよ! 狂気と満足こそが、お嬢様を真の魔人へと導いてくれるんだからさー! そして来年、千年の封印から解き放たれた魔王のところに、一緒に行こうよー!」


 シアンさんが哄笑する中、カメさまの声が聞こえた。


 ――アニス、こっちに来るのである!

 ――う、うん。


 そうだよね。

 まずは何より、カメさまと合流しないと。

 体の痺れは、もう取れていた。


 私は走って――。


「おっと。ダメたよ、アニスお嬢様。勝手に動かれるのは困るからさー」


 あっさりとシアンさんに腕を掴まれたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「助けてカメさまぁぁぁぁ!」

「ぬうううう!」


 カメさまが雷を飛ばしてくれる!

 バチッ!

 火花を散らして、雷がシアンさんに直撃する!


「お嬢様は、精霊さんと親しいみたいだねー。どんな関係なんだろうねー」


 だけどシアンさんは無傷だった。


「突撃するのである!」

「カメぇぇぇぇぇぇ!」


 そこに大きなカメが突進してきた!

 シアンさんはそれを、簡単に片手で止めたけど……。

 その反動を利用して――。


 ――アニス!

 ――カメさま!


 カメさまが私のところに飛んできた!


 ――アニス、心を開くのである!

 ――うん!


 カメさまを受け入れる!

 私はそう念じた!


 カメさまが私にぶつかって――。

 私の中に憑依する。







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