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武神さまと一緒 私、最強の力を手に入れてものんびりするのが希望です  作者: かっぱん


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10 コリーとスーちゃん





「コリー、下がろう」

「う、うん……」


 私はコリーを連れて、騒ぎの現場から離れた。


「腕、痛いよね……。あとで神官様のところに行こうね」


 コリーの腕は赤く腫れていたけど、それくらいなら、治癒の魔術で癒やすことはできるだろう。


「それはいいよ。うち、お金ないし」

「そんなの私が出すから」


 傷が残ったら大変だし。


「……ねえ、スーちゃんって、魔術師様でお貴族様なの?」

「あ、それは……」


 私はコリーに自分が男爵家の娘だとは言っていない。

 ずっと黙って、仲良くしてきた。


 私は消沈した。


 私はだって、きっと嘘つきって言われるのだ。


 でもコリーは違った。


「スーちゃん、すごかったね! バチって! あれって魔術なんだよね!

 スーちゃんも怖い人を少しだけやっつけたね!

 すごいね! 私、感動しちゃったよ!

 あ、お貴族様なんだから、スー様って言わないとダメだよね。

 スー様、すごかった!」


 コリーがいつもの明るい笑顔で言った。

 その笑顔は、本当にいつも通りで……。

 私は呆然としてしまった。

 だって、コリーは私のことが嫌いになると思ったから。


 ――アニス、返事をしてやるのである。


 カメさまに言われてハッと我に返った。


「あ、ううん。違うのっ! アレは、私の魔術なんかじゃなくって。ほらこれ私なんて無印者だし!」


 私は手袋を外して、手の甲をコリーに見せた。


「すごい! 刻印がなくても魔術って使えるんだね!」

「あ、それもちがくて! ほら、これ! カメさま! カメさまがね、」


 私は頭の上にいたカメさまをつまんで、手のひらの上に乗せて、コリーに紹介しようとした。


 ――これアニス! 我のことを紹介するな、なのである! 目立って餌にされるのは嫌なのである!


 あ、ごめん。

 つい。


「へー。かわいいカメだね。スー、様のペットなの?」

「う、うん。そうなんだ……。カメさまっていうの」

「へー。カメさまかぁ。よろしくね」

「あと、私に様はいいよー。私なんてこの通りに無印者で、貴族としては失格の子なんだからさー」

「そんなことないよ! バチってしたよね!」

「それに……。その……。あの……。私たち、さ……。お友達、だよね? 様なんて嫌だよー」

「あ、うん。そうだよね。なら、スーちゃんって言っていいの?」

「うん! いいよ!」

「でも、カメさまはカメさまなんだよね?」

「うん。それはね」

「カメさまの方が偉いの?」

「うん。秘密だけどね」

「わかった。カメさまはカメさまで、スーちゃんはスーちゃんなんだね」

「うん。そう」

「じゃあ、スーちゃん! 助けてくれてありがとう! 私、すっごい! すっごいすっごい、嬉しかった!」


 コリーは本当に強い子だ。

 怖い目にあったのに笑顔でいられている。


 ――始まるのである。


 あ、そっか!


 今は、のんびりおしゃべりしている場合ではなかった!


 私達の目の前では、お姉様と二人の男の人が、緊迫した睨み合いの中、今まさに戦おうとしていた。

 お姉様は部下達を下がらせている。

 一人でやる気なのだ。

 相手は、戦士の刻印と土の刻印を持っているのに。


「お姉様……。大丈夫かな……」

「大丈夫だよ。タビア様は、リムネーの英雄だもん。あんな悪いヤツになんて絶対に負けないよ」

「うん……。だよね……」


 まわりでは、町のみんなも戦いの様子を見ていた。

 男の人たちが武器を手にしたのに、それでもみんなに不安な顔はない。

 お姉様はこの町の英雄なんだ。

 魔物にだって悪い人にだって、絶対に負けない人なんだ。


「あ、でも。そうするとスーちゃんって、タビア様の妹なの?」

「うん……。実はね……」

「似てないね?」

「私はお父様似で、お姉様はお母様似だからね。あと、そうだ。私の本当の名前はアニスっていうの。最後の一文字だけで名乗っていてごめんね」

「それはさっきタビア様が言っていたのを聞いたけど……。アーちゃんって呼んだ方がいいのかな?」

「私は、どっちでもいいけど……」

「ならスーちゃんでいい?」

「うん。いいよ」

「よかった! スーちゃんはスーちゃんだよね! って! あいたたた……」


 あああああ!

 もう、怪我をしているのに腕を振り上げるから!


「大丈夫!? ほら、力を抜いて!」


 顔をしかめてうずくまるコリーを、私は焦って介抱した。


 ――こらー! なのであるー!


 あ、手のひらのカメさまを放り出しちゃったね。

 ごめん。

 カメさまは自分でふわりと浮かんで私の頭の上に戻ったけど。

 幸いにも、誰もこちらには目を向けていない。

 なので騒がれなかったけど。


 なにしろ今は、決闘の最中なのだ。







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